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Published lecture abstract and presentation slides for JRA Livestock Industry Promotion Project symposium: “Food safety learned from the accident at Tokyo Electric Power’s Fukushima Nuclear Power Plant – facts about livestock products” are published.

掲載日:2012.04.09

東京電力福島第一原発事故から学ぶ食の安全
-畜産物について-

3月24日、東京大学農学部弥生講堂にて、JRA畜産振興事業シンポジウム「東京電力福島第一原発事故から学ぶ食の安全-畜産物について-」を開催しました。

当日の午前中は小雨が降っていましたが、事業者や消費者、行政、研究者、学生など、多様な立場の方が足を運んでくださいました。ご参加くださった皆様、ありがとうございました。

シンポジウム第一部では5名の先生方による講演、第二部では会場から集めた意見用紙をもとにしたパネルディスカッションを行いました。

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ここではシンポジウムの内容をまとめてご報告します。(磯貝先生の講演については後日ご報告します。
講演要旨(PDF)

プログラム

講演

  1. 事業の概要について
    関崎 勉(東京大学)講演スライド(PDF)
  2. 消費者調査報告
    細野ひろみ(東京大学)講演スライド(PDF)
  3. 放射線の生物作用と人体への影響
    近藤 隆(富山大学)講演スライド(PDF)
  4. 東大附属牧場での試験成績
    眞鍋 昇(東京大学)講演スライド(PDF)
  5. 福島原発20km圏内の被災牛における体内放射性物質の測定と解析
    磯貝恵美子(東北大学)

パネルディスカッション

シンポジウムの休憩時間中には、食品中の放射性物質に関する情報をまとめた以下の動画を放映しました。

動画「放射性物質と食品の安全について~食肉で考えてみよう~」(約12分)

※この動画は、JRA畜産振興事業「畜産物に対する放射性物質の安全に関する調査事業」の一貫として、東京大学大学院農学生命科学研究科食の安全研究センターが作成したものです。なお、4月から施行された食品中の放射性物質に関する新たな基準値に合わせて、現在動画の改訂を進めているところです。

「事業の概要について」

関崎勉 (東京大学大学院農学生命科学研究科附属食の安全研究センター長)

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  • 我が国ではこれまで、食品中の放射性物質についての知見がきちんと収集されておらず、科学的な知識が浸透していませんでした。そこで、本事業では、そうした知見を収集し、それをできるだけ分かりやすく正確に伝える方法を探ることを目標としました。
  • 本事業は大きく分けて、有識者による検討会、文献調査、消費者のインターネット調査、リスクコミュニケーションの四つの要素で成り立っています。
  • 文献調査の報告書は、出版社と交渉して、できるだけ安い価格で多くの人の手に渡るように出版してもらえないかと考えています。出版が決まったらセンターのホームページでお知らせします。
  • 報告書の中身を一部ご紹介します。牛肉・豚肉の価格変動ですが、BSEが発生した後にかなり落ち込みましたが、回復しました。しかし、今回のことがあってまた落ち込み、現在も牛肉の価格は下げ止まりしていない状況です。地域別では、福島県の価格が顕著に下がっています。それに対して、九州の方は上がっています。以前から地域での価格差はありましたが、福島県の肉は低価格品ではない良質の肉だったのです。

「消費者調査報告について」

細野ひろみ(東京大学大学院農学生命科学研究科附属生態調和農学機構准教授)

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【調査の概要】

  • インターネット調査は二回行いました。第一回のインターネット調査は10月終わりから11月初めにかけて、全国の4,363名に対して行いました。情報提供をすることで放射性物質に関する知識がどのように変わるのか、被災地の食品をどのように認識しているのかなどを調べました。
  • また、各6名の5グループ(20代30代未婚女性、小学生以下の子供を持つ女性、小学生以下の子供を持つ男性、50代60代男性、50代60代女性)に対して二回のグループインタビューを行いました。インターネット調査で使った情報提供の動画を観てもらい、分かりにくい点や足りない点についてディスカッションをしてもらいました。
  • 二回のグループインタビューを経て見直した情報パッケージを使い、3月に第二回のインターネット調査を行いました。今回は5,028名が対象になりました。

【インターネット調査の結果】

  • 「食品中の放射性物質の検査は誰が責任を持つべきか?」「放射性物質の規制値はどこが設定するべきか?」という項目について、回答が最も多かったのは農林水産省と食品安全委員会でした。
  • 「食品中の放射性物質の管理について政府の対策を信頼しているか?」という問いについて、「そう思う」とした人は数%であり、行政への信頼は非常に低いことが分かりました。その一方で、「規制値を超えたものは販売されていないだろうから気にしていない」について、「そう思う」「どちらかというとそう思う」とした人が約5割でした。
  • 男性に比べると女性の方が安全を重視しているということが確認されました。
  • 年齢階層別では、年齢階層が高い人ほど放射性物質について心配する傾向がありました。しかし、「事故後原発からできるだけ遠い地域の食品を選ぶ」、「少しでも検出された食品は販売されるべきではない」については、30代で「そう思う」と回答する傾向がありました。
  • 牛肉由来のハザードについて、リスクが最も高いと思われていたのは腸管出血性大腸菌で、サルモネラ、カンピロバクターと続きます。その次にBSE、残留動物医薬品の残留がきます。放射性物質は7項目中、6番目であり、相対的にはあまり高くないことが分かりました(7番目はクローン)。年齢階層別では、30代の人が放射性物質についてリスクが高いと認識している傾向がありました。
  • 放射性物質のリスクを回避するためには、外国産を購入する、都道府県を確認する、検査の有無を確認するという行動をとる人が多くいました。
  • 普通の食品の価格を100%とした場合、被災地の食品に支払ってもよいとする価格は「暫定規制値以下」で平均60%程度、「未検出」で平均80%程度となりました。年齢階層が上がるほど高い価格をつける傾向がありました。個別でみると、100%の価格をつけた人はたくさんいました。「未検出」では約半分の人、「暫定規制値以下」では約3割の人が100%の価格をつけました。
  • 100%以上の価格をつけてもよいとした人と、100%以下の価格しかつけたくないとした人で、知識のレベルと食品安全一般に関する意識にはあまり差はがないことが確認されました。一方で、放射性物質については、「全数検査をするべきだ」「少しでも検出された食品は販売されるべきではない」という項目で大きな差がありました。
  • 調査の途中で情報提供の資料をみてもらい、その前後で知識がどのように変わるのかを調べました。情報は、音声付きの動画あるいは文字情報です。情報提供後は知識が向上しましたが、動画でみてもらった人の方がその度合いは高いことが確認されました。

【今後の課題】

  • 放射性物質のリスクは病原性微生物と比べると高くないと認識されている中、30代40代では相対的に高く認識していることが分かりました。この年代は、子どもを持つ人が多いので、長期的な影響や将来の世代への影響を懸念されている様子がうかがい知れました。
  • 被災地の食品の価格評価は平均では低いけれど、その一方で100%の価格を払うという人も多くいました。価格評価について、知識の影響は限定的であり、それよりも態度の影響が大きいことが明らかになりました。この態度が何によって規定されているのかを今後研究していく必要があります。
  • 規制値については、少しでもその値を超えたら危険だという認識があるようでした。規制値の決め方や管理の仕方について、情報をもっと普及していく必要があると感じています。

「放射線の生物作用と人体への影響」

近藤隆(富山大学大学院医学薬学研究部放射線基礎医学講座教授)

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【放射線とは】

  • たくさんの放射線が細胞に当たると、細胞は水ぶくれ状態(アポトーシス)となり死んでいきます。これが放射線の最も重要な作用であり、医療の分野ではがんの治療に用いられます。
  • 放射線にはアルファ線、ガンマ線、ベータ線、エックス線、中性子線がありますが、食品に関係するものの多くはガンマ線とベータ線です。
  • 一秒間に一個の原子核が崩壊するのを1ベクレル(Bq)といいます。色々な放射線がありますが、体への影響の大きさは全てシーベルト(Sv)という単位で表されます。
  • シーベルトが一緒であれば内部被ばくの影響は外部被ばくと同じと考えられます。
  • 私たちは放射線とは切っても切れない関係にあります。放射線は宇宙からたくさん飛んできており、常に私たちは放射線の中で生きているともいえます。また、大地からも放射線は出ています。ラジウムという元素が分解する過程でラドンという放射性物質に変わります。これはアルファ線を出すので、ヨーロッパやアメリカのような地下室があるようなところでは健康影響への問題が取りざたされています。日本では西日本の方が放射線量は高く、東日本の平均と比べると約2倍となっています。
  • 私たちは体内に放射性カリウムを多く含んでおり、放射線源となっています。野原に一人でいるときと比べて、満員電車で隣の人のガンマ線を受ける場合は2倍程度の被ばくとなります。

【放射線の健康影響】

  • 細胞に放射線が当たると物理的・化学変化が起こり、活性酸素ができます。活性酸素により遺伝子が傷ついたら様々な障害が出てきます。放射線による健康影響の7-8割が活性酸素による影響であろうと考えられています。そのほか、放射線が遺伝子を傷つけるという直接的な作用があります。
  • 放射線を浴びると発がん率が上がることは分かっています。ただし、低線量の被ばくについては、閾(しきい)値があるという考え方とないという考え方があり、まだ議論が続いています。放射線防護上は、閾値がないという考え方に立ち、わずかの放射線でも発がん率を上げるという解釈をし、線量限度を設定しています。
  • ここにいる人が全員一度に全身に4,000ミリシーベルト(4シーベルト)浴びると、30日間で半分の人が亡くなります。こうした線量は局所にあてる分には、医療の現場でがんの治療に用いられています。
  • 一回に高線量を浴びると、後でやけどのような状態になることがあります。放射線熱傷といいますが、細胞分裂する幹細胞がやられてしまっているので治りにくいものです。
  • 放射線の影響はこのような身体的影響のほかに遺伝的影響もありますが、現時点で人体における遺伝的影響は確認されていません。

【リスクの考え方】

  • 放射線の健康影響を考える際には、生活全体の中でリスクをどう考えるのかが重要です。人間にとってもっとも死亡リスクが大きいのは感染症です。放射線の低線量でのリスクではがんが懸念されていますが、がんの原因には食生活や喫煙、運動不足、飲酒などがあり、放射線が原因となる割合は決して多くはありません。
  • リスクの感じ方には違いがあります。ラジウム温泉は健康に良いと言われるけれど、放射能汚染水は誰でも嫌だと思います。エックス線診断は健康のために必要だと思われますが、国民広くに使われることになれば被ばくの問題も出てきます。
  • 放射線は量も大切ですが、当たり方も重要です。同じ線量でもゆっくりと被ばくする場合と、一回に被ばくする場合では影響が異なります。それから、どこに当たったのかということも重要です。全身に当たったのか局所に当たったのかということです。放射線は医療ではほとんどの診療科で使われています。そうしたことも含めて放射線防護を考え、放射線を賢く使うことを考えるのが今後の我々の役目であろうと思います。

「東大附属牧場での試験成績」

眞鍋昇(東京大学大学院農学生命科学研究科附属牧場教授)

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【牛乳と牛について】

  • 生乳のほぼ100%が国産です。北海道で半分近くが生産されていますが、そのほとんどはバターやチーズ、粉ミルクへの加工用です。飲用は、岩手、栃木、群馬、千葉などの東北と関東圏が主な生産地です。
  • 牛は草食動物なので、牧草が汚染されたというのは非常に大きな問題です。牧草は主に山形、岩手、栃木などの東北と関東圏で生産されています。

【調査の概要】

  • 東大附属牧場は、福島第一原発からは直線距離で約130kmに位置する茨城県笠間市にあります。ここはホットスポットではなかったのですが、軽度に汚染しているという状態です。この場所で作られた牧草を牛に与えた場合、どの程度牛乳中に移行するのか、汚染していない飼料に切り換えると牛乳中から消失するのか調べました。
  • 調査に使った牧草は、事故後2か月目頃に刈り取ったイタリアンライグラスを乾燥後発酵させたヘイレージです。また、対照として、放射性物質が含まれていない輸入のトウモロコシや牧草を混ぜて作った配合飼料を使いました。
  • 牧草は、生の状態だと放射性ヨウ素は検出せず、セシウム134,137はそれぞれ1kg当たり50Bq、60Bq検出されました。乾燥・発酵させると大体十倍くらいの濃度になります。
  • 使った動物は泌乳中の雌ホルスタイン種牛を3頭ずつ2グループです。
  • 調査は4週間です。両グループとも、まずは2週間、放射性物質を含まない配合飼料を与えました。次の2週間は、対照群はそれを与え続け、もう1グループには、ヘイレージと配合飼料を混ぜたものを与えました。

【調査の結果】

  • 牛乳中のセシウム134,137の濃度は、汚染された餌を与えたら速やかに上がっていき、10日ほどで一定値になりました。汚染した餌を与えるのを止めると、値は速やかに低下しました。
  • 放射性セシウムの濃度は、一番高いときでも牛乳1リットル当たり36Bqでした。
  • 餌に含まれる放射性物質の量と牛乳中に出た放射性物質の量の比が移行係数で表されます。私たちの調査では、移行係数は0.0029になりました。国内外における他の調査やチェルノブイリ事故関連の調査で、ばらつきはあるものの概ねこのレベルで一定していることが確認されました。

【今後の課題】

  • 牛の餌の許容値はこれまで1kg当たり300Bqでしたが、2月には100Bqにするという通達が出されました。私たちの実験では、1kg当たり300Bqを超えるような餌をやったとしても牛乳中の放射性セシウムは1kg当たり50Bq以下でした。1kg当たり100Bq以下にまで下げる必要があるだろうかというのが今回の調査をやった私の感想です。
  • 許容値を低くし過ぎると飼料を含めて国内で生産することが難しくなります。牛の餌は75%が輸入で、国産は25%ですが、牧草などのカサがあって運ぶのにお金かかるものが国産です。これが自給できなくなる可能性があるのです。餌を全部輸入するとなると、日本の畜産物の自給は非常に厳しいものとなります。
  • 家畜の糞や堆肥は、場所によってはかなり高いレベルの放射性物質を含んでいます。有畜農業において、家畜は餌を食べて排泄してそれを堆肥にして作物を耕作するというサイクルを絶たなければならないことになるのか、それとも何らかの形で循環できるのかを、今後より真剣調査していく必要があります。

パネルディスカッション

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細野先生への質問

質問用紙から

グループインタビューの参加者は全国から集められたのですか?また、消費者の放射性物質に対する理解度に、地域的な傾向はありましたか?

細野

グループインタビューの参加者はほとんどが関東の方です。来年度も継続して調査を進めることができたら色々な地域で行いたいと思っています。
理解度の地域差については、調査前は東北や関東の方は西の方に比べると知識は高いのかなと思ったのですが、そのような傾向は確認されませんでした。

質問用紙から

実際の店舗での消費者行動との相関をとる予定はありますか?

細野

ぜひ店舗での行動は調査してみたいと思っています。例えばアイカメラをつけて買い物をしてもらい、実際にどの表示が見られているのかとか、キャンペーンをした場合は売上がどうなったかといった個人ごとのデータをとれたら、ぜひこちらのデータと突き合わせてみたいです。

質問用紙から

知識を与えることで購買行動が変わらないとすると、何をすると購買行動は変わるのでしょうか?

細野

今回の調査では、仮想的な商品選択において知識は影響をあまり及ぼしていませんでした。その理由のひとつとして、第一回の調査においては、問うた知識が少し難しすぎたこともあるかと思います。ただし、正答率が高い人は買う確率が高いということはあったので、知識の提供は影響していないけど元々知識がある人は評価が高いという傾向はありました。どういう情報を提供していくのが良いのかはもう少し検討し、また機会があればご紹介したいと思います。

質問用紙から

牛肉の価格低下は消費者の買い控えというより小売店の動向が大きく影響しているのではないでしょうか?

細野

小売店は、おそらく消費者は買い控えをするであろうということを想定し、被災地の食品をなるべく安く仕入れようとしていることはあると思います。今回紹介したかったのは、被災地の食品を買いたくない人もいるけど、100%以上の価格をつけている人もある程度はいるということです。公正な価格で買うという消費者に、それを買う機会を提供することは重要であると思います。

関崎

今回の事業は畜産物に絞っていますが、細野先生の調査はおそらく他の食品にも類推できる結果だと思いますので、ぜひこれからも続けてもらいたいです。

近藤先生への質問

質問用紙から

ヒドロキシラジカルの作用を抑える薬物を用いて放射線影響を調べた動物実験はありますか?

近藤

特にアメリカの軍で放射線防護剤の研究が進んでいます。動物実験や人での利用研究もされています。薬物を事前に投与し、ヒドロキシラジカルの作用を消去できるようなものがあれば、放射線の防護効果があると言われます。ただし、薬の副作用が強く、現在、実用化されたものがないのが現状です。

関崎

実用性を考えるとどのような状況でしょうか?

近藤

現在注目されているのは、被ばく後でも放射線による造血系の障害を減らすような工夫をする研究です。これは余談ですが、色々な研究者が興味ある研究をしていて、例えばビールを飲ませるとマウスの生存率が上がったというものがあります。ただし、そうしたものは残念ながら、系統が限られたマウスでの研究なので、人体への利用はすぐにはできません。

質問用紙から

内部被ばくで、核種ごとに蓄積する臓器が異なるのに、一括してシーベルトで評価されるのに疑問を感じます。

近藤

内部被ばくは、体内に取り入れた放射線源から照射されるということなので、外部被ばくと同じように基本的には放射線の影響を考えます。ご指摘のように、臓器によって蓄積する核種は異なります。しかし、核種ごとに臓器にどれだけ移行するのかというデータはあるので、それを考慮し、各組織での値を合算し、最終的にシーベルトで表しています。その結果、比較は可能ということになります。

眞鍋先生への質問

質問用紙から

肉だけでなく牛自体の生体機能、発がん等の研究も行われるのですか?また、その結果の人体への推定の公式はできているのでしょうか?少しでも検出されたら買わないという人への対応はどのようにすればよいのでしょうか?

眞鍋

20km圏内に150日間いた豚やその子どもがどうなるのかを調べています。どれだけ被ばくしているかはあくまでも推定値ですし、検出感度等の問題はあるのでしょうが、今のところ変な問題は起こっていません。おそらく、高い線量を一度に被ばくした場合と、低いレベルで長期間被ばくした場合の影響は違うということがあると思います。調査はまだ途中ですので、結果は来年の今頃に報告する予定です。

質問用紙から

乳牛に360Bq/kgのヘイレージを給与した場合、廃乳牛は100Bq/kgを下回るのか、もし調査していれば教えてください。

眞鍋

今回の調査に使ったヘイレージの濃度はどんなに大きくても500Bqでした。また、ヘイレージだけではなく穀物等も与えました。しかし、汚染度の高い餌を実験的に与えるということをしなければ、筋肉が100Bq/kgを超えることはないのではないかと思います。ただし、ゼロでなければならないということであれば、50Bqなどはバックグラウンドのレベルですので、それ以下を測定することは技術的に難しいと思います。ちなみに廃乳牛では放射性セシウムが大体80Bq前後なのに対して、カリウム40は200Bqを超えます。

質問用紙から

先生の農場では反転耕で新基準値を下回る粗飼料が生産できるとお考えですか?また、土壌汚染についてどの程度までなら反転耕で対応できますか?

眞鍋

反転耕は表面の土壌を中に埋め込む方法です。去年の秋の段階で私たちもやっており、10cm単位で土の濃度の測定もしました。結論として、私たちはそれを止めようということになりました。混ぜたとしても結果的に放射性物質が減るわけではありません。農薬ですと代謝され最終的には水や二酸化炭素になるのですが、放射性物質は物質なので、結果的にどうなるか、土の中での代謝がまだよく分かっていないのです。もし問題になるほど濃度が高いのであればどこかに山積みにして、何十年か置いておこうということになりました。反転耕が良くないということではなくて、畑の中での動態についてはまだ分かっていないことが多いので、止めておこうということです。

関崎

東大農学部での復興プロジェクトで中心的になっておられる中西先生が講演の中で、この問題の解決のためにはとても一つの専門分野だけではできないと仰っていました。草の専門、土壌の専門、水理の専門、色々な専門家がそれぞれの技術を使って総合して考えないと、何が言えるのかがはっきりしないと。今回発表された先生方もまだまだ途中の段階ですので、これからに期待したいところです。

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