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Report of Science Bus Tour in Fukushima “Let’s visit, see, ask and eat!”

掲載日:2013.11.19

サイエンスバスツアーin福島を開催しました

11月2日、サイエンスバスツアーin福島「行って、見て、聞いて、食べてみよう!~お肉について丸ごと知る一日~」を開催しました。

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関崎教授からの始まりの挨拶

会社員や学生、主婦、研究者、報道関係者など総勢41名が参加。
一台のバスで福島に移動し、放射性物質分析施設や肉牛農家を見学したほか福島牛の焼肉に舌鼓を打ち、福島県産の農産物の安全性と品質について実感した一日となりました。(ツアー同行者:関崎勉教授、細野ひろみ准教授、田野井慶太朗准教授)
※このツアーはJRA畜産振興事業「平成25年度畜産物の安全に関するリスクコミュニケーション事業」の一環として行ったものです。

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「震災後に福島県に行ったことのある方はいますか?」の問いかけに数人が挙手

 

福島へは片道約4時間。たっぷりある移動時間には、各自休憩するほか(集合時間が6時50分と早朝でした)、田野井准教授からはクイズを交えたミニ講義が行われました。

131102サイエンスバスツアー講義資料(リンク先は外部サイト・スライドシェアです)

福島県農業総合センターを見学

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2006年に発足した福島県農業総合センターはガラス張りの美しい建物です。
震災の際にもガラスは一枚も割れることなく、避難所として使われ、180名ほどの避難民が寝泊まりをしていたそうです。

福島県農業総合センターは農業関係の試験研究のための機関ですが、震災後は農産物の放射性物質分析の場として使われています。福島県のちょうど真ん中に位置しており、農林水産物を集めやすいというメリットがあるそうです。

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まずは福島県農業総合センターの安全農業推進部長平子(たいらこ)喜一さんから、放射性物質検査の概要を伺いました

福島県では現在、玄米と牛肉は全量が、そのほかの農畜水産物は抽出して検査されています。

こちらのセンターでは、福島県で生産されている農畜水産物のうち、販売に供されるものが分析の対象となっており、基本的には試料が持ち込まれた翌日に結果を公表しているそうです(分析は月~土に行われている)。

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分析室内への立ち入りはできないので、廊下からの見学


 
放射性物質の分析はまず、試料の調製の段階で一苦労があります。

検査をする農畜水産物の洗浄や根などの除去の下処理のために約20分、その後、細切などの前処理のために約20-30分かかるそうです。

牛肉は脂身をとり赤身のみを刻んで検査しています(筋肉にもっとも放射性物質がたまるため)。

放射性物質の汚染を防ぎ、正確に分析を行うため、前処理や分析の際に用いる手袋や容器、刃物などは全て一点ごとに使い捨てをしています。
牛肉を刻む際にはカッターを使いますが、カッターの柄も使い捨てにすることはできないため、前処理の担当者は刃のみを使い刻んでいるそうです。
今のところ幸いにも怪我人は出ていないとのことですが、手に負担がかかるなど危険が伴うことは想像に難くないでしょう。

ドアの窓越しに撮った分析室内の様子

1台で1.5トンもあるゲルマニウム半導体検出器

センターではゲルマニウム半導体検出器が10台稼働しており、一日に約200点の分析が行われています。

牛肉1点を分析するのに約35分(検出限界は一桁)、コストは数千円かかっています。
分析を開始した当初は容器の入手などが難しく、1点につき約2万円もかかっていたそうです。

JA全農福島直営・福島牛焼肉「牛豊」でランチ

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施設見学の後は、焼肉のランチです。

お店に向かう車中ではJA全農福島・福島県畜産部畜産販売課の小松良雄さんから福島牛の美味しさについて伺い、期待感が高まりました。

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福島牛と麓山高原豚の盛り合わせ

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ご飯は新米でした

ツアー当日にお店で使っていた福島牛は二頭で、中島村で生まれ会津の猪苗代町で育った牛と、田村市で生まれ喜多方で育った牛とのことでした。

福島牛は脂がよく入って柔らかく非常に美味しいお肉で、一同舌鼓を打ちました。

JA全農福島直売所「愛情館」で旬の農産物をショッピング

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焼肉店の隣にあります

直売所では、今が旬のりんごや米(福島県の新品種「天のつぶ」)、きのこ、白菜、ネギ、大根などが並んでいました。

お店の片隅には、レストラン隣の工房で作られた美味しいジェラートが販売されていました。

かご一杯に買い物をする人、ジェラートを食べる人・・思い思いの時間を過ごしました。

 

 

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広い店内には旬の農産物がたっぷり

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本田農場を見学

農場に入る前には、家畜伝染病予防のために全員靴カバーを装着

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本田農場では、福島県や北海道、九州の市場を通して導入された黒毛和種が175頭飼養されています。
出荷される約30か月齢の時には、牛は750キロから800キロもの大きさになっているそうです。

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迫力のある大きさですが、人懐こい様子に「かわいい」との声も上がりました

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牛は一日に配合飼料を約8キロ、粗飼料を約1-2キロ食べます。

放射性物質の問題で牛を出荷できなくそのまま飼い続けるしかなかった時期がありました。そうした牛の肉はさしがよく入っていたそうです。こうした経験から長く飼えばさしが入る良い肉になることが分かったそうですが、やはり餌代が割に合わないとのことでした。

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敷料や飼料について解説する小松さん

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約180頭の牛を育てるためのわらを作るのに田んぼは20ヘクタールの面積が必要となりますが、そうした量は作り切れません。そこで、安全が担保された県内産や九州産のわらを取り寄せて使っているそうです。

配合飼料(穀類53%、そうこう類40%、植物性油かす5%、その他2%)は人間の食事でいうとおかずのようなもので、粗飼料(チモシー、稲わら)はご飯のようなもの、牛を育てるためにはどちらも必要だということを伺いました。

参加者からのコメント

ツアー中に細野准教授が線量計を携帯し各地で空間線量率を計測したところ、都内では0.08マイクロシーベルト/時間、福島県内のある地点では0.14マイクロシーベルト/時間でした。
田野井准教授によると、空間線量率は元々地域差があり、今回計測した程度の差は地域差の範囲内とのことでした。

帰りの道中では、参加者の皆さんから一言ずつコメントや質問をいただきました(下記抜粋)。

  • 直売所ではきのこなどを購入したが、安心して食べられそうだ。
  • 復興が着実に進んでいることを感じた。
  • 牛が育って肉になるまでの流れを感じることができた。
  • ニュースで「検査しています」と言われても懐疑的だったけれど、分析施設を見学して安心できた。
  • 検査の様子を見られて良かった。
  • ニュースではよく見聞きするけれど、本当に安全なのかどうかを知りたかった。検査を丁寧に行っていることを知り、安心できた。
  • 肉が美味しかった。農家の方は牛を大切にしていて、分析施設は熱心に分析していると感じた。分析にはお金がかかっているが、どこまで続けていけるのだろうかと疑問がわいた。
  • 午前中の講義のファイルが欲しい。
  • 教育関係を仕事にしているので、今回の経験をもとに学生に安全と安心について話したい。
  • 畜産の現場を見られて良かった。
  • これまで「検出された」など、記事は書きっぱなしになってしまうことがあった。記事ではなく、消費者に実際に見てもらいたいと思い、このようなツアーを提案した。今はマスコミではなくクチコミが重要だと思う。皆さんは福島の真実の姿を周りの人に伝えて欲しい。
  • 福島の現状と、消費者がどのように思っているのかを知りたく、ツアーに参加した。安心を判断するのは皆だと言っていた分析施設の方は真摯だと感じた。
  • 畜産関係の仕事をしていたことがあり、以前は福島に住んでいた。また、仕事で食の安全に関することをしている。風評被害を作ってしまう人に接する際にどのようなアプローチをしたら良いか考えたかった。福島は日常に戻りつつあり、過剰に反応する必要はないのかもしれないと思った。
  • 現場を見ないと分からないことはある。こんなに丁寧に検査しているのにベクレルの数値の発信力の方が大きい。専門家が直接発信していくことが信頼を生み出すきっかけになると思う。
  • フランス人の友人が福島のドキュメンタリーを撮影している。内部被ばくの方が危ないと言われていたけど、検査の様子を見て、こんなに丁寧にやっているなら大丈夫なのかなと思った。
  • きっちりと検査されている様子を知り、安全は確保されていると感じた。知らないからくる漠然とした不安が払拭されたことは収穫だった。今後このような事実が伝わっていけば良いと思う。
  • 前から産直市などで福島県産を見かけたら買うようにしている。丁寧に検査しているのを見て、一層安心感が強くなった。
  • 福島県の牛の映像を以前テレビで見て、気になって参加した。福島県産はあまり売っていないので、もっと流通に乗れば良いと思った。
  • 体験したことを友人たちに伝えたい。どうしたら関心を持ってもらえるか考えたい。
  • 連れに誘われて参加した。こういう機会がなければ福島に来て肉を食べることはなかったと思う。
  • 分析にかかるコストの問題を聞き、安全を守るのは大変だと思った。
  • 肉がとても美味しかった。JAの方に、福島県産と大きく書けないということを聞いて残念だと思った。生産現場ではわらのロールなどを見て、どのようにして肉が生産されているのかが分かり良かった。
  • 福島県産のものは学校給食などでは避けられることはある。自分のような高齢者が食べれば良いと思って今活動をしている。
  • 福島の広さを実感し、福島だから危ないという物の言い方は正しくないと思った。

参加者からの質問

参加者

参加費は3千円と安いのに、こんなにお得な内容なのはなぜ?

関崎

このツアーはJRA畜産振興事業の一環として行っていて、そうした事業の予算を一部使っている。アイデアは共同通信の澤野さんからもらい、ツアーの内容を企画する際には生協で行われている事例を参考にした。

参加者

別の農場に行ったとき、すごく臭かった。今日の農場はそんなに臭わなかったが、どのような違いがあるか?

関崎

臭いの違いが何からくるのか、調べられているがよく分かっていない。今日の農場はおがくずや籾殻をかなり厚く敷いていたが、新しいのに代えたばかりだと言っていたので、それが関係しているのかもしれない。衛生面をしっかり管理することは、病気の防止にも重要だ。

参加者

被害が一番大きかった場所はどのようになっているか?

田野井

いわき市などは平常な状態になっているが、海の近くでは農業はほとんど機能していない。次回はそうした地域のバスツアーができれば良いと思う。

終わりの言葉

関崎

今日皆さんからいただいた意見は、今後の情報発信に活かしたい。
福島県を応援というのは良いけれど、いつまでも応援するのではなく、これだけしっかりと検査されているのだから、品質や価格の面で、他の地域と同じ土俵で早く戦っていけるようにならなければならないと感じた。

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本田農場で。皆様、ありがとうございました!

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