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Report of the 9th Science Café “Let’s ask about the radioactive concentration level in Fukushima: at present and in the future”

掲載日:2014.08.29

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関崎さんの挨拶から始まります

8月11日、第9回サイエンスカフェ「聞いてみよう!福島県の放射線のレベル~現在とこれから~」を開催しました。
関崎勉センター長の挨拶に始まり、細野ひろみ准教授のファシリテーションのもと、事故後に文部科学省で放射線モニタリングに携わっていた小川壮特任教授に、線量分布の推移や避難解除の現状などについて話題提供していただきました。
台風一過の暑い日でしたが多くの方にご参加いただき盛会となりました。ご参加くださった皆様、ありがとうございました。

配布資料(PDF)

※表記のない箇所の発言は全て小川特任教授によるもの。
※質疑応答は一部抜粋。

放射性物質の分布に影響を及ぼすもの

  • 被ばくには外部被ばくと内部被ばくがあります。本日は、体の外から受ける放射線によって被ばくする外部被ばくについてお話します。
  • 原発から出てくる放射性物質は、空気の流れに沿って、雲や霧のように流れます。これは放射性プルームと呼ばれます。放射性物質は雨が降ると地面に落ちます。従って、放射性物質は原発の同心円上に分布するわけではなく、空気の流れや降雨に影響を受けます。
  • 新聞などで、空間線量率の図を見たことがあると思います。この図では、色が赤に近いほど汚染は強く、青に近いほど汚染は弱いことを意味しています。今回の事故では、汚染は原発の同心円上ではなく、浪江町や飯舘村の方に強く出たことが分かります。

どのように空間線量率を測ったか

  • 事故直後、福島県の約2,000か所で放射線を計測していましたが、山が多いため人が入っていけない場所もありました。そこで、航空機モニタリングを行うことになりました。
  • 航空機にNaIシンチレーターとGPSを搭載し、地上から150~300m上空を飛行しながらガンマ線量と位置情報を測ります。直径300~600mの円形の範囲が行き来しながら、地図を埋めるように動きます。このようにして空間線量率の図は作られます。
細野

何機くらいの航空機が動いているのですか?

小川

航空機は行ったり来たりしながら動きますし、天候に左右されるので、年に何回も計測することはできません。一回の計測には1か月~1か月半かかります。

参加者

資料の空間線量率の図に記載のある「測定値は地上1m、また4月29日に全て換算」とはどういう意味ですか?

小川

計測には1か月~1か月半かかりますが、放射性物質には半減期があるため、時差があると値が変わります。従って、ある日に合わせて全ての計算を行い、値を出しています。また、計測は地上150~300mの高さで行っていますが、大人の内臓がある高さである地上1mでの値に換算しています。

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話題提供者の小川さん(左)とファシリテーター役の細野さん(右)

参加者

測定者として、文部科学省の他にアメリカのエネルギー省が入っていますが、どうしてですか?

小川

事故直後、日本は空から計測する技術を持っていなかったので、4月は文部科学省とアメリカのエネルギー省が計測しました。5月からは文部科学省と自衛隊が計測し、それ以降は日本が計測しています。

空間線量率の図から分かる汚染の分布

  • 東日本全域の空間線量率の図から、福島県以外にも、岩手県と宮城県の境の辺りや、栃木県、群馬県、茨城県にも放射性物質が分布していることが分かります。複数の原子炉から何度か放射性物質が放出されてプルームとして流れていった結果、それぞれ別の場所を汚染したのだと思われます。
  • 日本全体で見ると、新潟県や紀伊半島のフォッサマグナの辺り、岡山県、鳥取県、ウランが採れる人形峠の辺り、広島県、阿蘇の辺りで線量が高いところがあります。これらは自然放射線が高い地域です。

福島県で放射能はどのように減っていくか

  • 放射性物質には半減期があるので、時間が経つにつれ、量は減っていきます。ヨウ素131は体内に入ると甲状腺に集まり甲状腺がんを引き起こしますが、半減期の8日が経つと1/2に、16日経つと1/4に減ります。
  • 今回の事故で一番問題になっているのはセシウム134とセシウム137です。半減期は、セシウム134は2年でセシウム137は30年です。放出された量はセシウム134と137で1:1であると言われています。30年後は、セシウム134は1/30,000になりますが、137は1/2にしかなりません。セシウム134は事故後数年でぐんと減ったので、全体の放射性物質量としては急激に減りましたが、問題はここからです。セシウム137はなかなか減らないので、半減期だけで考えると、福島県でこれ以上線量を減らすのは難しくなります。
  • 事故後7か月と30か月の放射線量を比べた場合、半減期から推定すると34%減少しますが、実際には47%減少しています。一般にウェザーリング効果と呼ばれるもので、土の中に入る、雨で流される、除染の効果などによるものです。ウェザーリング効果によってどう減少するかを推定するのは難しく、数式を解くようにはいきません。

モニタリングポストで起こった問題

  • 原子力規制委員会のホームページでは、リアルタイムで空間線量の測定結果を公開しています。空からの計測には時間がかかるため、福島県ではずっと可搬型モニタリングポストやリアルタイム線量計で計測しています。福島県内に2,700台ほど設置されています。個々の機器には太陽光パネルが付いていて、計測データは無線で送信され、その集計結果がホームページ上で公開されています。現在の担当は原子力規制委員会ですが、事故半年後の設置は文部科学省が管理していました。
  • 私は事故1年後くらいからこの機器の担当になりました。順調に設置が進んで良かったと思っていたところ、市民団体からあるクレームが来ました。モニタリングポストでは、サーベイメーターで計測をするよりも低い値が出ているというのです。低い値が出るのは機器の2~3割だったので故障か製造ミスかと思いましたが、調べてみるとそうではありませんでした。メーカーの方と数ヶ月かけて原因を探ったところ、大きく分けて3つの原因に行き当たりました。
  • 1つ目は、蓄電池の置く位置です。放射線は360°から同量来るわけではありません。例えば、蓄電池を汚染されている木のある方に置くと、放射線は蓄電池の鉛で遮蔽されるので、実際よりも低い値が測定されます。これは設計上の問題なので、蓄電池の置く位置を変えました。
  • 2つ目は、サーベイメーターと、可搬型モニタリングポストやリアルタイム線量計では、計測している物理量が違うということです。無理矢理同じシーベルトという単位に変換している結果、どうしてもサーベイメーターの方が高い値が出てしまいます。
  • 3つ目は福島県の調査で分かったことですが、機器を設置する際にその場所の草を刈っており、それが結果として除染になっていたということです。
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モニタリング担当者としての体験談が参加者の興味をひきました。

参加者

機器には個別に太陽光パネルが付いていますが、エネルギー的に独立しているのですか?

小川

事故が起こった時、原発の周辺に設置されていたモニタリングポストの回線が切れて全滅してしまいました。そうしたことがないように、現在は個別に独立して動くようにしています。

計測値を見る時に大切なこと

  • これらの計測機器は、その場所・その方向の放射線量を測っているに過ぎません。機器から数メートル離れたり別の方向を向いて測るだけで、放射線量は変わります。そのため、計測値の絶対量だけでなく、その値がどれだけ変動しているのかを継続的に見ることが非常に重要です。
  • 計測値が変動する最大の要因は天気です。雨が降ると、空気中に漂っている放射性物質が地面に落ちてくるため、値は高くなります。雪が降ると、地面の放射性物質が雪で覆われるため、値は低くなります。
細野

雨や雪が降るとどのくらい変動しますか?

小川

私の経験では、雨が降ると2~3割高くなり、雪が降ると1/3くらいにまで低くなることがあります。

参加者

事故後SPEEDIのデータが早く公表されていれば・・と言われていますが、どのようにお考えですか?

小川

文部科学省では事故検証委員会が今回の事故で反省すべき点を検証していますが、その一つとしてSPEEDIが取り上げられています。SPEEDIのデータは早く公表すべきだったというのが文部科学省の見解です。

参加者

SPEEDIのデータを早く公表しなかった理由は何ですか?

小川

事故当時、各省庁は、SPEEDIを含めて事故に関するデータは、原子力災害対策本部に送ることになっていました。原子力災害対策本部が住民の避難などの報道発表を行うことになっていたからです。文部科学省はデータを送っていましたが、原子力災害対策本部はそれをすぐには公表しませんでした。公表できなかったということかもしれませんが。

参加者

それは民主党政権だったからということですか?

小川

そうした議論もあるかもしれませんが、そのマニュアル自体は自民党政権の時からあったものなので、政権の違いからくるものではない気がします。

福島県で設定された避難に関する三つの区域

  • 福島県では最初に三つの避難区域が設定されました。原発半径20km内が警戒区域、20~30km内が緊急時避難準備区域、そして、汚染は同心円上に均等にあるわけではないので、計画的避難区域があります。警戒区域と計画的避難区域では避難が指示されました。
  • 放射性物質の半減期とウェザーリング効果を考え合わせて、5年後の空間線量率を試算しています。その結果、5年を経過しても年間積算線量が20ミリシーベルトを下回らない可能性のある地域を帰還困難区域、20ミリシーベルトを超える可能性のある地域を居住制限区域、20ミリシーベルトを切ると想定される地域を避難指示解除区域とし、昨年夏に設定を組み直しました。
  • 普通に考えると、年間積算線量を365日24時間で割れば、毎時の空間線量が出てきますが、実際には、屋外に8時間・木造の屋内に16時間居ると仮定して計算し、毎時3.8マイクロシーベルトが年間20ミリシーベルトに相当するとしています。計算の際には、木造の屋内は0.4の低減効果があるとしています。
  • しかし、人それぞれの生活スタイルによって、必ずしもこのような放射線量にはなりません。例えば、鉄筋の住居に住み、車で通勤し、オフィスは鉄筋のビルという人であれば、同じ毎時3.8マイクロシーベルトの地域に住んでいても、年間被ばく量は20ミリシーベルトよりもずっと低い値になります。一方で、林業や除染されていない農地で農業を営んでいる人では、被ばく量は高くなる可能性があります。
  • 避難区域の設定の際には、えいやっと年間20ミリシーベルトで分けることになりましたが、この計算はあくまでも一つのモデルに過ぎません。これからの福島県を考える際には、個人個人で生活が違うということをよく理解しないといけません。
参加者

年間20ミリシーベルトなら安全だという根拠はあるのですか?

小川

基準は、年間20ミリシーベルトが安全かどうかという議論よりも、ICRPという国際機関が出している報告書を基にして設定しています。ICRPは、平常時は年間1ミリシーベルト以下、事故が起こった時は20~100ミリシーベルト、現存被ばく状況は1~20ミリシーベルトの間で避難基準を設定すると勧告しています。現在の福島県は現存被ばく状況に近いので、20ミリシーベルトという値を採用しました。

参加者

温泉の近くなど元々自然放射能が高い場所は、避難区域の基準とは関係がありませんか?

小川

この基準は追加的な被ばく量について考えています。

参加者

自然放射能と人工的な放射能で、健康影響に違いはありますか?

小川

アルファ線、ガンマ線、ベータ線という線質で違いはありますが、自然か人工かで違いはありません。同じ線量かつ同じ線質であれば、健康影響は同じです。

参加者

航空機やモニタリングポストで計測しているのはどの線質ですか?

小川

アルファ線やベータ線は飛んでいかないので、ほとんどがガンマ線です。

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細野さんが参加者との会話を繋いでいきます。

参加者

実際はアルファ線やベータ線もあるから、その計測値よりも高いということですか?

小川

線量は地面に近い方が高くなります。モニタリングポストは1mの高さで計測していますが、子供への影響を考える場合は50cmの高さで計測した方が良いのではないかという議論があります。なお、アルファ線やベータ線はそれほど長い距離を飛びませんので、影響は小さいです。

細野

外部被ばくではガンマ線が中心になりますが、食べ物などによる内部被ばくではアルファ線も大切ですね。

福島県のこれから

  • 8/1の産経新聞で見たのですが、環境省が除染目標を空間線量から個人の線量に切り替えると言っているそうです。記事の元データが見つけられなかったので詳しいことは分かりませんが、個人的には、やはり、十把一絡げで全ての人を屋内16時間・屋外8時間と仮定して計算するよりも、個人個人で計測する方が合理性はあると思います。
  • 今年の4月には、原発20km圏内としては初めて田村市都路地区が避難区域解除になりました。7月下旬には川内村で解除の予定でしたが、まだうまくいっていないようです。
  • 避難区域解除に関しては、どれだけ被ばくするのかということだけでは割り切れない部分が非常に大きいと思っています。今後除々に避難解除は進んでいくと思いますが、まだ帰ることのできない人が大勢いることを忘れてはいけませんし、避難解除されたら幸せなのかという問題もあります。インフラが整っていることも重要ですし、農林水産業を営んでいる人が戻った時に、その場所で米を作れるか?野菜を作れるか?魚を獲ってもいいのか?という問題があります。また、ある委員会でのある先生の発言ですが、親心として子供を連れて帰れるか?という問題もあります。これは理屈とは別の世界です。
  • 事故から3年経ち、福島県への関心が薄れてきていると感じています。先ほど言ったように、福島県における放射線量は今後なかなか減らないと予想されるので、長期に渡る問題になるでしょう。帰る人たちが本当に苦しい立場に立たされるのはこれからではないかと思います。皆さんで、もう一度福島のために何ができるかを問い直す、関心を持ち直すということをしなければなりません。
参加者

この間、体内を調べてもらったのですが、セシウムとウランがたくさん入っているのでミネラルのサプリメントを摂った方が良いと言われました。何か対策はありますか?

小川

セシウムはカリウムと同じアルカリ金属なので、放射性セシウムを体外に出すならカリウムをたくさん摂った方がよいのだと思います。ウランは体内ではカルシウムと同じ動きをします。

参加者

福島県の農産物はきちんと検査がされているので大丈夫だと思いますが、周辺の県ではどうなのかなと思っています。文部科学省として、このことにメスは入れられないのですか?

小川

農産物の検査は文部科学省の管理ではないので難しいと思います。

参加者

浄化装置ALPSを通せば、放射性セシウムに関しては安全であるとされていますが、その他の物質は大丈夫ですか?

小川

トリチウムだけは取り除くことができません。その他の放射性物質は除去できるので、トリチウムの被ばくをどう評価するかが焦点になります。

田野井

文部科学省として、今回のような退去措置で良かったか、もっとこうしたら良かったなど、反省点はありますか?

小川

思うところはたくさんあります。事故後、「想定外だった」という言葉がよく聞かれましたが、それはやはり逃げの言葉であり想定できなかった側の不備であると思います。その点で反省すべきことは山のようにあると思います。新しいマニュアルはできていますが、それが実効性のあるものかどうかは厳しく見た方が良いと思います。

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福島県のこれからについて思いを馳せました。

田野井

低すぎる線量で避難をして、その影響で亡くなるという人もいますので、バランスが重要だと思います。

小川

難しいですね。その時々の判断というものが大きく効いてくると思います。

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