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Report of the 29th Science Café “Season of appetite:autumn;’Gibier’ food poisoning risk and countermeasures”

掲載日:2018.03.22

話題提供者の関崎さんの写真

話題提供者の関崎さん

2017年10月12日第29回のサイエンスカフェ「食欲の秋…聞いてみよう! ジビエの食中毒リスクとその対策」を開催しました。東京大学大学院生命科学研究科附属食の安全研究センターの関崎勉センター長(食品病原微生物研究室教授)より、近年環境保護や農作物を鳥獣害から守る害獣駆除の面からも広く推進されているジビエを切り口に話題提供。たとえ新鮮でも注意が必要な畜肉の扱い、動物が本来持っている菌等、食中毒リスクとその対策を紹介し、安全に食べるためのポイントについて、参加者の皆さんと確認し合いました。



○第29回サイエンスカフェ配布資料(pdf)(クリックすると開きます)
※以下、記載がない場合の発言は関崎氏のもの
※質疑応答は一部抜粋

ジビエとは?

    今日はジビエのお話しから入りますが、普通に飼われている家畜も同様に似たような危険性がありますので、それも併せてお話しします。最近ジビエというはやりがあるようで、食べる機会が増えてきたと思います。ジビエというのは、フランス語だそうで、もともとは貴族が野原に狩りに行って、ウサギ、シカなどを捕まえて、持って帰ってきて、友人や家族に振る舞うところから始まった、貴族の文化から受け継がれた伝統料理ということです(スライド2)。写真は、左はウズラ、右はシカ肉でしょうか。おいしそうな料理がいろいろ出ていますが、このあとの話を聞くと心配な点が出てくるかもしれません。

なぜジビエがさかんなの?

    最近、ジビエの消費が急拡大しています。いろいろな自治体でも地産地消とか、村おこし、町おこしということで、それぞれの土地のシカ、イノシシなどの肉を店内のレストラン、道の駅など、いろいろなところで食べさせてくれるようになっていて、それにかかわってジビエ振興協議会というのが発足しまして、ジビエの肉を安全に皆さんに提供するためにさまざまな取り組みをしようと、活動が行われています。各地にそういった活動はありますが、例えば北海道辺りは野生の動物がたくさんいますので、もう20〜30 年前からエゾシカの肉やクマ、トドなど、いろいろなものを食べる習慣があります。さらに近年になってその消費もどんどん増えて、もうどこに行っても食べられるような状態になりつつあります。(スライド3)

    • 野生の動物がどれくらいの数がいるかの推計です(スライド4)。野生動物ですから1頭1頭全部数えることは不可能です。そこで、ある一定のエリア内にこれだけいるから、それを広げて考えると、全体でこれくらいはいるだろうという推測です。それにも幅があって、本当の値は分からないんですけれども、現在言われている数はヒグマで2万頭くらいです。ツキノワグマが10万頭近く、シカ、ニホンジカ、これは本土ジカですが、260万頭、エゾシカが北海道の推定で65万頭、イノシシが88万頭。何万頭という数だけではちょっとピンと来ないかもしれません。しかし、ちょっと前はこんなにたくさんいなかったんです。それがものすごく急激な増え方をしています。(スライド5)
    • 急増したために、一番今困っているのが農作物の被害です。例えば、シカ(スライド6)。草原ののどかなところでシカが散歩しながら草を食べていて微笑ましい光景のようですが、ここは牧草地です。ここの草を刈ってウシに食べさせようと思って草を生やしているのに、シカが勝手に入ってきて食べてしまい、大損害になっています。冬になると、北海道では雪が降って下草が隠れてしまいますから、シカが食べるものがなくなってしまい、木の皮を片端からかじって取って、結果として木が枯れてしまう。そういう被害もあるわけです。
    • 最近は暖かくなってきて雪が積もらない場所も増えてきています。すると、生えている草がどんどん食べられてしまう。この被害が非常に甚大です。牧草だってちゃんとお金をかけて、種をまいて育てて、刈り取って乳牛に食べさせてミルクを搾るということをしているわけです。そのための餌が勝手に入ってきたシカに食べられる。しかも、シカはピョンピョンはねますので、牧草地に柵を作っても、たいがいの柵は飛び越えて入ってくるので、ほとんど防ぐのは不可能なんです。
    • イノシシの被害もあります(スライド7)。1989年、バブルの盛りの頃には25万頭くらいだったのが、今88万頭といわれるほど、シカと同様なカーブで急増しています。もともとそんなにたくさんいなかったのが、ものすごく増えています。
    • 結果として、多くの農作物被害が起きています(スライド8)。イノシシはたいがいのものは食べます。畑で育てている作物、ナスでもトウモロコシでもカボチャでも何でもです。それもきれいに列で栽培しているのを端から1列ずつ食べてくれればまだいいんですけど、むちゃくちゃに食べ散らかして、もうほとんど全部商品にならない状態にしてしまう。こんなふうに急激に動物が増えちゃった理由は、何だと思いますか。
澤田

ニホンオオカミがいなくなったということですかね。

関崎

ピンポン。オオカミはイノシシやシカにとっては天敵ですから、そうした動物がいると食べてくれて、数を抑えてくれます。結果、農作物が守られるということで、江戸時代あるいはその昔から、オオカミというのは畑にとっては神様として崇められ、オオカミを祀った神社がいっぱいあるんですね。映画の『もののけ姫』でもオオカミが神様みたいになっていましたね。昔から日本人には、オオカミがいてくれているおかげでイノシシが減って作物が守られるという考え方もあるんです。害獣が増えた理由は、ほかに何か考えられますか。

参加者

農業人口が減った。

関崎

おっしゃるとおりです。農業人口が減って耕作を放棄してしまった畑や田んぼがたくさんあるんですね。これもイノシシやシカが里山から下に下りて、出てきやすい環境を作っているということです。

  • あとは犬ですね。近頃はつながれてない犬なんて見たことないですよね。皆さん、鎖かリードをつけて、大事に抱っこしたりして。でも僕が小さい頃などは、首輪も綱もついてない犬がその辺に結構いました。そういう犬は街の中では野良犬、田舎に行くと野犬と呼ばれていましたが、そういう犬もいなくなった。こいつらもイノシシの子供なんかにとっては大敵でしたが、今はいないですね。さらにもう1つは、ハンターの減少です。ハンターは今、絶滅危惧種です。おかげでシカやイノシシは野山、里山でヌクヌク暮らしていられるわけです。
澤田

ハンターが少なくなったことにも理由があるんですか。

関崎

理由は分からないですね。昔から同じくらいの基準で資格を与えているんですけれども、はやりが廃れたというんでしょうかね。今ハンターをやってらっしゃる方はかなり高齢化が進んでいるんです。高齢になると、鉄砲を撃つのがだんだんできなくなってきてしまう。それで、罠を仕掛けて取るということになります。罠というのは、目で見ていて罠を動かすわけじゃなく、たまたま通りかかった動物が仕掛けてあった罠を踏んじゃってカシャッと捕まる。だから、取らなくていい動物が引っかかっちゃったりしています。

    • つい最近、テレビでも天然記念物のニホンカモシカがシカの罠にかかってしまって、抜け出そうともがいているのを助けてあげようとしたら、そのニホンカモシカが大暴れして、ショックで死んでしまったというニュースを放送していました。このようにハンターの数が減っているということも一因としてあります。それから、温暖化が進んで冬でも雪をかぶらないために草がむき出しになっている。すると、シカの餌が冬でも目の前にあるので、それでまた増えてしまう。
    • お話の出ていた耕作放棄地について、耕作放棄地の面積の推移を表したグラフがあります。1923〜2004年までの様子を見ると、バブルの頃から急激に増えているんです。耕作放棄地面積の推移の線と照らし合わせると、シカ、イノシシの類いも同じ頃から耕作放棄地の増加とともに急に増えているんですね。

野生動物の隠れ場所が増えたせい?

    もう1つは山です。山に木がいっぱいあります。動物が隠れる場所がいっぱいあります。実は昔は日本の山はそれほど木ばかりではなかったんです。特に江戸時代に森林の破壊がどんどん進んだらしく、画面の浮世絵にあるように里山はほとんどはげ山です。動物が隠れる場所はありませんでした。明治に入ってから営林署ができて、木を一生懸命植えたので、山というと木にいっぱい覆われて、その下には草がいっぱい生えているようになりました。イノシシもシカも隠れる場所がいっぱいできて、その結果、数が増えています。

    • 日本のオオカミが絶滅したのは1905年です。先ほどの耕作放棄地の関係のグラフはバブルから始まってしばらくたってから急に増えていましたね。それよりはるか昔にオオカミはもういなかったんです。もちろんオオカミは1つの大きな理由だと思うんですけれども、オオカミがいなくなったからだけじゃなくて、いくつものいろいろな要因が重なった結果、絶滅危惧に近かった野生動物が急激に増えて、とんでもないことになっているというのが現在の状況です。
    • このまま放置していくと、野山も作物も荒らされて、やっていけないですし、野生動物はこれからお話しするようないろいろな病気のもとになるものを持っているわけだから、やはりある程度数を抑える方向で、かつ仲よく生きていく方策を講じなければいけないだろうということで、その一番の方法が、ジビエとして食べる、命をいただくことではないかという話なんですね。
    • 北海道は昔からエゾシカの被害をどうしたらいいだろうと悩まされています。シカの肉はもともとおいしいので、いろいろなところで食べられるようにしたらいいだろうと、ずっと活動が続けられています。一般社団法人のエゾシカ協会というものがあって、エゾシカの肉をおいしく食べ、それだけではなく、衛生的にもきちんとした扱いをしましょうという取り組みをずっと続けています。これだけではなく、日本全体でもジビエをもっとたくさん、しかも安全に食べられるようにということで、今、いろいろな取り組みがなされています。(スライド9)

野生動物がもつ病気、病原体

    野生動物ですからいろいろな病気、病原体を持っていて、それを食べてしまって病気になってしまったという例がたくさんあります。全部挙げるときりがないので、幾つか気になるものを紹介します。(スライド10)

    • はじめに紹介するのは寄生虫で、トリヒナというもの。旋毛虫という寄生虫が、筋肉の中に寄生し、それを食べることによって、この寄生虫に人間が感染してしまう。実はこの事例よりもっと前にも東北地方ではツキノワグマで、北海道ではヒグマで同じような事件がありましたが、これが結構大きい事件で、何と旅館でツキノワグマの刺身を出したんですね。
    • 北海道では肉を食べるのにルイベという食べ方があります。冷凍、凍結状態を何回か繰り返すと肉に入っている寄生虫が死んでしまいます。凍結状態にすれば寄生虫が死ぬから、そうすれば食べられるということで、凍結を繰り返して作ったものをルイベと呼びます。もともとアイヌの方がヒグマを生で食べるためにそのような食べ方を自然に身につけたものだそうですが、今ではサケの刺身もルイベといって作っています。そのようなきちんとした処理がされていれば恐らく大丈夫だったろうと思うんですが、それが十分できていなくて、旅館の料理で出してしまったものですから、資料にあるように400 人を超える人が食べてしまいました。
澤田

大きな旅館ですね。

関崎

そうです。期間として冬の間3か月くらいにわたって出したんですよ。だから、大勢の方が繰り返し食べて、結果としてその172人がかかった。全員がかかるわけではないところが怖いんです。みんなかかるのなら、誰も食べなくなるんですけれども、当たる人と当たらない人がいる。食べた肉片の中にこの虫がいたからかかったけれど、そのすぐ隣のスライスにはいなかったから大丈夫ということが起きるんですね。それで、「危ないですよ」と言っても、おいしい、おいしいと食べに来てしまうんです。

参加者

これはこの肉を食べたい人が来ているわけじゃなくて、たまたま泊まった方が料理で出てきたから食べたんでしょうか。

関崎

恐らくこの旅館が、この時期クマありますとか、看板として出していたんじゃないでしょうか。それをお客さんが見て、ああ、今この時期なんだ、おいしいんだねと言って注文したのか、そもそもコース料理の中に入っていたのかもしれない。

参加者

ツキノワグマは北海道でしょう。

関崎

ツキノワグマは本州です。北海道はヒグマです。ヒグマでも同じ事件が少し前に起きているんですけれども、その場合はハンターの方が撃って、生で食べて起きたことなので、余り人数は多くないんですよね。それから東北地方でツキノワグマでもありましたが、それもご家族で食べたというケースでした。それが、この東北の旅館のケースはお店の料理で出したものですから、とてつもなく大勢の方がかかったというので、皆さんの記憶に焼きつくような事件になったんです。

    • つい最近、調べて驚いたのですが、去年茨城県でも発生したらしいですね。これもクマ肉のローストです。ローストなんですが、たぶん十分中心まで焼けてないものを出したんだろうと思います。31人の方が食べて、そのうち21人が発症しています。残り10人の方がおいしい思いだけをして、21 人の方が苦しむという結果になっています。
    • このトリヒナは筋肉の中に入っています。どんなに表面をきれいに衛生的に取り扱って焼いても、筋肉の中に入っていますから、中に火がちゃんと通ってないと駄目です。
参加者

ミディアムなら大丈夫なんですね。

関崎

駄目です。

参加者

ウェルダンは。

関崎

ウェルダンでも保証できません。それは、E型肝炎というのがあるからです。肝炎のウイルスなんですが、肝炎ですから肝臓か血液の中に入っています。ですから、肝臓はもちろん駄目。肉だとしても、血液がめぐっていますから、外側をきれいにして衛生的に扱っていますよといっても、内部のほうに入っているとアウトです。

    • こうしたケースでは何を食べて感染しているのか。冷凍の生のシカ肉。野生のイノシシの肝臓(生)。例えばイノシシのバーベキュー。これもたぶんきっちり焼けてなかったものを食べたんでしょう。野生イノシシの肉でE 型肝炎。これも結構な確率で当たっていますよね。長崎県のバーベキューの場合は12人の方が食べて、5人と書いてあるんですけれども、5人のうち2人はかなりひどくて入院するような症状。さらに3人の方が病院で検査を受けたら、あなたは肝炎を発症していますよと言われました。残り6人の方は何の症状もない。おいしい思いだけをして。ただ、血液検査をしたら、血清の中に抗体があって感染していたというのが分かったんです。感染しなかったのはたった1人だけという状態です。これもウイルスですから、中心が生の肉だったらアウトとなります。
    • サルモネラ、皆さんよくご存じだと思います。食中毒の原因となるサルモネラ。それから、EHEC(EnterohemorrhagicEscherichia coli)と略してありますが、O157 をはじめとする腸管出血性大腸菌。食べたのは、シカの生肉、シカの肉の刺身、シカ肉の琉球。琉球はほとんど生の状態で、醤油とかゴマ油とかを混ぜたものに漬けた、ヅケみたいな感じの食べ方ですね。
    • サルモネラやO157はもともと腸管の中、うんちの中にいます。ですから、肉を解体処理する時にうんちが絶対くっつかないように注意を払って、衛生管理してくれればこれらの病原体に関しては大丈夫です。でも、さっきのトリヒナとかE型肝炎は駄目だということになります。
参加者

ノロウイルスはジビエにはないんですか。

関崎

ありません。ノロウイルスはどこで増えるか。分かっていることは、人間の腸の中の細胞でしか増えないということです。よくかかるのはカキですよね。カキを生で食べてかかる。カキの中では増えません。カキは水の中に入っているノロウイルスをため込んでいるだけなんです。それを人間が生で食べてノロウイルスに感染しているんです。あとはヒトからヒトへの感染ですね。

参加者

ジビエにはノロウイルスはいないんですね。

関崎

ないです。ノロに関しては大丈夫です。

食肉の処理・検査の体制について

    ふだん我々が家畜と思っているウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、そして家禽、ニワトリ、アヒル、七面鳥、ウズラ、これに最近はダチョウ、ホロホロ鳥、キジが入っているんですけれども、これらはまず人間が、肉にして食べようと思って飼っています。ですから、管理された環境、牛舎、豚舎の中を結構きれいにお掃除します。それから動物を入れて飼います。病気になってしまったら大損害ですから、きれいにします。場合によってはブタなんかは、子ブタの頃は抗生物質も結構与えます。そうしないとすぐ病気になっちゃいますから。(スライド11)

    • しかも人間が与えた餌しか食べられません。人間がこれを食べなさいと言って与えます。それも計画的に、今はこれをこのくらい食べて、「おいしくなあれ」と言って食べさせるわけですよね。
      こうするとサシが入るからとか。
    • きれいに管理され、飼われた動物も、こちらの四つ足の動物は「と畜場」というところで解体されますが、その際にと畜検査員は、都道府県、政令指定都市の職員の方なんですけど、100%獣医師です。と畜検査員は獣医師でなければならない。その人たちが、動物がまだ生きている状態から異常がないかというのをよく見て、解体された中の肉、内臓、すべてに目を通して、少しでも異常があったらそれは廃棄処分にするというように、きっちり検査しています。
    • 鳥に関しても食鳥処理場という場所があって、食鳥検査員というのは全員が獣医師ではないんですが、食鳥処理場1か所には必ず獣医師がいなければいけない。訓練を受けた検査員の方が見るんですが、検査員の方がちょっと自信がないなという時にはちゃんと獣医師の方にそれを見せて、最終判断を仰ぐという形にして、ちょっとでも異常があったら廃棄です。私も獣医師なんですが、見学させてもらった時、結構な割合で、これ駄目、はい駄目ってやってるんですね。駄目ってされちゃったやつをパッと見るとよく分からないから、「これ、どこが駄目なんですか」と聞くと、そこだろと言われて、見ると、こんなに小さなポツンという点が肝臓にある。それでもう廃棄です。
PowerPointで説明する関崎さんとファシリテーターの澤田さんの写真

野生肉利用拡大の背景を解説

澤田

その点というのは、つまり虫であったりとかですか。

関崎

何らかの感染があったから、結果としてそういうのができているんですね。

澤田

普通の状態では、そういった白い点みたいなものは出てこないんですね。

関崎

全くない。まっさらきれいなものだけが市場に出回っています。そういうきっちりした検査をしなければいけない。こういう四つ足や家禽を処理する場所は、四つ足はと畜場、家禽は食鳥処理場です。定められた場所でやらなければいけないと、決まってます。そのようにきちんと検査されて衛生的に管理されたものだけが、スーパーの店頭とかに出てきて、我々が食べることができるわけです。

ジビエの食肉処理・検査体制はこれから?

    これに対してジビエはどうか。まず環境。どこに住んでいるのかが分かりません。人間に見
    つかるのが嫌いな動物ですから、山の中、草むらの中に隠れていて、泥をほじくったりして暮
    らしているわけです。だから何を食べているか分からない。

    • シカは草食動物だといいますが、シカを捕まえてお腹を開いて胃袋に何が入っているかを見ると、草以外のものも時々入っているんですね。サワガニが入っていたりもします。何を食べているか分からない。困ったら何でも食べてしまいます。
    • その上、こうした肉は特用家畜といって、と畜場や食鳥処理場で処理しなければいけないという法律はないんです。場合によってはハンターがドーンと撃って、その場で山の中でさばいて肉だけにして担いで持ってくるということもあり得るんです。今までは衛生管理は全くされていませんでした。これではいけない、ということで、きちんとしましょうという動きが出ています。もともと危ないんだから、それに応じた調理法をして、安全な形で食べなければいけないということを、まず分かっていただきたい。
参加者

食品衛生法が厳しくなって、ジビエに関する害獣の場合でも、所定の食品衛生法に則った施設で種類も分けて処理をしなければ流通ができないというふうになってきたと思うんですけれども、リスクが高いものは、自己消費をするものについて法律がないのでリスクが高いということですか。実際に店頭で売っているものに関しては、リスクは小さいと考えていいんでしょうか。

関崎

個別に事情が違うと思いますので、一概には言えないと思います。おっしゃったように、食品衛生法というのがありますので、解体して肉にしたその先はちゃんと食品衛生法に則って流通させなければいけないということになります。でも、現状では解体するまでの段階に縛りがないですね。

澤田

獣医師による目視や科学的検査に関しては全国統一ルールで、これは条例でなく国のルールですね。

関崎

と畜場法というものと、長い名前ですけど略して食鳥処理法という法律があります。それに則って北海道から沖縄まで同じ基準で行っています。

澤田

本当にきちんと実施されているんでしょうか。地方はやはり獣医師も不足気味なのでしょうか。

関崎

と畜検査員は必ずいなければ、解体して食肉として流通できませんので、そこには絶対獣医師が張りついていなければなりません。それで、むしろほかの部署がちょっと手薄になっちゃっているんです。

参加者

ではこのルールを適用している動物については、間違いなく安全だということが言えるわけですね。

関崎

一応衛生的ということですね。それからちょっと気になるのは、目視ですね。目で見てオーケイならオーケイなんです。しかし、先ほどのトリヒナやE型肝炎などがもしあっても、目で見ただけでは分かりません。後でお話ししますが、動物はほとんど病気にならないので、ウイルスを持っていても見ただけでは分からない。

参加者

症状が余り出ないということですか。

関崎

ほとんど出ないです。ですから、ジビエだけじゃなくて、最初に言った家畜でも生は危ないのが少しありますよ、ということです。

参加者

海外から今いっぱい肉が入ってきているんですが、海外の基準というのは輸入する際には日本の基準に合わせたものが入ってきているんですか。

関崎

どんなものでもそうですが、輸入する場合には日本国内の法律と基があって、それを満たしていない場合には流通させません。日本では使わない農薬を使った外国のものが入ってくるんじゃないかなど心配される向きもあるかと思いますが、日本国内で流通させる場合には日本の法律を適用しますので、海外のものも日本とは違うやり方で出してきたものはアウトになります。

参加者

では、海外で食べる分には、基準は違うということですか。

関崎

:違います。例えばレバ刺しですが、日本ではレバ刺は食べられないけど、韓国に行ったらいくらでも食べられますから、韓国でレバ刺しを食べ感染している人はいっぱいいます。

参加者

検査では、目視で引っかかったものが科学的検査に行くんですか。

関崎

そうです。目視で何らかの異常があった場合にきちっとした精密検査に回します。その検査では遺伝子検査などいろいろなことをします。

    • 例えば先ほどの例のように1 つの臓器にポツンと点が1 つあって、ここで駄目だよという場合、そこで終わらないんですね。臓器と肉のほうにちゃんとナンバーがついていて、臓器で何かあると、肉のほうも外されてとストップになります。臓器のほうも全部検査して、肝臓が変だったら肝臓だけじゃなくて、心臓とか脾臓とか肺とか、ほかの臓器も全部検査をします。2つの臓器から同じ病原体が見つかったら、肉も全部廃棄するくらい、きっちりとやります。目視で大丈夫なのかという心配はあるんですけれども、目視で出てくるようなやつは間違いなくきちんと検査されています。でも、さっき言ったようにE 型肝炎のように動物に何も症状が出ない場合にはどうしようもないわけです。

見えない感染を防ぐ

    平成23年に起きた富山の焼肉チェーンのユッケの事件が大問題になって、その年のうちにユッケ、生の牛肉について相当厳しい規格基準ができ、翌年には牛のレバ刺しも完全禁止になりました。レバ刺しが禁止になる直前は世間では大騒ぎで、今まで食べたことのない人までが食べて急に食中毒が出たりしましたが、それも平成24年の4月からは食べられなくなりました。

    • ウシのレバーが食べてはいけないことになって、どうなったかというと、何と食べちゃいけないブタのレバーを刺身で出すところが増えました。特に東京近辺ではそういう店が多く出てきました。それも、とうとう一昨年6月、ブタもレバーだけでなく肉も全部、生は駄目だということになりました。ブタは特にいろいろな病原体がいる可能性があります。先ほどお話ししたように食べても全員が食中毒になるわけではない。ブタもそうなんです。めったに当たらないんですけど、当たったら「当たっちゃった」では済まされないことがいっぱいありますので、禁止となりました。
    • 厚生労働省が出している「豚肉や豚レバーを生で食べないで!」というチラシの続きに、調理する時の注意点があるんですが、そこにはイノシシやシカなどの野生鳥獣の肉、内臓も生で食べないでくださいと、すでに書かれています。なぜなら、生で食べた人がE 型肝炎ウイルスに感染して死亡した事例があるからと書いてあります(スライド12、13)。改めてE型肝炎のことがここで問いただされているので、少し詳しくお話しします。
    • E型肝炎については、「イノシカトン(猪鹿豚)」と覚えておけばよいというふうに、僕は習いました。最初に話を聞いた時には、どうもE型肝炎は野生のイノシシや野生のシカが持っていて、それが飼っているブタにもいつの間にかうつっちゃったみたいだ、というふうに説明を受けました。(スライド14)
    • E型肝炎にかかったらどうなるか。先ほども紹介しましたが、みんながみんな発症しているわけではない。多くの方が、かかっても症状も出さず何事もなく経過して治っています。それならばいいのですが、中には肝炎で、肝臓がやられて、いろいろな症状が出る方もいて、場合によっては入院が必要なほどの劇症型の肝炎を発症する可能性があります。劇症型を発症すると命が危ないです。亡くなった方は、劇症肝炎になったんですね。通常、死亡率は1〜3%ということですが、これは世界的な数字です。日本はここまで行ってないと思います。ですが、注意していただきたいのは妊婦さんです。妊婦さんが感染すると非常に死亡率が高くなります。劇症化を起こしやすいです。
    • その理由は、臓器移植を想像してみてください。臓器移植というのはほかの人の臓器をこちらの体に移すわけですから、他人のものが入ってくるわけです。普通は他人のものが入ってくると拒絶反応というのが起きて、臓器移植というのは要するに拒絶反応を抑える作業の戦いだと、よく聞くと思います。拒絶反応を抑えていれば、この臓器がそこに定着して、動いていてくれるうちに自分の細胞がだんだん増えてきて、いつの間にか自分の中にちゃんと受け入れられる、そうなることを狙っているわけです。
    • 一方、妊婦さんも実は自分じゃないものを自分の中に入れているんです。お腹の中に入っている赤ちゃんは、半分は自分なんですけど、生物学的には半分は他人なんですよね。その他人のものをお腹に入れてちゃんと安全に育て上げるために、免疫機能がいつもとちょっと違った状態なんです。異物が入っても受け入れていいよという状態になってます。そうしないと赤ちゃんが出ていってしまいます。だから、そうならないよう特殊な体調にいるわけです。
    • 特に妊娠初期の頃は胎盤がまだきちんとでき上がっていなので、お母さんの体が赤ちゃんを異物と考えやすい状況にあります。胎盤がきちんとできていて、血液が直接の交流をしなくなるような状態になって、安定期に入ればいいんですけど、本当に妊娠の途中までは危ない状態にあります。そうなると、免疫が普段より落ちているという状態になりますから、病原体は普段よりもずっと増えやすい。それで妊婦さんがいろいろな状態になった時に重症化しやすいということなんです。ですから血の滴るお肉、レア、ミディアムレアとかは、特に妊婦さんはその間だけは辛抱してください。それはぜひお願いしたい。
    • 先ほどイノシカトンの、イノシカが一番にあって悪者のように言われていたんですが、実際E型肝炎が出た患者さんが何を食べて、どれくらい出ているかというのを食品安全委員会がデータとして出していましたのでお借りしてきました(スライド15)。色分けしてありますが、西日本はオレンジ、イノシシです。その上の黄色はイノシシとシカで近畿に多いですね。この辺りはほかに、クマもありますね。東日本、北日本に行くとブルーの部分が増えています。ブルーは何か。ブタです。イノシシでもシカでもなく、ブタなんですね。恐らく十分加熱していない豚肉を食べて、結果としてE 型肝炎になってしまった患者さんが累積するとこんなに出てきます。
参加者

イノシカトンがE型肝炎ウイルスを持っている割合は、どの程度なのでしょうか。

関崎

イノシシ、シカよりも普通の家畜のブタのほうが割合が大きい。これはE型肝炎に対する抗体を見ればわかります。抗体というのは病原体が体に入ってくると、それを攻撃するために免疫ができますが、免疫の一番の立役者といいますか、血液の中にできてくるタンパク質です。特別にE型肝炎だけを見つけて、そこにくっつくタンパク質です。相手をちゃんと見て、違う菌なら違う菌の抗体ができます。サルモネラはサルモネラの抗体、E型肝炎ならE型肝炎の抗体、インフルエンザならインフルエンザの抗体ができるんですが、感染した体内にはその抗体ができますので、抗体があるかどうかを見ると、感染したかどうかが分かるんです。

    • 初期の頃はそういう技術がなかったので、ウイルスを直接検出するという方法でした。それはウイルスがRNA ウイルスといって核酸を持っているんですけど、RNAを検出するという方法は比較的簡単にできます。それで調べていた時には、飼っているブタはほとんどウイルスがいない状態だったので、イノシシやシカなんだろうと言われていました。
    • その後、抗体を見つけるという技術ができ上がって、改めて調べてみると、1か月から6カ月齢で、もう1か月齢からちょっと出てます(スライド16)。それが抗体のどのくらいの量があるか。陽性率はどんどん上がっていって、4か月齢ではもう100%です。飼っているブタはすべてE型肝炎にかかっているんですね。
    • でも、ブタは病気にならないです。ほとんど何の症状も出ません。6か月齢、トンカツになっていい頃になっても何も出なくて、出荷される頃には治ってしまっています。だから、ウイルスは見つからない。だけど抗体はあって、本当にかかったよという証拠が残されちゃう。ブタのお母さんもちゃんとしっかりかかっているんだなと思いました。
参加者

ヒトがE型肝炎に感染する時は、加熱が足りてないお肉を食べた時ということだけど、ブタは何か食物を食べて感染するのですか。

関崎

たぶんお母さんがかかっているので、お母さんから子供にうつるんだと思います。

参加者

常にどれかのブタがかかっているから、互いに感染し合っているということですか。

関崎

そうですね。お母さんも100%かかっているわけです。お母さんも育つ間にかかって、そのお母さんが完全にウイルスなしにはなってないので、それが入ってくるんだろうと思います。

カフェならではの近さが魅力

カフェならではの近さが魅力

  • 抗体の状態を見ると先ほどのグラフのような感じなので、子ブタ同士の間でもうつる可能性もありますね。まだ疫学的状況がよく分かってないので、具体的な方法は分からないですが、子ブタもきれいな状態で、1匹だけで飼っていれば、恐らくずっとかからないままで過ごせるんじゃないかなと思います。このウイルスがちゃんと分かるようになってから時間がたってないので、いろいろなことがまだ分かってないんですよ。この抗体の状況も本当につい最近、3〜4年前の成績です。

      • さっきのグラフのあった抗体の検査とウイルスの検査の比較です(スライド17)。抗体保有率はさっきの棒グラフと同じで、90 %になってますけど、大体100%まで行くだろうという感じになります。一方、ウイルスというのは3か月、4か月の頃にはすごく検出できるんですが、そこから先、もうトンカツスタンバイの出荷時期近くになるとウイルスは見つからないんです。今は、大体180日齢でお肉になっちゃうんですが、養豚の技術が進歩して、そんなに長いこと育てなくても大きく育って肉もいっぱいあってという状態にどんどんなりつつあります。養豚場によっては180日もかけないでもうちょっと早く、160日くらいでもううちのブタは十分トンカツだよといって出しているところもだんだん増えてきていますね。そうなっちゃうと、治らないうちに肉になって市場に出ちゃう。
      • 実際、日本のスーパーで売られているブタのレバーを国立感染症研究所の先生が調べたら、都内で売られているブタの肝臓の30%くらいだったかな、ウイルスが検出されたと言ってました。生で食べる方はいないと思いますし、加熱すれば全然問題ないですけれども。割合からいったらイノシシよりもブタのほうが要注意ということになります。

    三大食中毒菌にも注意を

      それ以外でよく見つかるのが、腸管出血性大腸菌、O157、カンピロバクター、サルモネラ。三大食中毒菌です(スライド20)。これらはデータでもよく数字が出てきます。腸管出血性大腸菌に関しては、普通に飼っているウシの約20%がうんちの中に持っています。これは動物に何も病気を起こさないので、持っていても分かりません。症状も、臓器の病変もなく、全く分からない。と蓄場でも検出できません。

      • と蓄場では、肉にうんちがくっつかないように、内臓を出した後は、内臓を処理するラインと肉を処理するラインは完全に分けています。部屋も分かれています。肉にした状態で表面をジェット水流の消毒液できれいに洗い、クリーンゾーンというところに運ばれます。内臓はダーティゾーンに運ばれて、そこから先は2度と肉と出会うことはありません。ただ、お店に届いてから一緒になることはあり得ますが。そこまではずっと会わないという処理のされ方です。ですから、と畜場での処理がきちんとされていれば、肉に汚染はほとんどないはずです。
      • 腸管出血性大腸菌は、ブタでも検出されています。ウマの場合には極めて低いです。同じ草食動物でもウシとウマとでは違っていて、ウシは胃袋で消化します。第1胃という大きな胃袋があって、そこには微生物がいっぱいいます。そこで植物を消化して、揮発性の脂肪酸にして吸収し、それを元に体を作っていく。ウマはその草を盲腸、大腸。盲腸で分解します。だから、もともと大腸菌は大腸にいますが、大腸内の環境がウシとウマでは全く違うんです。ウマからはまずほとんど見つかりません。カンピロバクターも、ウマからはほとんど見つかりません。サルモネラは結構見つかりますが、ウマから見つかるサルモネラは人間に害を及ぼすタイプでないケースが多く、ウマからのサルモネラはほとんど問題になっていません。
      • 一方、ヒツジ、ヤギは腸管出血性大腸菌を非常に高い率で持ってます。ヒツジ、ヤギを触ることはめったないかもしれませんが、イベントでふれあい動物園などをするときには、ウシは大きくて大変なので、ヤギとかヒツジがいることがありますね。かわいいかわいいと言って触っていると、そのかわいい動物たちの口の中に腸管出血性大腸菌がいる可能性があります。
    参加者

    同じ羊蹄類のカモシカも同じことが言えますか。

    関崎

    同じだと思います。詳細な数字は分からないんですが、シカで3%という数字が出たんです。そんなにたくさん調べてないのですが、同じようにいる可能性はあります。ちなみに上野動物園ではこういうのをちゃんと認識していて、あそこのふれあい動物園のヒツジ、ヤギたちはきちんと検査されています。でも、動物が何を持っているかは分からないですから、万全だと思っても動物を触った手を洗わないままでおにぎりを食べたりしちゃ駄目ですよ、ちゃんときれいに手を洗ってからにしてくださいと、ちゃんと貼紙がされていて、そういうのも教育の1つになっています。

    澤田

    上野動物園くらい大きくなると、きちんとしているかもしれないんですけど、最近は近所の小さな公園とかでも開かれていますね。

    関崎

    日本国内でも何件か、きちんとした動物園のふれあい動物園で感染しちゃった事例があります。アメリカでもあるんですけど、日本でもあります。

    澤田

    親は気をつけないといけないですね。

    関崎

    これに限らず、我々に何か害を与えるけれども動物には何も病気を起こさないという病原体はいっぱいあります。いつどこにそれがくっつくか分からないので、動物たちをかわいがった後は、必ずきれいに手を洗ってからご飯にしましょうということです。

    参加者

    普通に石けんで手を洗うということですか。

    関崎

    はい。石けんでよく洗えば、1000分の1くらいに菌の数が減ります。要するに病原体が強いか、人間が強いかのどっちかですから、あいつらの数をぐんと減らせるなら、ちょっとくらい増えても病気にはならないと言われています。この菌の場合100個くらいでもなっちゃうけど、100のやつを1000分の1にすれば0.1になっちゃいますからね。もうほとんどないに等しくなっちゃいます。

    参加者

    E型肝炎ウイルスなんですが、健常人キャリアというのはいるんでしょうか。

    関崎

    いると思いますが、今回時間がなくて、そこまで十分調べられなくて、分かりません。食中毒の統計というのは厚生労働省から出しているんですけど、E型肝炎になると食中毒でなくて感染症になる。そうすると、どこに出ているのかちょっと見つけられなくて。

    参加者

    E型肝炎ウイルス自体珍しいし、日本でも急増しているということですよね。ただ、わからない部分が多くて、健常人キャリアがいるということだと、たとえば調理師が健常人キャリアである可能性がありますよね。お肉とかは加熱でパスできるけれども、まな板、包丁などからサラダなど生ものに付着してというような心配もしなきゃならないのかなと思って、質問させていただきました。

    関崎

    おっしゃるとおりです。E型肝炎に限らず、腸管出血性大腸菌についても全く同じです。これに関しては症状の出ていない保菌者がどれくらいいるかというデータはあります。

    参加者

    それに関連してですが、血液型がよく例えばO157とノロウイルスとはちょっと違って、例えば血液型、私はO型ですけどO型はやっぱりノロとO157と……。

    関崎

    よく勉強されていますね。恐らくノロウイルスでそういう事実があって、報告がされていますけれども、O157に関してはそういうことはないです。ノロウイルスに関しては、おっしゃるとおり、そういう科学的な裏付けがあります。最初の頃はやったノロウイルスは、B型の人はかからなかったんです。僕、B型なんですけど。本当です。ウイルスは我々の細胞の表面にある物質に、これのリセプターとしてくっつくんですね。このリセプターがABOを決める抗原なんです。だから、最初の頃はやったウイルスはB型の人には感染しなかったんです。ところがウイルスもだんだん進歩してきて、今はやっているノロウイルスはどの血液型でもかかります。

    参加者

    結論はそういうことですね。ですから、いわゆる血液型より最終的にはその人の持っている免疫機能が最後の砦と考えてよろしいでしょうか。

    関崎

    そうですね。総じて体力と病原体の力との力関係で、どっちが強いかで発症するか、しないかということになります。

    トリヒナ、トキソプラズマ、どんな症状? 予防するには?

      いろいろな病原がある中で、肉や血液の中に入ってしまっているというのがE型肝炎です。トキソプラズマ、トリヒナ、住肉胞子虫などの寄生もありますし、ウイルスは肉の中にも入ってしまっていますので、どんなに衛生的に処理してきれいな肉にしても内部に入っている可能性がありますから、内部まで加熱しないと駄目です。

      • もともと腸管内にいる細菌、例えば豚レンサ球菌、これは腸管か唾液の中にいます。これらは肉の処理をきちんとして、表面をきれいに焼けば大丈夫です。ただし、どれも肝臓は駄目です。肝臓は腸管と直結してますので、豚レンサ球菌などはかなりの確率で肝臓から検出されます。また、O157も肝臓から検出されたことがあったため、レバ刺しが禁止になったんですよね。カンピロバクターは生きているうちから肝臓の中にかなりいます。
      • なぜそれがわからずに混入するかというと、病気を起こさないからです。動物に対して病気を起こしてくれれば、動物の体が認識して、白血球が攻撃したりするんですけれども、病気を起こさず、平和的に共存しているので、動物の中に入っていてもわからない。そういうのは見つけにくいので要注意です。これら肉の中にいるウイルスと寄生虫などが大変要注意で、内臓、中でも特にレバーにはいると思ってください。
      • ご質問のあった、トリヒナにかかったらどんなことが起きるかということについて(スライド21)。赤いところが虫です。膿疱の中にトグロを巻いて入っているのが虫なんです。これを食べると、消化管の中で膿疱が破れて中の虫が出てきます。そして大人になり、我々のお腹の中でゴロゴロと幼虫を産むんです。怖いですね。その生まれた幼虫は、消化管の粘膜にグリグリと入り込もうとします。患者さんは苦しみ出します。粘膜に入り込んだ後は、血流に乗って体中至るところに回っていきます。
      • トリヒナが好きなのは筋肉です。筋肉というと、骨格筋といって足や腕にあるような筋肉だけじゃなくて、心臓も筋肉ですから、心臓にも行くことがあります。心臓に行くと、かなり危険で、命に影響するようなことが起きます。そこまででない場合でも、体のいろいろなところがむくんできたり、筋肉に入りますから、もちろん筋肉の痛みがあり、皮膚にも発疹が出てくるなど、いろいろなことが起きます。その幼虫がさらに行った先の肉の中で同じように膜を作って、ひそむんです。すると、その場所でまた人間の体との戦いが始まり、いろいろな症状が出てきます。
      • トリヒナの感染による死亡率というのは0.2%で、亡くなる方はたくさんはいないんですけど。19世紀終わり頃に、30%くらい死んじゃったという事件があって、大騒ぎになったんです。これはドイツでのことです。
      • もう1つの寄生虫。トキソプラズマというのをお聞きになったことがある方いらっしゃるかもしれません。これも原生の原虫で、感染すると、特に妊婦さんが感染すると流産、死産など非常に悪い症状を起こすことがあります(スライド22)。問題は、お腹の中の赤ちゃんに寄生虫がうつっていった場合、脳障害を起こすことです。聴力障害を起こして、障害をもったお子さんで生まれるケースが出ています。
      • 妊婦の方以外の人がかかると、ほとんどの場合、無症状で何も起きません。このトキソプラズマは、ありとあらゆる動物に感染します。ウシ、ブタ、そしてニワトリにもです。トリの刺身、ウシの刺身ありとあらゆるものにです。もともとネコが本来の宿主で、それがブタにうつって、ブタからヒトにというコースなんだとずっと考えられてきました。だから、ブタのと蓄場では、トキソプラズマがブタにいないかという非常に厳重な検査をずっと続けています。1970年代の終わり頃はかなりきっちりした検査をしていて、その検査のために横隔膜の肉、焼肉屋さんではサガリと呼んでいる、あの肉を全部検査に使ったんです。だから、昔はあの肉は流通していませんでした。でも、今はほとんど日本のブタからは検出されなくなったので、横隔膜を1頭1頭全部検査する必要はなく、何頭に1頭か調べれば大体分かるからそのやり方になりました。ということで、全部を検査に回さないので、お肉屋さんに横隔膜の肉が流通するようになって、食べることができます。今現在は、検査している方に聞いている話だと、と蓄場で検査している限り、トキソプラズマはまずほとんど見つからないという状況です。
      • また、以前はネコが悪いといって、お嫁さんが妊娠するとトキソプラズマにかかるといけないと言って、飼っているネコを外に出したりしました。すると、逆に危ないですね。感染して間もないネコ、これは子ネコでも成ネコでもどっちでも同じです。感染して間もないネコだけがうんちの中にトキソプラズマがいますを。ただ、出てきたホヤホヤのうんちにいるトキソプラズマは、まだ感染力がないんです。24時間くらいほっておくと感染力が出てきますので、マスクをして時間が経たないうちにさっさとビニールの袋に入れて捨てちゃえば大丈夫です。だから、ネコを飼っていても大丈夫なんです。
      • また、妊婦さんも血液検査をして、妊娠する前に知らないうちにかかっちゃってて抗体ができていれば大丈夫です。妊娠中に初めてかかるのが最も心配です。そういう点を注意していただければ大丈夫だということです。もしかかったことがない場合は、妊娠中は、その間だけ肉の生食はやめてください。これはトキソプラズマでも、旋毛虫でも、ほかのものでも同じことです。妊娠中だけは生はやめてください。

    腸管出血性大腸菌、野兎病

      腸管出血性大腸菌では、O157が一番代表で有名ですけど、ほかにもいろいろなタイプが知られています。(スライド23)

      • 富山のユッケ事件では、O111が主要な原因でした。患者さんによっては、111と157と両方取れた方もいましたが、ほとんどは111だった。157だったら診断するのがもっと早かったろうと思うんですが、そうじゃなかったために診断がなかなかつかず、そうしているうちに亡くなった方が出ました。
      • この菌は下痢というだけではなくて、病気が治りだした頃に溶血性尿毒症症候群(Hemolytic Uremic Syndrome、HUS)を起こしたり、感染初期の頃に脳症、脳の血管細胞、内皮細胞がダメージを受けて、脳がやられてしまう。この2つになった時に命に関わる結果になってきます。
      • この菌が出すのは志賀毒素という毒素で、この毒素が内皮細胞に非常に障害を与えます。ですから、毛細血管が一番いっぱい集まっている脳か、腎臓の糸球体(ネフロン)をやられて、脳症になったり、尿毒症になったりして、命に関わることがあるんですね。
      • 何度も言っているように、こうした菌はうんちの中にいますから、うんちがくっつきさえしなければいいんですけれども、近頃ではレバーやホルモンなどだけじゃなくていろいろなものが、どこかで汚染される可能性がありますし、ヒトからヒトへの感染もあります。家庭内での感染もあります。ヒトから食材へ、先ほどお話が出ていたように、調理に関わっている人が症状を出さない保菌者で、食材を汚してしまってそれから事件が起きるということが、起きる可能性があります。ただ、調理する人が保菌者だったとしても、手をしっかり洗って、手袋をして、マスクをして、帽子をかぶって完全防備して作業すれば絶対起きるはずがないんです。そういうところにちょっと甘さがあると、食材にうつってしまっていろいろな事件になってしまうということです。
      • 今回のポテトサラダに関しては、果たしてそれだけで説明できるのか分からないんですけれども、同じ遺伝子タイプの菌が集団事例じゃない、単発事例で関西のほうからも取れているそうです。群馬とか埼玉で発生したのと同じ菌が関西でも感染を起こしている。同じ保菌者があっちにもこっちにもいるわけがないので、僕が今出している説は、答えとして考えられるのはテロリズムじゃないか。誰かが何か入れているんじゃないかと。ここだけの話なんですけれども。

    カンピロバクター、そしてサルモネラ

      カンピロバクターは、名前を全くご存じない方も多いんですけれども、カンピロバクターによる食中毒はもっぱら鶏肉で起きています。どうしても今のやり方では食鳥処理場で肉にする段階で、この菌がうんちのほうから肉にくっついちゃうんですね。多い場合には、売っている肉の90%以上からカンピロバクターが検出されると言われています。それからスーパーで買ってきたパック入りの肉、これもいつついているか分からないです。目で見ただけでは分からないですから、いつでもついていると思って扱ってください。それが大事だと思います。(スライド24)

      • 特にこの菌は低温でも非常に長生きします。冷蔵庫に入れておくと結構長い間生きています。新鮮な肉ほど菌も新鮮だという話がありましたが、この菌の場合、新鮮じゃなくても生きているんです。新鮮な時はもっと生きていますけど。患者さんは血便が出たりもして、その場合、後遺症で、ギランバレー症候群といって神経を冒すような自己免疫疾患を誘発する可能性もあります。
      • サルモネラ菌も腸の中にもともといる菌で、昔は卵製品がサルモネラの食中毒の原因の上位を占めていました。その後、卵業界、養鶏場から含めて流通過程で低温で運ぶようになり、スーパーでもその日に売り切れるだけしか店頭に出さないなどいろいろ努力されて、卵が原因のサルモネラによる食中毒の数は激減しています。(スライド25)
      • 現在、サルモネラの食中毒の一番の原因は鶏肉だそうです。卵の汚染がほとんどない状態になってきて、今売っている卵では3万分の1個くらい、宝くじに当たるよりも低い確率でしか、卵からサルモネラは見つかりません。しかも、見つかるとしても、卵の中にほんのちょっとしかいないんです。O157と違って、サルモネラの場合、菌の数が1万とか10万くらいを一度に食べないと病気になりません。人間と菌の力関係としてそんなに強くないので、卵の中にごくわずかにいるのだったら食べても大丈夫です。ですから、まず卵の感染というのはほとんど見られなくなり、鶏肉が原因になっているものが多いと言われています。
      • それからもう1つ、これ野兎病といいます(スライド26)。ノウサギ病と書きますけれども、野兎病(やとびょう)です。余り聞き慣れないかもしれませんが、日本のウサギの中でも結構いるのが分かっています。これもジビエとしてウサギを食べる時に、ウサギの肉を衛生的に扱っていればいいですけれども、解体の途中でウサギがどういう状態かにもよりますけれども、発症している真っ最中だったら血液中にも菌がいますから、肉の中にも菌が入ってしまって、それをしっかり加熱せずに食べると感染します。チフスのような症状ですね。いろいろな症状が出てきますけれども、最もよく出てくるのは、例えば資料(スライド26)の写真のように、手の近くの傷から感染して、一番近くの脇の下のリンパ節、グリグリが腫れるなどの症状が起きます。
      • これは結構感染力が強い菌なので、バイオテロリズムにも使われる可能性がある菌として挙げられています。放っておくと人は30%くらいの割合で死にます。今は抗菌薬を投与して強制的に治すようにしますから、きちんと治療すれば大丈夫だけれども、ほっておくと大変なことになりかねない病気です。
      • それから豚レンサ球菌、これは僕が研究している対象なんですけれども、もともとはブタの病気です(スライド27)。髄膜炎なんかを起こします。心内膜炎といって、と蓄場に見学に行って健康なブタを解体して、資料の写真のようなものを見ると、豚のハツが食べられなくなっちゃうと言われるかもしれないですけど、心臓の弁のところにイボイボができているんですね。これが心内膜炎です。こういうものが見つかったら、これは全部廃棄になります。同時に、ほかの臓器も検査に回します。ほかの臓器からも同じ菌が取れたら、肉も含めて全廃棄です。

    法律ではどのように規定しているの?

      さて、法律では規定はどうなっているかというのをスライドで並べてみました(スライド30)。要するに、日本では解体するまでの間に、野生動物に関しては何の規制もないんです。今、ここだけガイドラインでやろうとしています。一番左が、まずハンターの方が自分で取って自分たちだけ、あるいはお隣のお友達だけ、狭い範囲で食べようという場合には、全く何の規制もありません。鳥肉でもそうですね。この辺は法律の適用外です。 次がハンターが取ってきたものを売ろうとした場合ですが、この法律は日本では今までないんですが、今この部分のガイドラインを早急に整備しようとして動いています(スライド31)。リストにある他の国は、ほとんどが法令で規制されています。規制というのは全く駄目ということではなくて、厳しい基準が設けられています。

      • 一番目につくのが、アメリカです。アメリカは「禁止」があります。どこで育って何を食べているか分からない野生動物は売ってはいけない。代わりに「狩猟者または事業者が、狩猟用飼育動物、を販売用に下ろす場合」とあります。何のこっちゃと思うんですけど、ハンターが撃つために動物の子どもを育てて、いい加減の大きさになったら野山に放してそれを撃っています。そういうふうに最初の段階きちんと管理されたところである程度まで育てて、そして野山に放してそれを取ったやつならばいい。きちんとした管理をしていれば食べてもいい、売ってもいいというふうになっております。驚きますが、そういう肉食文化ですね。
      • 日本では、先ほどのガイドラインで、厚生労働省が各自治体にガイドラインを早急に作りましょうという指令を出しています(スライド32)。そして具体的には食肉処理業の許可制で、いろいろなランクの対応策を次々と進めています。特に資料(スライド33)にある一般社団法人、これは最初はNPOの日本ジビエ振興協議会という組織だったのですが、2年前に一般社団法人に格上げして、日本ジビエ振興協会という会になっています。
      • とにかく解体するまでの衛生管理について、全く今までは何も規制がなかったものですから、それを国のほうからも早くガイドラインを作りなさいと言われてますし、作りなさいと言われても実際に役所がしろと言われても、やるのは役所じゃなくて実際にはその事業者がやるわけですから、そこで具体的にどういう施設でどういうふうにやったらいいだろうか。そういう処理をしたものについては、ちゃんとそうじゃないものと区別がつくように、あるいはつけて、そして販売しようというような動きが出ていまして、今一生懸命取り組んでいます。
      • 資料(スライド34)のように順番にいろいろなレベルの高い管理基準を設けていて、最終的にはHACCPという、今食品関係でも衛生管理がありまして、こういうものをきちんとした管理をしようというふうになっているんですが、ジビエに関しても同じようにしようというのです。しかも、これが2019年。分かりますよね。2020年のオリンピックまでにはきちんとした体制を敷いて、日本でもジビエを安心して食べられるようにしようという動きが出てきています。このとおりに進めば、あと少しで日本も海外できちんと規制を敷いているところと同程度に追いつこうという形になっています。
      • ただ、冒頭から何度も申し上げているように、きちんと衛生管理していれば、肉は汚れても表面だけ、そういう病原体もあれば、血液や中に入っちゃっているウイルスとか寄生虫の場合は、きちんと衛生管理されていても中に入っているわけです。それからレバーをはじめとした内臓は、きちんとされていても、やっぱり駄目です。だから、食べる時には相当な覚悟をもって食べていただければいけないだろうと思いますし、もしどんな覚悟があっても絶対これだけは。つまり、妊娠中の女性ですね。絶対にやめてください。食べると元気が出るからと、レバーを食べさせたいという場合には、きちんと加熱して火の通ったものを差し上げるようにしてください。ここだけは最後にぜひ皆さん覚えて帰っていただければと思います。
    澤田

    最初はジビエの写真が、おいしそうだな、食欲の秋だなと思ってわくわくしてたんですけれども、ちょっと気を引き締めてお料理して、いずれ子供が大きくなって妊婦さんになった時にも教えないといけないなと思いました。

    関崎

    もともと日本にはそういう習慣があったはずなんですね。小さなお子さんとか妊娠中の、あるいは妊娠する可能性がある女性には生のものを余り食べさせちゃいけないと。そういう話が、いつの間にか途絶えて伝わらなくなってしまっていましたが、もともとはそうだったんです。小さいお子さんには魚のお刺身でさえも駄目だと言っていたのが、どんどん衛生管理がよくなってきれいになったから、大丈夫だろうと食べてしまっている。データでもお示ししたように、必ず当たるわけじゃないわけです。だか欹欹ら「当たる」と言うのかもしれないんですけど、必ずなるわけではないところに気の弛みが出てきて、みんなで一緒に食べちゃうようになっていますが、今のお話のような説明を見ていただければやはり駄目だなということがお分かりいただけるんじゃないかと思います。

      • 私も肉の生は大好きなのですけど、この業界に入っていろいろなほかの専門の先生からデータを見せていただくたびに、これも駄目か、あれも駄目か、これも駄目かということで、もうほとんどいつも拝んで食べていたわけですね。
    参加者

    一般のスーパー等で売ってる調理したレバーとかは、大丈夫と考えていいんですか。

    関崎

    この間のポテトサラダ、それと炒めたお惣菜もでしたよね。加熱されたものでもなっているということを考えると、全部大丈夫ということは言い切れないですが、今言ったように、もともと動物が持っていたものがレバーに入っていて、それで病気になるかどうかということだけを考えた場合には、加熱してあれば大丈夫です。

    参加者

    もう1回加熱し直す必要はないですか。

    関崎

    やる必要ないです。ちゃんと加熱されて、中心まで火が通っていれば大丈夫です。E型肝炎は専門の先生に聞いたら、60度を越えるくらいでしっかり加熱されて美味しく食べられると。ただ、お話のあったミディアムレア、たぶん中心まで赤いですから、あれは60度行ってないと思います。行っていれば、肉の色が変わる。だから、まだ必要な温度に達していないという可能性はあります。

      • サイコロステーキについては、塊の肉をサイコロ状に切ってでき上がった肉はいいんですが、クズ肉や肉の切れ端のようなものをゼラチンをくっつけて固めて、凍結して、それをサイコロ状に切ったものなんかは中も外もごた混ぜになっちゃってますから、中心までしっかり焼かないと駄目です。以前に、焼肉チェーン店でサイコロステーキ同じようなものを出してきて、お客さんが自分で焼いてたんですけど、中心まで焼いてなくてO157、食中毒出ちゃったんですね。
    参加者

    これだけのたくさんの菌があって、野生動物も増えているんですけど、実際の狩猟現場で野生動物を駆除するには犬を使うんですが、猟犬が例えば死んだ動物の血をなめてしまったり、ケースによっては内臓も食べてしまうんです。あその猟犬を介して例えばその狩猟者であるとかいう人たちが、こういった各種ばい菌にかかってしまうというリスクというのはどうなんでしょうかね。

    関崎

    リスクは確かにあると思うんですけれども、そういった報告は聞いたことはないですね。人間にはかからないけど動物にはかかるよというウイルスがいて、それにかかっているイノシシを食べた猟犬が死んじゃったというケースはありますけど。何かご褒美であげるらしいんですよね。ワンちゃんが猟に行った時、ワンちゃんがそれをワンワンと追っていったり、倒れた動物がここにいるぞというのをやるので、それをやっぱりご褒美のために、早速捕まえたらすぐぱっとあげるというんですけど、それでもって犬が感染したという事例はいくつか聞いたことがあります。

    参加者

    犬からまたかかる可能性はあるか。

    関崎

    どういう病原体かによるんですけど、今日お示ししたやつの場合には肉食べないとならないのがほとんどなので、ワンちゃんを食べなければ大丈夫です。

    参加者

    廃棄物にしちゃうというお話もあったんですけども、その廃棄物となったものはどうなるんですか。

    関崎

    焼却です。焼却施設もいろいろなと蓄場にあります。全部が食べられる場所ではないですから、食べられない場所も、利用できない部分もずいぶんありますので、それを処分する焼却場があるわけで、そこに全部突っ込んじゃいます。大丈夫です。

    参加者

    全数検査なんでしょうか。以前お聞きした養殖のヒラメは、抜き取りだったんですよね。

    関崎

    全数です。ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマですね。全頭です。それからニワトリもそうです。

    参加者

    私もレバーが大好きで、1年半前まではブタのレバーもよくレバ刺しで食べてたんですが、最近はさっぱりやらずです。先日この近くの料理屋さんに行って、当店のレバーは低温加熱してありますから安全ですと書いてあって食べたんですね。歯ごたえはレバ刺しと全く一緒なんです。温度だけがちょっとあったかいかなという感じがするんですが、歯ごたえは完全にレバ刺しなんですね。これはいいのかなと思って、今食べて何でもなかったんでここにいるんですけれども。表示が「当店のレバーは低温加熱処理してありますから安全です」みたいな表現だったんですが、これは合法なんですか。

    関崎

    何度で何分やったのかが分からないと何とも申し上げられないんですけど、俗に言う低温殺菌というのはパストゥリゼーションと言って、フランスの細菌学者パストゥールさんが最初に考案したもので、ミルクの殺菌ですよね。その場合は、60度で30分くらい置くと、たいがいの病原体は死にます。だから、同じ程度の時間と温度で殺菌しているのなら大丈夫だと思いますけど、果たしてそのお店がどのくらいの温度でどうやっているのかですね。

    参加者

    微生物以外の化学物資とか、毒キノコであったり、そういったものについては何か報告があるのですか。

    関崎

    毒キノコはたぶん食べても消化されちゃっていて、胃袋の中身を食べたりしなければ大丈夫だろうと思うんですよね。化学物質に関してはちょっと何とも言えませんね。何があるのか確かに分からないところがあります。でもそれで事件になっているケースは余り聞いたことがないので、リスクとしては低いんだろうと思います。日本の場合、あと放射性物質ですね。特にイノシシは土の中のミミズを食べたり、落ちてるドングリを食べたりしますので、やはり避難区域の中にいるイノシシは調べていますよね。そのあたりは調べられていますけれども、それ以外はちょっと聞いたことがないです。

    参加者

    今後スーパーなどでもジビエがやっぱりはやっていくと思います。スーパーとか道の駅などでシカ肉とかイノシシ肉が売られるケースが出てくるんじゃないのかなと。それをやっぱりご家庭で調理する時に注意事項って、どういうことが一番大事でしょうか。

    関崎

    つけない、増やさない、やっつけるです。あとは中心まで火を通してください。特にジビエの場合には何がついているか分かりませんから。だけど、ジビエこそあれなんですよね。中心生の状態で出てくるんですよね、お店に行くと。非常に危ないと私は思います。いつ当たるか。

    参加者

    肉を切った後で野菜を同じ包丁で切ったりすると、ウイルスはやはり危ないんですか。

    関崎

    危ないです。それはジビエに限らず、普通のウシやブタの肉でも同じです。お肉の調理をされるのでしたら、その後に生野菜などは切らない。切るなら、まな板、包丁を熱湯で消毒してからにしてください。できれば順番を逆にして、生で食べるものを先に調理して、その後を肉にしていただきたい。以前は、まな板とか包丁を分けているのが普通でしたよね。まな板に野菜の絵が、裏返すとお魚とお肉の絵がついていて、面で分けられるようになっていたりしました。包丁だって野菜を切るのは、日本だったら四角い菜切り包丁と肉を切る牛刀と分けていましたよね。しかし、最近は便利になって、1つの包丁で野菜でも肉でも切れるのが普通になって、何でも一緒にしてしまう。それで、どうしてもくっついちゃいけないものがくっつくということが起きると思います。それはジビエに限らず、普通の肉でも同じですから気をつけなくてはいけません。 (完)

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