HOME > Information » News > Report of seminar co-sponsored by the Research Center for Food Safety, The University of Tokyo, and the Research Center for Food Safety and Security, Kobe University

News

Report of seminar co-sponsored by the Research Center for Food Safety, The University of Tokyo, and the Research Center for Food Safety and Security, Kobe University

掲載日:2012.10.15

日本の食の安全を考える

2012年9月20日・21日、東京大学弥生講堂にて東京大学食の安全研究センター/神戸大学食の安全・安心科学センターの第二回共催フォーラム「日本の食の安全を考える」を開催しました。

晴天にも恵まれ、延べ200名を超える方にご参加いただきました。ご関心を持ってくださった皆様、誠にありがとうございました。

20日は感染症関連、21日は物理化学汚染関連をテーマに、計15名の専門家による講演とパネルディスカッションを行いました。こちらでは、当日の簡単な記録をご紹介いたしますので、要旨集と併せてご覧ください。

要旨集(PDF)

講演スライド

9月20日~感染症と食の安全保障・安定確保~

第1日目は「感染症と食の安全保障・安定確保」と題して、食中毒の重要な病原体・感染症と作物・植物の病害を加えた最新のトピックについて、講演と公開パネルディスカションが行われました。

午前中のセッションでは、まず国立感染症研究所の大西真氏から、下痢原性大腸菌の種類と、それらによる食中毒・感染症の発生状況が紹介されました。下痢原性大腸菌はヒトからヒトへの感染も起こり得るため、食品の汚染だけではなく、ヒト社会内での病原菌の広がりについても監視の目を緩めてはいけないとのことでした。

(左)東京大学食の安全研究センターの関崎教授と神戸大学食の安全・安心科学センターの大澤教授、(右)大西氏「下痢原性大腸菌」

(左)東京大学食の安全研究センターの関崎教授と神戸大学食の安全・安心科学センターの大澤教授、(右)大西氏「下痢原性大腸菌」

次にキユーピー株式会社研究開発本部の宮下隆氏から、サルモネラによる食中毒の発生状況と、汚染源として最も重要な鶏卵について自社工場での厳しい衛生管理の取り組みが紹介されました。

そして、国立医薬品食品衛生研究所の五十君静信氏から、カンピロバクター食中毒について菌の生物学的性状の解説がありました。カンピロバクターは酸素に触れたり冷凍されたりしただけで死滅するが、新鮮な生肉に付着している菌はそれ自体も鮮度よく生きていることを注意する必要があるなど、実生活に即した例示を含めて食中毒予防について紹介されました。

(左)宮下氏「生産現場におけるサルモネラのリスク低減」、(右)五十君氏「カンピロバクター」

(左)宮下氏「生産現場におけるサルモネラのリスク低減」、(右)五十君氏「カンピロバクター」

午後のセッションでは、京都大学東南アジア研究所の中口義次氏から、ビブリオ感染症として腸炎ビブリオとコレラについて紹介されました。ビブリオ感染症は日本では発生が少なくなったけれど、海外ではいまだに猛威を奮っていることや、海外から輸入した魚介類には腸炎ビブリオなどが付着している可能性が否定できず注意が必要であるとのことでした。

休憩の後、神戸大学農学研究科の土佐幸雄氏から、植物病害の防止と農薬について紹介されました。 農薬は毒性を低く抑えるように開発が進められているにも拘わらず未だに無農薬農産物を求める消費者の声も大きいこと、「事故米」問題における基準値違反は法律の改正が生み出したもので安全の問題ではなかったこと、TPP論議においては安全面での議論が抜けていると思われる節もあることなどが話されました。

(左)中口氏「魚介類とビブリオ感染症:アジアにおける腸炎ビブリオ食中毒とコレラ」、(右)土佐氏「植物病害と食の安全-イネとコメを例として」

(左)中口氏「魚介類とビブリオ感染症:アジアにおける腸炎ビブリオ食中毒とコレラ」、(右)土佐氏「植物病害と食の安全-イネとコメを例として」

最後に東京大学農学生命科学研究科の山次康幸氏から、感染症や病害虫による植物の病気を診断・治療・防除・予防することができるエキスパート(植物医師)について紹介されました。 植物医師の育成システムの現況、学内に開設した植物病院では農家・企業・一般家庭から持ち込まれた植物の病気の診断や治療を行っていること、大学での基礎研究を現場に生かす植物医科学のあり方などが話されました。

以上の講演の後、講演者6名とともにパネルディスカッションを行いました。このパネルディスカッションでは、来場者から寄せられた質問に各講演者が答えました。 また、五十君氏からは肉の生食の安全性に対する年齢による感じ方の違いについて追加の情報提供もありました。
各講演者が題材とした危害因子は、いずれも重要なものばかりであり、今後も監視の目を緩めることはできず、安全に向けた取り組みは継続すべきだとの議論がされました。

(左)山次氏「植物医科学が食の安全に果たしうる役割」、(右)パネルディスカッション

(左)山次氏「植物医科学が食の安全に果たしうる役割」、(右)パネルディスカッション

9月21日~物理化学汚染と食の安全保障・安定確保~

第2日目は「物理化学汚染と食品の安全保障・安定確保」と題して、講演とパネルディスカッションが行われました。

午前中のセッションでは、まず神戸大学農学研究科の福田伊津子氏から、ダイオキシンの化学的特性とその毒性発揮メカニズムについて紹介され、ダイオキシンの有害性を避けるためには様々な食品をバランスよく摂取することが大切であると話されました。

次に東京大学農学生命科学研究科の作田庄平氏から、カビ毒の種類、カビ毒により作物が汚染される地域や環境、カビの発生やカビ毒産生を阻害する物質に関する基礎研究の成果が紹介されました。

(左)福田氏「食品によるダイオキシンリスクの軽減の可能性」、(右)作田氏「カビ毒の生産阻害による汚染防除」

(左)福田氏「食品によるダイオキシンリスクの軽減の可能性」、(右)作田氏「カビ毒の生産阻害による汚染防除」

そして、東京大学農学生命科学研究科の八村敏志氏から、食品中に含まれるアレルギー物質の種類、アレルギー発症のメカニズム、発症したアレルギーを軽減させるための研究の最前線に関する情報が紹介されました。

八村氏「食品中のアレルギー誘発性物質-リスク低減化に向けて」

八村氏「食品中のアレルギー誘発性物質-リスク低減化に向けて」

午後のセッションでは、まず東北大学加齢医学研究所の福本学氏から、放射性物質に関する基礎的事項、放射線に関する規制についての科学的な面と非科学的な面が解説されました。また、東京電力福島第一原子力発電所事故による警戒区域内に残された家畜の調査成績を元に、今後注意すべき点について話されました。

休憩の後、京都大学農学研究科の宮川恒氏から、残留農薬の基準値について解説されました。ポジティブリストの問題点や700種類以上も存在する農薬の検出に対処する方法の矛盾点が挙げられ、「食の安心」を得るためにこのまま莫大なお金を検査に費やしたままでよいのかとの疑問が投げかけられました。

(左)福本氏「放射性物質」、(右)宮川氏「残留農薬」

(左)福本氏「放射性物質」、(右)宮川氏「残留農薬」

最後に、東京大学農学生命科学研究科の吉村悦郎氏から、食品に含まれると危害を及ぼす重金属としてカドミウムと水銀について解説されました。これらが混入しやすい食材と、摂取した場合に現れる障害、我々日本人が通常食べている食品がどれくらい安全なのかについて話されました。

以上の講演の後、講演者6名とともにパネルディスカッションを行いました。第1日目と同様、来場者から寄せられた質問に答えたほか、安全を求めるための規制のあり方について各演者から所感が述べられ、活発な議論の後に閉会となりました。

(左)吉村氏「食品中の重金属」、(右)パネルディスカッション

(左)吉村氏「食品中の重金属」、(右)パネルディスカッション

sp
PageTop