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About enterohemorrhagic Escherichia coli O111

掲載日:2011.05.06

腸管出血性大腸菌とは、出血性大腸炎の患者から分離される病原性大腸菌のことで、シガ毒素(またはベロ毒素)とインチミンと呼ばれる 腸管に定着するためのタンパク質を主な病原因子とします。このうち、シガ毒素は一部の赤痢菌が産生するのと同じ毒素で、この作用で 溶血性尿毒症症候群(HUS)と呼ばれる重篤な合併症を起こし、死亡するケースも見られます。

大腸菌は、病原性とは別に、菌の表面、べん毛、莢膜の血清型(抗原型)をもとに、それぞれO型、H型、K型で分類されており、 現在、O型だけでも170種類以上が見つかっています。そのうち、腸管出血性大腸菌には100種類以上のO型が知られており、 患者から分離される血清型では、O157が最も多く、以下O26、O103、O111、O145が世界的に多く分離されます。 日本では、O157が約65%、O26が約24%、O111が約4%という成績があります。これらは血清型が違っても同じ大腸菌であり、 腸管出血性大腸菌としても共通の病原因子を持っているため、いずれも同じ病原性を有しています。

食肉等が腸管出血性大腸菌に汚染されていないかを検査することは、本菌による感染症や食中毒を防ぐために重要な作業です。 初期の頃は、O157による患者が圧倒的に多かったことから、これを検出するキットが使われましたが、その後、O26の患者発生が 相対的に多くなってきたこともあり、O157とO26の検出キットが登場し、近年では、これに加えてO111も検出できる培地や検出 キットも開発されています。しかしながら、食用に供する肉類等を全て十分に検査することは不可能です。また、厚生労働省は、 牛肉等を生食する場合の食肉加工施設や加工工程の衛生基準(http://www1.mhlw.go.jp/houdou/1009/h0911-1.html) を公表していますが、これら基準を満たして出荷される生食用肉は殆どないのが現状です。従って、厚生労働省は、牛肉等の生食は控えること、特に幼児小児や高齢者は生食をしないよう周囲が気遣うことなどを中心とした注意喚起の通知 (http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/03.html)を出してきました。

一方で、腸管出血性大腸菌が存在しても、殆どの場合、牛は病気にならず、これが、農場からの病原菌排除を困難にしています。また、牛肉等の汚染を調査した近年の成績でも、少ないながらある程度の割合で腸管出血性大腸菌に汚染された食肉が見つかっています。従って、生食を控えるだけでなく生肉を調理する際にも、まな板や包丁から生野菜など他の食品に汚染が広がらないか、生肉をつかんだ菜箸やトングでそのまま食べるものをつかんだりしていないかなど、食べ物への間接的な汚染を防止する注意が必要です。

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