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お知らせ

シンポジウム「農場から食卓への安心確保の取り組み」開催報告

掲載日:2012.12.12

農場から食卓への安心確保の取り組み

10月28日、放射性物質汚染と畜産物の安全に関する調査事業シンポジウム「農場から食卓への安心確保の取り組み」を開催しました。

今回のシンポジウムでは、被災地の生産者や食品関連事業者、研究者、報道記者の方々にご登壇いただき、複数の視点から被災地の畜産について知る貴重な機会となりました。
会場には一般消費者や研究者、報道関係者など、多様な立場の方々が足を運んでくださいました。ご参加くださった皆様、ありがとうございました。

こちらでは、当日の講演及びパネルディスカッションの内容をかいつまんでご紹介いたします。
登壇者プロフィール(PDF)

講演スライド

みやぎ生活協同組合の取組

沼沢美知雄、みやぎ生活協同組合産直推進本部事務局長

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地元の経済の活性化なくして復興はあり得ない

  • まず前提として、私たちはゼロベクレルのものしか売らないというふうには考えていません。そうではなく、(1)安心して利用してもらえる生協づくりを進める(2)計画的に放射性物質の検査を行って結果を公表する(3)組合員と職員の学習を深め、正しい知識を持って対処をしていく(4)地元の経済が活性化しない限り復興はあり得ないという考えのもと、活動をしています。
  • 福島県に隣接する地域で生産された牛乳は、2010年度の販売数の3割程度になってしまっていましたが、活動が功を奏し8月から販売数が上がってきています。まず、7月から組合員に利用のお願いをしました。それから店舗には入荷後4日で売り切ることを義務付けました。売れ残っているとさらに良くないイメージになりますので、値引いても赤字でもいいから売り切ることにしました。
  • 普通であれば、売れない商品は売れる商品に置き換えていくのですが、宮城県産の牛乳は売り続けるし売り上げを元に戻す、これまで以上にするというのが私どもの考えです。
  • 牛には輸入した牧草を与えていますが、自給した単年性牧草の給与を再開しようとしています。そのために、耕地を反転耕したほか、生産者ごとに牧草の放射性物質量を測定し、その測定値から牛乳にはどのくらいの放射性物質量が含まれるようになるかシミュレーションをしています。また、生協での自主検査を月1回から週1回に変更しました。自給牧草を使うことは、生産者の原価引き下げになるのです。

生協から消費者への情報提供

  • 現在も地元の新聞には、様々な品目の検査値が記載されています。しかし、消費者が知りたいのは自分が食べているのは実際にどのくらいの放射性物質が含まれているのかということです。
  • 昨年7月~9月に、みやぎ生協組合員50世帯の2日間の食事に含まれる放射性物質の料をゲルマニウム半導体検出器(検出下限は1ベクレル/kg)で調べました。その結果、1検体のみにおいて、セシウム137が1ベクレル検出されました。この食事を一年間食べ続けたとすると、0.02ミリシーベルトになります。これは食品の基準値の設定のもととなった許容線量(年間1ミリシーベルト)の2%です。

福島「酪王乳業」の取組

鈴木伸洋、酪王乳業株式会社執行役員経営管理部長

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「これだけ継続していただいている」と考える

  • 私たちの企業理念には、できたものをただ売るというのではなく、酪農家とお客様を結ぶという思いがあります。
  • 製品は4割以上が牛乳で、その他には生乳をベースにしたヨーグルトなどがあり、果汁やデザート類も作っています。
  • 2011年度の売上は前年度の81%と激減しました。本来であれば、牛乳の製造業において、これだけ売上が減ると事業は継続できなくなります。
  • 販売している地域は、77%が地元の福島県です。関東は、事故以前は11%ほどありましたが、現在は6.3%になっています。当初はこのことに落胆したのですが、「これだけやめてしまった」ではなく「これだけ継続していただいている」と考えるようにいたしました。
  • コミュニケーションをして風評被害を抑止するという活動をしていますが、その時には理解してもらえてもその場限りになってしまうこともあり、難しさを感じます。とにかく検査をして、安全と安心を担保するしかないと思っています。

とにかく検査を

  • 原乳については、福島県では週1回検査をしています。とにかく検査をということで、福島県の生産者団体は週6回検査をしています。つまり、毎日検査をしていることになります。
  • さらに、製品についても週1回検査をし、ホームページで公表をしています。原乳で放射性物質が検出されなければ、それを原料とした製品で放射性物質が検出するはずがないのですが、それでもなかなか理解していただけません。なので、製品でも検査をすることになったのです。極端なことを言えば、製品も毎日検査を、となるのかもしれませんが、それは現実的には不可能です。毎日検査していたら飲んでいただくものがなくなってしまいます。
  • 福島県の牧草は検査をして基準を満たしていれば使うことができますが、生産者団体では今年は使っていません。万が一、牛乳に移行した後では遅いということで、心配の種はできるだけ減らしています。

飯館村養牛家の決断

菅野義樹、和牛繁殖農業経営

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※菅野さんのご講演は、細野先生とのインタビュー形式で進めました。(以下敬称略)

細野

事故後、北海道に移住することになった経緯について教えてください。

菅野

私は18代続く農家の長男として生まれました。農業高校を出て、一時期はサラリーマンもしましたが実家を継ぐことになりました。事故後、妻の実家のある茨城に避難している時、実家の牛の処分について決まりました。今後自分はどういうふうに生きていくのかと自問自答していく中で、やはり持続可能な畜産を行い、それを残したいという思いが強くなりました。そして、そうした畜産のポテンシャルが一番高い北海道に一年間いることにしました。

細野

移住されてまずは有機農業の研修をされていますが、なぜでしょうか。

菅野

この農家が、消費者との近い信頼関係の中で農産物を流通させるCSAという農業をやっています。そうした仕組みについて学びたいと思い研修をしています。

細野

飯館村の状況について教えてください。

菅野

飯館村は標高600mで10年に一度冷害に遭うような元々貧しい環境だったのですが、私たちは「までいライフ」というスローガンを掲げました。これは、農村ならではの豊かな暮らしを自分たちで見つけ、再構築していこうという運動です。

細野

今後もこういう暮らしを続けていきたいと考えていますか。

菅野

そうですね。私の土地は、両親だけではなく、先祖の血と汗がにじんでいるものです。ですが、今は自分がやりたい農業が飯館でできません。それを別の土地で達成すると飯館を見捨ててしまうのではないかという葛藤があって、それは今でも悩んでいます。どうやってそのことに向き合っていくかを日々考えています。

細野

飯館村で畜産を営んでいた他の方はどうしているのでしょうか。

菅野

畜産農家は200軒あって、190軒は廃業しました。廃業していない10軒は県内の他の場所に移って続けています。

細野

プロフィールにある「までいな対話の会」や「つながるつなげるさくらプロジェクト」はどういう活動ですか。

菅野

事故後の6月に、私が撮影した写真をポストカードにして売って、その資金でさくらを植えるプロジェクトを始めました。その頃は、どのようにしたら飯館に帰れるのかが分かりませんでした。ですが、関わりたいという思いを何とか表現したくてこうしたプロジェクトを始めました。現在、飯館村に戻りたいと思っている人とそれが難しいと思っている人、そして、住民と行政の間で対立関係ができていて、うまく前向きな議論ができない状況にあります。飯館村の将来について前向きな議論ができたらと思い、第三者のファシリテーターを入れ、若手を中心にどういうふうに飯館村に向き合っていくかを考える場所を作りました。

細野

住民と行政の対立とはどういうことでしょうか。

菅野

飯館村は他の地域と比べて2か月ほど避難が遅く指示されました。その間に初期被ばくしたのではないかと、自分たちは被害者ではないかという感情があり、そうした不安や恐怖がトラウマとしてまだ住民の中にはあります。

細野

トラウマがあってなかなか前向きになれない、そうした状況を、ファシリテーターを入れた「までいな対話の会」で少しずつ解きほぐしていこうという取り組みなのですね。この対話の会はどのように運営されているのですか。

菅野

若手は北海道から京都までばらばらに住んでいますので、月に2,3回ほど、スカイプで話し合って、月に1,2回は福島に戻ってファシリテーターを入れて会を開催しています。

細野

上の世代の方はどういう気持ちでいるのでしょうか。

菅野

研究者の方と一緒にNPOを立ち上げて、自分たちで汚染マップを作ったり、線量を測ったり、試験研究を進めるなどをして、その結果をもとに村から国に提言するという活動をされている方もいます。

細野

ヨーロッパに行って、チェルノブイリ事故で被害を受けた方から話を聞くチャンスを得たということを聞いたのですが、そこで今後の飯館村の復興に生かせるようなことはありましたか。

菅野

先月、ノルウェーとベラルーシに行ってきました。特にノルウェーでは、官僚と農家の対話がとてもフラットで、膝をつき合わせて議論をして、色々なことを深めていったそうです。ベラルーシでは、一人一人の実情にあうように国がアプローチしていった様子でした。これらの国と比べると、やはり日本の国や県はコミュニケーションが全体的に不足していると感じました。

細野

そうした姿は、までいな対話の会で目指しているものと合致しているように感じます。

放牧酪農を妨げる放射性物質汚染

上野裕、酪農業経営

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※上野さんのご講演は、細野先生とのインタビュー形式で進めました。(以下敬称略)

細野

上野さんは5,6年前までは普通の酪農業を営んでいましたが、レスター・ブラウン博士の「誰が中国を養うのか」に触発され、飼料を自給自足する放牧酪農に転換したという話を聞いています。

上野

今の日本の酪農は、輸入の餌に依存する形で営まれています。餌には粗飼料(草)と穀物があります。本来の酪農は、人間が食べられない草から、食べられる牛乳やチーズなどを得る産業でしたが、ある時期から穀物を与えることでもっとたくさん乳がしぼれることに気づき、そうした方に流れてしまったというのが、現在の形だと思います。せめて粗飼料だけでも生産していきたいと思い、今に至ります。

細野

事故以降、餌の管理についてはどのような対応をされていますか。

上野

事故当時、私の牧場では、放牧の開始に向けて準備を進めているところでした。しかし、どうも原発で問題があるらしいということで、その時の放牧は見合わせました。たまたま関東で放牧は珍しかったので、畜産草地研究所や農研機構の研究者と直接電話やメールでやり取りをしていました。放牧については県からの指示は特になかったのですが、大事をとって研究者に質問をしたところ、チェルノブイリ事故の例を出され、やめておきましょう、ということで放牧を中止しました。全ての農家でこうした研究者との密なやり取りがあったわけではないので、中には、いつもように春になったので伸びた草を牛に与えた、というところもありました。そうした農家の牛乳から放射性物質が検出されてしまい、放牧酪農の危険性ということが異様にクローズアップされてしまいました。

細野

普段は放牧している牛が突然牛舎に入れられると、何か健康上の異常をきたすというようなことはないのですか。

上野

普段、広い土地を歩いて、好きな時に青い草を食べて、寝たい時に寝て、という環境にいたのが、突然小屋に入れられたというのは、人間がとても想像できないほどのストレスだったのではないかと思います。

細野

1頭の牛は何回くらい子どもを産むのでしょうか。

上野

牛舎にいる牛で平均2.8産といわれています。3回産まないくらいで牧場を出ていくというのが平均的だと思います。

細野

牧場を出ていくというはどういうことですか。

上野

酪農牧場は牛乳をしぼるための場所ですので、牛乳がしぼれない牛は牧場から出て行ってもらうことになります。いやな言い方ですが、廃棄牛という形で牧場を出ます。

細野

そうした牛は食べ物にはならないのですか。

上野

今から20年程前の輸入自由化がある以前は、酪農牧場で飼われているホルスタイン種も貴重な肉資源でした。そうした経緯があって、今でも一部は食用に回されることもあります。牛スジやホルモン、ペットフードという形で、何かしらには必ず利用されていると思います。

細野

そうした牛の肉も人間の口に入る可能性があるとすれば、放射性物質の検査はされているということですよね。

上野

枝肉にされた時点で全頭が検査されていると思います。

細野

専門家とやり取りができない農家は不安なのではないかと思いますが、上野さんはどのような存在になっていますか。

上野

今のところ、私が農家の方を専門家のところに連れていって安心してもらうという機会はないのですが、近所の農家にしてみれば「あいつは研究者と一緒になってやっているから、あいつと同じようにすれば大丈夫だろう」というように判断材料にしてもらっているということはあると思います。

細野

パネルディスカッションもありますが、その前に何か言い残したことがありましたらお話ください。

上野

放牧は全国的に見ても少数派ですが、本来食べられないものを食べるものに変える点で、資源を使い尽くすという姿が放牧酪農にはあると思います。このことを冷静に捉え、それが危険だから食べないのか、危険の可能性が排除できているなら食べるのかということをしっかりと考えていただくと、放牧に取り組んでいる酪農家の姿勢もずいぶんと変わってくると思います。有機農業の方にも共通することだと思いますが、今回の事故は土に根差した農法をすればするほど追いつめられてしまったという傾向があります。今回話した内容が、将来の食料問題についても考える材料になればと思います。

パネルディスカッションの内容をご紹介

登壇者(敬称略)

  • 沼沢美知雄、みやぎ生活協同組合産直推進本部事務局長
  • 鈴木伸洋、酪王乳業株式会社執行役員経営管理部長
  • 菅野義樹、和牛繁殖農業経営
  • 上野裕、酪農業経営
  • 近藤隆、富山大学放射線基礎医学講座教授
  • 田野井慶太朗、東京大学大学院農学生命科学研究科准教授
  • 澤野林太郎、共同通信社記者
  • (司会)細野ひろみ、関崎勉

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質問用紙から

畜産を廃業に追い込まれた人は現在どのように暮らしているのでしょうか。

上野

廃業というより廃業へのプロセスが始まったというのが正確な言い方だと思いますが、やはり畜産はきつい仕事ですので、体力的にも精神的にも疲労し途方に暮れている状態だと思います。自分の人生計画が狂ってしまったと感じます。

菅野

飯館村は200軒の農家があって190軒が廃業しています。元々後継者がいないという問題がありましたが、今回のことがあってそれがはっきりしたと感じます。また、TPPが始まったら果たして経営が成り立つのだろうかという問題もありました。

質問用紙から

検査にかかる費用の実情を教えてください。

沼沢

精密検査を外注しますと、一件あたり大体12,000円から15,000円かかります。検査機器を設置するとなると2,500万円から3,000万円かかると言われています。カキやアサリを検査すると、検査代よりも商品代の方が高くなってしまいます。

細野

検査するのにサンプルは1kg必要になるので、マツタケだと大変なことになりますね。

沼沢

そのまま測れるものは1kgでいいのですが、貝は殻をとらなくてはならないので2kgは必要になります。

質問用紙から

消費者への放射性物質以外の情報提供はどのように行っているのですか。

沼沢

生産者へは専門家を招いての説明会を行っています。生産者以外へは私たちの方から説明をすることが多いです。消費者の方に理解していただくのに時間はかかりますが、私たちは消費者の方と議論をしようとは思っていません。理解していただける方には科学的な知見を添えてお話をしていますが、1/3の方には理解していただけなくても仕方がないかもしれません。

関崎

私の専門は細菌学で、食中毒のことで講演することがあるのですが、やはり危ないというものについては簡単に納得していただけるのですが、大丈夫ですというものについては無理やり押し付けることはできないと感じています。そうすると逆効果になってしまうこともあります。できるだけ情報を提供して、ご自分で考えていただくのが一番いいと思います。

質問用紙から

風評被害を生む背景にはマスコミが関わっているのではないでしょうか。

澤野

放射線についての知識がほとんどないまま、事故が起きてこの問題についての取材を始めました。現場で勉強しながら、走りながら記事を書いてきました。共同通信は全国の新聞に記事を配信している会社です。多くの生産者にもニュースを配信しています。そういう人たちにも十分配慮しながら原稿を書かなければならなく、大げさに感じたかもしれませんが、実はかなり控えめに書いたつもりです。例えば、「汚染」という言葉を使うにしても、とても気を使いました。「汚染牛」や「汚染米」という言葉は使いませんでした。「汚染された稲わら」という表現にしました。人体への影響があるかどうかは私も分かりませんでした。多くの学者から話を聞くと、危険だという人もいたし危険ではないという人もいました。できるだけその両方を載せて、「自分たちも悩んだけれど皆さんにも悩んでほしい」という思いで書きました。あと、声の大きな消費者団体やヒステリックになっているお母さんの声を取り上げることはありました。だけど、そうではない人がほとんどだと、段々と分かるようになりました。声の大きな人だけを取り上げるのは事実とは違うということは反省するところです。

関崎

全てを知っていただくというのは基本ですけれど、何も検出されなければニュースにはなりませんものね。

澤野

先週100ベクレルを超えるお米が出ましたが、あれはだいぶニュースの扱いが小さくなったと思いませんか?最近では、センセーショナルに扱うようなことはもうなくなったように思います

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関崎

先週お米が100ベクレルを超えて出たというのはどういうメカニズムなのでしょうか。

田野井

先週検出されたのは110ベクレルで一袋です。何万袋を検査しているうちの一袋です。メカニズムは分からないのですが、同じロットの中でもその袋だけ検出されたということでした。

質問用紙から

過去に放射線を受けた肉や野菜を摂取しても問題はないのですか。また、放射性ではないセシウムは体に影響はないのですか。

近藤

今回のレベルの放射線を受けたものについては問題がありません。今問題になっているのは、放射性物質があるかどうかです。今回はセシウムの134と137が比較的半減期が長くて、ガンマ線を出し続けるというところが問題となっています。ただし、誤解しないでいただきたいのですが、セシウム134や137を私たちが仮に取り入れるとしても、それがずっと体内にあり続けるということではありません。体内では代謝があるので、大体3か月程度で半分になると推定されています。

質問用紙から

放射線で牛ががんになったということはありますか。

近藤

学術論文でそうしたことを証明したものはないと思います。放射性物質を取り込んでしまった牛については、現在、東北大学を中心として病理組織を検査しているので、今後データが出てくると思います。

質問用紙から

酪王乳業で10億円の売り上げ減少があっても、事業を継続できた要因はなんですか。

鈴木

工場では生産性が2割落ち、やはり若干の失業も発生しました。しかし、回復と同時に再雇用する、あるいは若い人たちを雇用するという形で戻ってきています。また、補助事業の資金活用や現状の生産体制に見合ったスタイルに変更させてきました。

質問用紙から

牛乳について、検査のし過ぎではないですか。

鈴木

当初業界では過剰反応を仰ぐのでないかという心配から検査結果を公表しない方がいいのではないかという動きがありました。しかし、私たちは当該地域として、結果を公表していくしか回復はできないのではないかと思い、そのような形をとりました。感情ではなくデータを出すしかないと思っています。消費してもらうことで生産は成り立つので、消費してもらう仕組みを作っていかないとなりません。

質問用紙から

店頭に線量計を置いて、自分で計測できるようにならないものでしょうか。

沼沢

線量計は放射線の量を測るものですので、それで放射性物質がどのくらい含まれるかを測ることはできません。シンチレーションという簡易の測定器もありますが、そこまでやる必要はないのではないかと思いますし、宮城ではそういう事例を聞いたことがありません。それよりも、色々な種類の品目を検査し、その結果を公表することで、安心感につながるのだと思います。

関崎

簡易検査と、時間をかけたゲルマニウム半導体検出器の違いはなんですか?

田野井

現在の基準値である100ベクレルといった値を測るためには数十分の時間が必要です。ですから、店頭で測ることが可能な社会というのは、非常に汚染が進んでいる社会ということになるのではないかと思います。機器を設置し含んでいないことを確認することは良いことかもしれませんが、資源の投入としてそれが果たして有効かどうかということは考える必要があります。

関崎

スーパーで検査結果が出るまで数十分待たなければならないというのは現実的ではありませんね。現在はそのくらい低いレベルだということですね。

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質問用紙から

水の基準値はWHOの基準をもとに設定されたとのことですが、人種間での差はないのですか。

近藤

放射性物質への感受性は人種間での差はありません。

質問用紙から

今育てられている東北地方のわらは何ベクレルくらいでしょうか。

田野井

土壌中の放射性セシウムの内、わら等に移行する割合は非常に低いです。ほとんどの玄米が今は100ベクレルを切っていて、過去のデータから玄米とわらの濃度比は類推できますが、今手元にデータがなく分かりません。なお、わらにも規制値はあります。

上野

現在は地域ごとに数件のわらのサンプルを出して検査しています。無秩序に与えているということは間違いなくありません。

関崎

このシンポジウムを企画する時に念頭にあったのは、被災地の生産者や販売業者は安全な食べ物を消費者に届けるために色々な努力をしているけれど、彼らも被害者である、ということです。被災地の生産者や販売業者は被害者なのだということを報道でもっと前面に出していくことはできないものでしょうか。

澤野

生産者も消費者も被害者で東電が悪いということにしてしまえば簡単なのですが、それでは問題は解決しません。農産物であれば、どうやったらそれがもう一度売れるようになるのかということを、生産者と消費者の双方が顔を合わせてコミュニケートをして、そこに学者の方の知見を入れて、考えていかなければならないと思います。できれば東京の消費者を学者と一緒に福島の農家に連れていき、話を聞くということが必要です。それでも嫌だという人たちを説得するつもりはないですが、せめて検査体制のあいまいさは完ぺきにするべきではないかと思います。例えば、牛肉で「ND(不検出)」となっていても、今手元にあるこの肉が何ベクレルかを知る術はありません。福島では米の全袋検査をしていますが、米のバーコードを見ても、その米が検査をしたものかどうか分かりません。そうした曖昧さを消費者は突くのです。そして、だまって「じゃあダメなのね」と買わなくなる。そういうところをなくしていくのがせめてものやり方かなと私は思います。

関崎

質問用紙で、タイトルにあるように「安心」にまで掘り下げて話してほしいとありましたので、安全が安心につながらないのはなぜなのかなど、一言ずつコメントをお願いします。

近藤

安全と安心については色々なところで講演をしていますが、伝えるのがとても難しいと感じています。同じ事実でも、受け手側の立場によって安心できるかどうかは異なります。私の業界では「安全だ」と言えば翌日には御用学者だと言われてしまいます。ただし、やはりこれからも情報を伝える努力は怠ってはいけないと感じています。

田野井

日本は本来効率的な国だと思いますが、放射線の問題を見ていると、消費者は求めるところまで求めるし、企業はそれに応えないと買ってもらえないという状態に陥っていると感じます。そうすると、1ベクレルまで測れるなら1ベクレル以下に、次はその一桁下、というようになってしまいます。社会としてどこまで行くのだろうと非常に懸念しています。私は教育の場にいますので、今後学生とこの問題について考えていきたいと思います。安心については、全員一致というのは難しいですが、もう少し理性的に考えられる雰囲気にしたいと思っています。

澤野

私の出身は岩手ですが今は東京に住んでいて、食品はほとんどスーパーで買っています。その場合、生産者とのつながりは小さな表示だけですが、その情報が足りないのではないかと思っています。生産者はもっと情報を出して欲しいですし、消費者はもっと情報を求めた方がいいのではないかと思います。昔は、生産者は消費者であって、消費者は生産者であったのですが、今は距離が離れてしまいました。もう一度お互いのことを分かりあえる時に来ているのではないかと思います。

沼沢

私は、野菜や牛肉、牛乳の生産において、ある程度は汚染をコントロールできるのではないかと思います。例えば野菜にカリウムを施肥することでセシウムが吸収されにくくなります。データも出てきていますので、良い方向にいくのではないかと思います。宮城や福島の地域経済が破壊されている状況を、何とでもして戻さなければなりません。安全、安心ということだけではなく、地域経済の活性化という点からも考えていきたいと思います。

鈴木

事故以降、被災地の食品がなくなりました。今後はこのことを地域だけでなく、国として考えていく必要があります。今日の新聞で東電の社員が福島でボランティアをやるという記事がありましたが、今更なんだ、という気持ちがあります。何が優先されて何が後回しにされているのか、皆さんにも考えてもらいたいと思います。また、やはり情報の普及が足りていないと感じますので、教育現場で広めていく必要があると思います。

菅野

海外では、食べ手と作り手の距離が非常に近いと感じます。日本の距離の遠さは、放射能の問題でより明らかになったように感じます。それは、私たち農業者が、安心、安全、おいしさの他に、農村の役割を都市に向かってしっかりと話してこなかったからだという反省があります。消費者に「農業にはこういう意味があるよ」ということを自分の言葉で口説いていきたいと改めて感じています。

上野

生産者は「生産」という仕事をしているのですが、これはいわゆる職業ではなくて人生だと思います。どういう牧場を作りたいのかということは、どういう生き方をしたいのかということと直結します。そういう考えをこれから皆さんにもっと伝えていかなければならないと思いました。そして、消費者には選択肢がありますが、私たちには与えられた条件の中で作り続けられるなら作り続けるしかないという宿命のようなものがあります。選べるということは確かに良いことなのですが、選んだ責任があるのだということを考えてもらいたいと思います。

JRAマーク
このページは、JRA畜産振興事業の助成を受けて作成されました。

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