食のリスク分析について

食の安全をめぐる情報

リスクアナリシスについて -リスク評価とリスク管理の関係-

食の安全に係わるリスクアナリシスの仕組みが、我が国において未だ十分に理解されていないと思われることから、その重要な部分や考え方に関してここに情報を発信します。

1995年頃よりFAOやWHO等の国際機関において食品安全問題へのリスクアナリシス(リスク分析)の適用について検討が進められ、各国において自国の食品の安全性確保に向けてその導入が図られてきました。この間、我が国においても、とくに牛海綿状脳症(BSE)の対策に端を発して、食品の安全性確保におけるリスク分析の重要性が指摘されてきたところです。

リスク分析は、1)科学的知見に基づいて食品由来の健康危害リスクを究明するプロセスであるリスク評価(従来の「安全性評価」を含む)、2)リスク評価の結果に照らし、規制方策を含め、適正な制御方法を選択し実行するプロセスであるリスク管理、3)リスクとその管理に関する情報と意見を、リスク評価者、リスク管理者、消費者、その他すべての関係者の間で交換する相互作用的なプロセスであるリスクコミュニケーションから成り立っています。

リスク評価の結果は、リスク管理者が必要とする科学的根拠として用いることのできるものであらねばならず、そのためにリスク評価者は、リスク管理者のニーズを的確につかむ必要があります。この意味で、評価者と管理者との間には相互理解を図るための十分な情報交換が不可欠です。しかし、この科学的判断のプロセスは、いかなる形であれ、リスク管理上の政策的圧力や宗教上の圧力によって歪められ偏ることがあっては、その本来の機能が失われることになります。ここに、リスク評価とリスク管理との機能的分離が必要とされる所以があるわけです。

リスク管理者は、リスク評価結果に基づいて規制あるいは制御の方策を選択し、講じ、実行する責任を有しています。それら方策は、経済的にも食習慣の上からも、食糧資源確保の点からも、あるいは長期的な展望の下においても、妥当なものでなければなりません。そこには、健康危害リスクの制御などに関する科学的判断および社会的経済的判断が必要であることはいうまでもありません。こうした総合的判断に必要な情報は、リスクコミュニケーションによって得られる部分が多く、これにより関係者が理解し受け入れることのできる方策の構築と実現が可能となります。

一方、科学者により進められるリスク評価は、政策担当者によって歪められてはならないことは勿論のこと、その評価結果の妥当性が科学的な評価にも耐え得るものでなければなりません。そのために、リスク評価に用いられるデータ、仮定、方法、結論等は、公開されることになります。また、リスク管理の方策の構築と実行のプロセスも、関係者に見えるようにしなければ、その理解を得ることが困難となります。したがって、個人や団体の利害を配慮し人権を尊重する必要があるとはいえ、透明性の確保は、基本的にリスク評価のみならずリスク管理のプロセスにも必須なものと理解されています。

我が国においては、こうしたリスク分析の考え方に沿って、食品安全基本法が制定され、リスク評価機関として食品安全委員会が、リスク管理機関として農林水産省や厚生労働省等がそれぞれの役割を果たしているところです。今後も、リスク分析の仕組みに基づく食の安全に対する取り組みを、国民全体が支援し発展させることが必要とされ、食の安全研究センターも科学的側面からこの取り組みを支援していきます。

詳しいことを知りたい人のために

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