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第10回サイエンスカフェ「聞いてみよう!コミック誌から見る放射線の作用」開催報告

掲載日: 2014年12月18日

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コミック誌に取り上げられた話題を題材に話す近藤先生

12月8日(月)、第10回サイエンスカフェ「聞いてみよう!コミック誌から見る放射線の作用」を開催しました。
関崎センター長の挨拶とファシリテーションのもと、富山大学医学部の放射線基礎医学講座の近藤隆教授に、放射線の作用とは何なのか、なぜ放射線は危ないのかをお話頂き、適度に、正当に怖がるための基礎知識について話題提供して頂きました。
冬の空気の冷たい日でしたが、多くの方にご参加いただき盛会となりました。ご参加くださった皆様、ありがとうございました。

配布資料(PDF)

※表記のない箇所の発言は全て近藤教授によるもの。
※質疑応答は一部抜粋。

身近な放射線の話題のウソホント

    • 水の分子が分解されてできた水酸基ラジカル(OHラジカル)や再結合してできる過酸化水素等、これら活性酸素が細胞の中のいろんなものを傷つけてそれが鼻血の原因となるという話があります。ただ、これが、直接鼻血の原因になるかというのは、当たった放射線の量によります。
関崎

「活性酸素」という単語が出てきたんですが、活性酸素は1つの種類ではなく色々な種類があるんですか?

近藤

活性酸素は、活性酸素種ですから色々なものがあり、色々な形があります。

    • 宇宙から放射線が強く当たるとゴールデンゲートブリッジが溶けて崩れるような映画もありますがあり得ません。
    • 宇宙の放射線を浴びると超能力を獲得するというのも、あり得ません。
    • ゴジラが口から放射能の火炎を吐くというのも現実にはあり得ません。

放射線とは・・・

    • 色々な放射線があります。色々な放射線について、一個一個話していると時間がいくらあっても足りませんので、今日は、基本的には、福島でも問題になっている、普通、医療でもよく使われるガンマ線、エックス線という電磁波の放射線についてだけお話します。
    • 教科書にもウソがあります。電磁波というのは、紙では通過して、アルミニュウムでは通過して、鉛で遮蔽され、そこから先には行きませんよと書かれているものが多いのですが、鉛を使えば放射線が100%遮蔽できるとか、通すことができなくなるというのもウソなんです。非常に厚い鉛だったら、殆どなくなりますし、重い元素で遮蔽するというのは理解できるんですが、電磁波というのは0には決してならない、鉛を使えば何でも放射線は0にできるというのはウソなんです。
修正 第10回SC_開催報告.docx の スライド

放射線をイメージするための線香花火のイラスト

    • 放射線は見えないけれど、あえてイメージするとなると、線香花火のようなものです。線として火花が飛びますが、それがアルファ線とかベーター線という粒子を持った、粒子としての放射線のイメージで、また、線香花火をしますと全体的に明るくなります。明るくなると言うのは光ですから、電磁波、エックス線とガンマ線のイメージになるわけです。放射線は明るくなるわけでは決してないのですが、特殊な泡箱とか霧箱とかを使いますと、飛んでいる放射線の飛跡を見ることができます。
    • 放射線の話をするときに、よくわからない理由として、単位がよくわからないというのが挙げられます。色々な単位が沢山出てくるということがあると思います。今までの新聞に出てきた単位で言いますと、食品でよく出てくるBq。それとSvという単位ですね。でも、放射線の科学的な議論をする上ではGyという吸収線量の単位が重要なんですね。
    • 放射線の単位の多くは、放射線研究にかかわった科学者の名前です。
    • 今日話す放射線ではGyとSvはほとんど同じと考えて結構です。皆さんが検診を受ける時の放射線の吸収線量は、一般的なSvと殆ど同じと考えてよいです。

太陽と放射線

    • 太陽系を考えると放射線は全然特殊なものではありません。
    • 我々は、地球上に住んでいるわけで、太陽は多くの放射線を出しています。高エネルギー荷電粒子群とか書いてあるのですが、これも基本的には放射線です。
    • 地球は、空気の層とか磁石によって、放射線が歪められて、直接地球上に降り注がない様にできています。地球は非常に稀な、水が豊富な大切な生物にとって惑星です。地球はまた、過酷な宇宙空間の中にぽつんと多くの生命を育んでいる惑星でり、非常に希有なものなのです。
    • 太陽フレアから放出された高エネルギー荷電粒子は、地球の磁力線に沿って侵入してきます。そして、上層大気中の分子や原子を発光させ、オーロラを起こします。
    • 北極行ってオーロラ、別名でプラズマ状態(現象)ですが、太陽からのいろんな放射線、荷電粒子の影響で空気が電離してオーロラが見えています。
関崎

先程、線香花火の絵で粒子と光ってあったんですが、オーロラは粒子なのですか?

近藤

両方共存した状態ですね。

    • 自然に由来する放射線は、宇宙から0.35mSv、 壁や空気中のラドンから0.1~1mSv、大地から0.45mSvです。
    • 地球上で、太陽からの“放射線”が常に“降ってきている”状態でも、こんなこと日頃皆さん気にされてないと思います。
関崎

(雷のような枝分かれしながら降り注ぐ太陽からの放射線のスライドを見ながら)なぜ枝分かれするのですか?

近藤

太陽から出てくる放射線は、高エネルギーの粒子線なので、空気中の粒子、分子などに当たって、物理的反応をしながら分かれたりします。

    • 女性は、夏場に紫外線よけに日傘をさしますが、鉛の繊維練り込んだ日傘をさすことはしないんですけれども、これが、我々の置かれた環境なんです。

大地と放射線

    • 我々、地球上に住む限り、宇宙からわずかですけれども放射線がやってきますし、大地からも特に花崗岩を含むような採石には放射線が含まれていますし、僅かですけれども、この部屋の壁からも出ています。
    • 地表面が堆積層になっているところの近くは放射線量が低いです。大凡、西日本の平均は東日本の2倍くらい高いですね。
関崎

それはなんですか?

近藤

地殻がどういうふうにできて、日本列島がどういう風にできたかと言うことに起因して、たまたま火成岩が地表面に出ているような地域は放射線量が高めで、関東ローム層のように火山灰が体積して出来た地層の方は低いことになります。

関崎

穴を掘っていけば高くなるか?

近藤

穴を掘ると高くなりますし、また、トンネルの中はちょっと高くなります。一方、鉄橋の上では低くなります。

    • また、宇宙に近づく程、放射線量が増えます。従って、岩木山[津軽富士]で海抜1500mぐらいなのですが、放射線量が2倍になります。富士山に行くとさらに2倍以上増えます。高いところに行けば行く程放射線が高いのです。

温泉と放射線

世界屈指の泉質「ラジウム温泉」三朝温泉についての説明です 三朝温泉のお湯は世界有数のラドン含有量を誇ります。
ラドンとはラジウムが分解されて生じる気体です。ラドンが呼吸で体内に入ると、新陳代謝が活発になり、免疫力や自然治癒力が高まる効果があります。
この効果を「ホルミス効果」といいます。
さらに、ラジウムが気化し、発生るラドンガス(湯気)を吸うことで、抗酸化機能が高まり、廊下や生活習慣病の予防に役立ちます。以下略
    • ラジウム温泉、トロン温泉、ラドン温泉などは地殻の中で、やや放射線が多いところに温泉ができ、健康に良いと言われています。一定の健康増進効果があるのだと思われますが、そういうところでは放射線が高いのです。
関崎

専門家の間でも効果はあるとされているのですか?

近藤

温泉気候物理医学会等ありまして、疫学的な調査や低線量の放射線の実験で、からだにはいいと言うことを報告しているデータもあります。ドイツなどでは、古くから病気の治療する施設などもありまして、一概に全ての人に全てエビデンスを持って効果があるかどうかということは言えませんが、一定の効果はあると考えられています。

海外旅行と放射線

      • 海外旅行に行くと、東京からニューヨークくらいまで行って帰ってくると、1回0.1mSvぐらい被ばくし、計算上は10回往復すると、いわゆる公衆の被ばく線量限度に達します。
      • 一年に10回行く人がどのくらいいるかわかりませんが、大丈夫でしょう。ただ、職業上、何回も飛行機に乗らなければいけない人に関しては、実際に影響があったという報告はありませんが、国連の委員会も注視しています。
    公衆の被ばく線量限度 1mSv/年
    職業人の被ばく線量限度 20mSv/年平均、50mSv/年、100 mSv/5年

    宇宙飛行士と放射線

      • 宇宙飛行士が帰還した際に、放射線の被ばくの話はでませんが、空気層のない、太陽の放射線が直接影響する宇宙空間に行くわけですから、放射線量は増えます。
      • 宇宙のステーションに1日いると1mSv被ばくすると言われています。正確に測ると、太陽があまり活動していない時で0.5mSvだそうです。いずれにしても1~2日いれば、公衆被ばく限度を超えてしまい、20日間いると職業上の被ばく限度[平均]も超えてしまうことになります。

    我々自身も放射線源

        • 野原に一人でいる時に比べて、満員電車では、自分でも放射線を出しているのですが、周りにも沢山人がいて周囲の人から放射線が放出されるので、放射線被ばく量は2倍になります。
        • 私達が放射線を出す理由ですが、私達は地球上に誕生した生物ですから、地球上の様々な放射性同位元素を取り込んでいます。カリウム40が一番多く、健康にいいカリウムを多く含む食品は放射線を出すカリウム40も含んでいるわけです。
        • 私達の体は既にセシウム137も極わずかですが含んでいます。これは、福島の原発事故とは関係ありません。
        • 放射線のエネルギーが強ければ遠くまで飛びます。セシウム137だと0.7 ミリエレクトロンボルト、カリウム40では、1.5ミリオンエレクトロンボルトの放射線を出します。つまりカリウム40の方が遠くまで飛びます。このエネルギーを調べることで、どんな放射線があるかわかります。
        • なぜ、私たちの体の中にセシウム137が含まれているかというと、特に大気圏内の核実験によって放出されたものが原因です。半減期が約30年ですから、100年ぐらい経てやっと1/10くらいになるわけです。
        • これらは、避けて通れません。何を食べても僅かなカリウム40が入っています。特に多いのが干し昆布で、例として1kg あたり2000Bqです。でも、干し昆布をそのまま1kgも食べる人はいませんので、体内には僅かしか入りません。
        • 我々の体の中には、カリウムに限らず、セシウムとか、炭素とか、ルビジウムとか、鉛とか、こういうものを含めて、大凡、体重60kgの人は6000Bqらいの放射線を持っています。
    関崎

    福島の事故で出たセシウムと昔の核実験のセシウムと区別は付かないのですか?

    近藤

    サンプル内の別なセシウム134を比較すること分かりますが、セシウム137だけが混ざったものでは分かりません。

    なぜ放射線は怖いの?

        H2O → H・ + HO・
            水素原子 ヒドロキシルラジカル
        H2O → H+ + HO-
           こちらは電気分解
      • 励起というのは、電子が軌道の中で、原子核に近くにある電子がちょっと離れ、上の軌道に行く、エネルギーを持って“元気になる”ことで、電離というのは電子がどっかに飛んでいくことですね。
      • この原則は、医療で放射線を浴びようと、被災地に行って、少し高い放射線を浴びようと同じ事が起きます。
      • 電磁波というのは、俗に言う電波でもあります。FMやラジオの電波も遠い親戚です。それから皆さんがお使いの携帯電話も実は親戚です。家で使っている電子レンジも2456メガヘルツの電波で、波長が12cmくらいの電波を使います。コタツに使っている赤外線はもっと波長が短くて10ミクロンぐらいです。
      • 我々は可視光線という世界で生きていて、女性は気にされるのですが、紫外線はより波長の短い側、さらに紫外線の外側には、真空紫外線があって、さらに周波数が高く、波長が短くなります。この辺りから水に当たると直接分解して活性酸素ができます。通常の紫外線は、お肌には若干危険だとされていますけれども、紫外線を水に当てても直接水分子を分解して活性酸素が出ると言うことはありません。紫外線でもかなり放射線に近い真空紫外線を当てると、水分子が直接分解し、活性酸素ができます。
      • いわゆる“電離放射線”という領域になってくると水分子を直接分解してしまう。
      • 普通の電波でも出力が極めて高い電波は生体に影響があります。これは安全だ、これは危険だという前に、どのくらいの線量(量)にあたるかというのが重要なのです。
      • 放射線が他の電波と比べて危険といわれるのは、質的に異なり、エネルギーが高くて、水分子を直接分解する作用を持っているからです。
    参加者

    家の近くに高圧の送電線があるのですが。

    近藤

    一定の距離を取る必要はあるでしょうね。現行の法律では一定の距離をとることになっているので、それが守られていれば大丈夫でしょう。

    参加者

    電磁波はフリーラジカル【活性酸素】を作りますか?

    近藤

    直接つくることはないです。

    参加者

    電磁波は、心臓疾患とかの原因となりますか?影響はありますか?

    近藤

    電波とか磁場とかは兄弟みたいなもんなのですが、体【細胞】のイオンの動きに影響するという報告はあります。磁場もMRIでの診断やリニアモーターカーなどに使われていますが、特別強い磁場でなければ影響は少ないと思います。何故かといえば、地球全体が磁石だったりもするからです。そういう意味でヒトは割と磁場には抵抗性を持っていると考えられています。

      • 我々の体には水を沢山含んでいます。放射線は水分子の結合を直接切り、ヒドロキリルラジカルを作ります。
      • 活性酸素は日常生活でも発生しています。放射線でできる活性酸素も本質的には同じものです。
      • 最近、空気清浄機やエアコンでヒドロキシルラジカルを作る製品もあります。
    参加者

    電化製品でヒドロキシルラジカルが発生したら、問題なんじゃないですか?

    近藤

    問題にはなりません。これが体内【細胞の中】にできたら問題ですが、空気中にできますし、“さっとできてぱっと”消えるので問題にならないですね。この寿命は10-9秒ですから、本当に短いですね。

      • 活性酸素は一種類ではないですし、フリーラジカルである活性酸素もあり、別名フリーラジカルといわれることもあります。
      • 酸素もフリーラジカルです。酸素も意外と“怖い”のです。酸素という分子は2つ不対電子をもっています。2つというのは1つよりは弱いけれども、化学反応しやすいという性質を持っています。食品の中には酸化しやすいものに窒素が封入されていたり、脱酸素剤が封入されているのはこのためです。
    関崎

    空気を吸っているだけなら、いくら吸ってもいいのですか。

    近藤

    それは大丈夫です。我々は酸素を必要としていますし、体の空気の入っていい場所(肺など)にしか入りません。

      • 放射線でOHラジカル[ヒドロキシルラジカル]ができるとOHラジカル同志でH2O2【過酸化水素】ができ、[古くはオキシドールとかの消毒剤です]、また、別名スーパーオキサイドいう、活性酸素が、細胞の中に、組織の中に直接できてしまうので、それが怖い原因です。
      • 我々の体の中では、活性酸素はどうしているのでしょうか。体内で活性酸素ができる場所は決まっています。ミトコンドリアが代表格ですが、そこには、活性酸素を分解する酵素(SOD)があります。ところが、放射線はお構いなく、核の中だろうと、細胞膜だろうと、水があるところでは、無差別に活性酸素作ってしまいます。それが“怖い”のです。
      • 放射線が体に当たって、電離放射線の作用(直接放射線が当たったことによる影響)は3割くらいです。一方、間接作用(活性酸素による影響)が7割くらいです。
      • 万が一DNAに、たまたま放射線が当たったら、電子を飛び出させて、化学反応が起こります。もう一つは、水が分解されてできた活性酸素によって、DNAが切れたり傷ついたりします。

    放射線と付き合うには?

      • 放射線が当たっても、ほとんどの場合は治ります。ごく稀に、突然変異するものもあるし、長い時間を経て、ガンになるものもあります。
      • ルールを作る時は、「できる限り不要な放射線は浴びない方がいい」という考えに立って、線量限度が決まりました。赤ちゃんからお年寄りまでの一般の人は1mSv/年。職業で従事する人は100 mSv/5年なので、平均すると20mSv/年になります。
      • ここで、一般の人の線量限度の1mSvというのは「人為的に」という制限量です。医療での放射線量や自然に浴びる放射線量は入っていません。
      • 「一般の人は、どのくらい放射線を浴びたか管理されてないので、最低値をとりましょう。」ということです。どの位被ばくしたということがわかる人[放射線管理された人]は20倍でも大丈夫(まで許される)ということになります。実際には放射線業務従事者の最大値は50mSv/年とされています。
    参加者

    公衆被ばくが1mSvと定められているのは、内部被ばくと外部被ばくの区別ができないからではないのですか?

    近藤

    内部被ばくをしてもどのくらいの体に影響を与えるかという点では、外部被ばくも内部被ばくも算定する式があるので、トータルの線量で決まるという考えです。

    参加者

    外部被ばくは通過するが、内部被ばくはずっと影響があるのでは?

    近藤

    内部に取り込まれた放射性物質も一定の割合でその量は下がっていきます。今日は、明日は・・・を積算した値がわかるようになっています。核種がわかれば、この値は算定できますので、その線量がわかれば、内部被ばくだから別に考えるということはないと思います。しっかり、放射性物質の量が測定をされれば、そこで内部も外部も区別はつかないです。

    関崎

    1mSvというのは、内部も外部も合わせた値ということですか?

    近藤

    そうです。

    放射線と感受性

      • 線量が大きくなりますけれども、どういう生物がどのくらい放射線にやられやすいかについてお話します。
      • 半数致死線量(LD50/30)とは、全身に放射線を浴びた時に30日後に半数の人や動物が死ぬ線量のことです。
      • 人間の場合、半数致死線量は約4Sv(=Gy)くらいで、半分の人が1ヶ月ぐらいで亡くなります。
      • マウスは人より抵抗性です。逆にイヌとかブタは人より感受性が高いです。
      • 調べてみますと、放射線や他のストレスにも非常に強い生物がいます。クマムシです。
      • 動物の放射線に対する感受性は、決して体重に比例するわけではありません。個々の細胞の感受性のほかに、臓器の細胞がどのくらいで入れ替わるか等が重要です。
      • 医療で放射線を利用されている方が多いかと思うのですが、CTとか撮りますと、放射線を受けることになります。
      • 1年間に日本人が自然や医療で受ける平均的な放射線量の合計(約4 mSv)の1000倍の放射線を一度に全身に受けると半数の人が亡くなります。

    放射線を浴びるとどうなるのか

      • 4Gyぐらいを浴びるとだいたい1ヶ月ぐらいで、血液を作る骨髄や血液細胞がおかしくなって亡くなっています。
      • JCOの事故では約20Gyを浴びられました。本当は5日ぐらいで“腸”死で亡くなるところですが、被曝対応医療の御蔭で、かなり延命されました。腸死(小腸の上皮がダメになる)、皮膚障害、造血障害等で亡くなられました。
      • 稼働中の原子炉の中に人が入るような事故を想定しないと通常ではあり得ませんが、もっと大量の放射線をあびれば、時間や分の単位で亡くなることがあります。その場合は中枢神経死、即ち生命維持活動をしている神経系伝達機能がおかしくなって亡くなります。
      • マウスを無菌状態で飼って放射線を当てると良く生き残る。それは、無菌で飼うと腸の入れ替わり時間が長くなります。放射線を浴びてなんで死んでいくかと言えば、分裂している細胞が死んでしまい、その供給が追い付かなくなって亡くなるんですが、しっかり細胞さえ保っていてくれれば、次の細胞を作る時間があって、次の細胞さえあれば、生きられます。
      • 小腸の粘膜の細胞は、分化するに従って、古い細胞は剥がれおちて、一方、新しい細胞が出てきて、これを補うことを繰り返しているが、無菌の状態になると入れ替わりがゆっくりになるので、放射線にも強くなります。
      • 放射線に対する細胞の感受性は増殖能力の程度に比例し、分化の程度に反比例するというベルゴニエ・トリボンドーの法則があります。
      • 分裂してない臓器の細胞は感受性が低い、分化の程度が高い細胞も感受性は低い。例えば、脳の神経細胞は、僅かしか分裂してないので、強いとか。一旦心臓になったものは、強いです。一方、毛根の細胞のように分裂頻度の高い 細胞の感受性は高くなります。
      • 例外として、唯一、分化が進んでいても感受性が高いものが、血液の中に含まれている末梢血リンパ球です。放射線を当てると急に数が減ります。
      • 末梢血リンパ球は分化の最終形なんですけれども、放射線にもやられやすい。すなわち、放射線に当たったかもしれないと思ったら、リンパ球の数を調べればよいのです。
      • 造血組織、腸の上皮、皮膚、精巣、白内障の原因となる水晶体の細胞も放射線の標的になりやすい細胞です。キーワードは、幹細胞です。
        腸管を細かく切り開いて新聞紙のように広げるとテニスコート1枚分です。ヒトでは何と1日にステーキ1枚分位の上皮が剥がれ落ち、またそれを再利用しています。150g位ものが腸管上皮が毎日剥がれおちるので、放射線を浴び細胞分裂がストップしてしまったら、腸管の絨毛がどんどん短くなって行きます。先程の胃腸死というのはこのような状態です。
      • 腸管というのは、ある一定以上線量を浴びると重篤な障害を起こす臓器です。
      • 皮膚も重要で、放射線を浴びてもしばらくは影響ないのですが、結局、下からの細胞の供給が追い付かなくて、大線量を浴びると被ばく26日では、ひどい“火傷状態”になってしまいます。
      • 事故でよくあるのが、建築現場、橋の亀裂検査、コンクリート内部の亀裂を測定等で行われている 非破壊検査での事故です。たまたま放射線源が置き忘れられたり、落ちたりすることがあります。それを知らない人が、珍しいものとでポケットに入れて持って帰ると、その部分がひどい潰瘍になります。
      • 放射線の影響を考える場合には線量率[あたり方]と全体の線量[あたる量]の2つを考えないといけません。ゆっくりあたった場合には、急にあたる場合よりも、放射線の影響は少なくなります。

    リスクについて

      • ガンに限って言えば、生活習慣病ですし、たばこ等のいろいろな原因があります。それから、死亡というリスクだけを考えれば、世界的には、感染症や災害の方が高いのです。
      • 疫学データからの推定では、だいたい100mSv浴びると自然発生に加えて0.5%ぐらい放射線によるガンの増加があるだろうとされています。これが1だという研究者もいます。
      • 一般的には、個人の生活習慣病もありますので、それらをどう考えるかも重要なことだと思います。
      • 物事には、裏表があります。薬も毒です。抗がん剤は放射線同様DNAに傷つけますから、その意味では増殖細胞毒です。“くすり”と言えばなんとなく健康に良さそうなイメージがありますが、リスクの感じ方とその実体を知ることが重要です。
      • 医療の現場では放射線の利用に制限はありません。医師がその患者さんにとって有益で、正しい診断や治療に必要となれば放射線はいくらでも利用できます。その時の線量は、1回の線量ですが、皆さんが想像するより、自然放射線量より、多い場合があります。
      • 考えてみますと、薬の量ほどいい加減なものはないと思っていまして、横綱の白鵬が風邪を引いたとき飲む風邪薬も1錠、体重50kgの女性が風邪を引いたときに飲む薬も1錠ですし、薬は、投与されてから血中濃度が高まって、その濃度は変化します。一方、放射線は、あたり方(線量率)がわかれば、あとは被ばく時間との積で全体の量が決まります。
      • 測定器が正しいという前提に立ち、線量率もしくは線量が分かれば、放射線の被ばく量はコントロールできます。放射線のことをよく知って、賢く使うことが重要です。
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    様々なリスクについても考えました

    このページはJRA畜産事業の助成を受けて作成されました。
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