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第33回サイエンスカフェ「聞いてみよう!食品表示のこと——アレルギー対策のために私たちができること——」開催報告

掲載日: 2018年4月6日

話題提供者の赤城さんの写真

話題提供者の赤城さん

2018年2月16日(金)食の安全研究センター第33回サイエンスカフェ「聞いてみよう!食品表示のこと─ アレルギー対策のために私たちができること─」が開催されました。

今回はNPO 法人アトピッ子地球の子ネットワークの事務局長で専務理事の赤城智美さんに、アレルギーが起こるしくみの基本、生活の中でアレルギーの原因となる食品を誤飲、誤食しないための事例紹介や、アレルギー反応をなるべく和らげる食生活の工夫などについて、わかりやすくお話しいただきました.

カフェならではのくつろいだ雰囲気の中で、参加者からもさまざまな質問が寄せられ、それをきっかけにしてさらに対話がはずみ、自分やそばにいる大事な人を守るために、日ごろから知識や情報を知ることの大切さを再確認し合いました。

○第33回サイエンスカフェ配布資料(pdf)
(クリックすると開きます)
※以下、記載がない場合の発言は赤城氏のもの
※質疑応答は一部抜粋

アレルギーの起こる仕組みを理解する

    今回は食物アレルギーがテーマです。花粉症、ぜんそく、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどは皆同じ仕組みで起こります。アトピー性皮膚炎は食物アレルギーと同じ仕組みでも起こるし、免疫のIgEを介さないで起こる別の仕組みも合わさっているんですけれども、基本的には免疫の反応で起こります。今日はⅠ型の即時型アレルギーについてお話しします。(スライド2)

    • 即時型は、食べてからおおむね2時間ぐらいの間に起こる反応をいいます。ただ、実際に症状を起こす人の様子を見ていると、2時間よりももうちょっと後で起こる人もいます。
    • アレルギーは免疫の働きで起こります。恒常性を保つためのパトロール隊が体の中にいると考えてみてください。このパトロール隊の名前はIgEと言いましたが、タンパク質の一種でイムノグロブリンという抗体です。異物認識を担当しています。このパトロール隊にはE、A、G、D、Mなどのグループがあって、異物認識係やそのIgEが働き過ぎないように抑える係など相互に関わっています。
    • IgEは異物が体の中にやってくると、これは異物だと認識します。異物の通り道としては、鼻から空気を吸い込んで、気道を異物が通る通り道と、食べ物や水が食道、胃、そして腸を通る通り道、それから皮膚から直接体の中に入ってくる通り道、言い換えると吸入、経口、経皮の3つの経路があります。実は、食物アレルギーの原因物質も食べて発症する以外に、皮膚に触れて発症したり、吸い込んで発生することもあります。食物アレルギーだから経口だけが原因物の経路になるわけではありません。
    • 「茶のしずく石鹸」の出来事はご存じですか。小麦のタンパク加水分解物の入った石鹸を使用した、主に女性の方が被害に遭いました。小麦アレルギーになって、その石鹸を使ってるときには症状が出なかったのに、その後で小麦の食べ物を食べたら、アナフィラキシーショックで呼吸ができなくなるような重篤な障害が起こった例がありました。200人ぐらい被害が出たんですけど、これはまさしく経皮、皮膚からアレルゲンが入って、食物のアレルギーを起こした典型的な例と言えます。アレルゲンにはいろんな入る道があるということですね。
    • 異物が体の中に入ってくると、体内では何が起こるか。IgEというパトロール隊、これは顕微鏡で見るとYの字の形をしています。体の中のあちこちにマスト細胞と呼ばれる道具箱があって、体の外側から体内にいろいろな経路を通って異物がやってきます。例えば花粉が飛んできて、鼻の粘膜にくっつく、これが繰り返し、繰り返し体の中に入ってくると、IgEというセンサーが、これは異物なので「やっつけなくてはいけない」とキャッチして、恒常性を保つために道具箱からいろんな球を放出して、自分の体ではない異物をやっつけます。
    • この球には、ヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジンなど名前があります。お医者さんはこれらの総称をスロー・リアクティブ・サブスタンス(SRS)、ゆっくり働くものたちと呼んでいます。化学伝達物質とも呼ばれます。これらのものが道具箱の中に蓄えられているんです。お魚の干物のちょっと古くなったものを食べて、口の中がいがいがしたことありますよね。あれがヒスタミンの正体ですが、体の中に蓄えられたヒスタミンは、イガモジョ物質ですね。イガイガ、モジョモジョ。それはロイコトリエンとか、プロスタグランジンも一緒です。タンパク質が体の中入ってきたときに、センサーIgEがキャッチして、SRSを放出させて異物のタンパク質をやっつけます。これは体にとって必要な働きをしてるわけですが、このこぼれ球が体の中に張り巡らされている毛細血管を刺激して広げてしまい、中から水分を出してしまいます。毛細血管を刺激して水分を出す、敵をやっつけているはずなのに、体中イガモジョしてくる。
    • 体の外からやってくるアレルゲンとなるタンパク質については、分子が大きいものがセンサーに引っ掛かります。センサーに引っ掛かるタンパク質の名前が、鼻から粘膜に入ってくる花粉だったり、食べる物であれば卵、乳製品、小麦など、比較的大きな分子を持つタンパク質ということになります。
    • ここで知っておきたいことは、アレルギーは繰り返し体の中に刺激物が来て(感作という)、感作されることで抗原抗体反応が結果として起こるということです。感作されないよう、繰り返し同じタンパク質が体の中に入って来ないようにすることが、予防としては大事なことになります。

IgEを知って感作、反応を抑える

    例えば花粉の感作を避けたいと思ったら、繰り返し花粉を吸いこむ状態をなくすことですね。食べ物のタンパク質が体の中に繰り返し来るのを避けようと思ったら、大きな分子のタンパク質を分子量を小さくして、センサーに引っ掛からなくすればいいという考え方ができます。

    • 小さくしてセンサーに引っ掛からないものはアミノ酸です。タンパク質が分解されてアミノ酸になることは消化と言いますよね。タンパク質を、分子が小さくなったアミノ酸まで消化し切れる大人には、抗原抗体反応は起きないんです。全部が全部消化し切れるわけじゃですが、消化され、分子の形に変成するっていうことが、大切です。
    • 変成というと、化学的な言い方ですが、加熱することですね。加熱してタンパク質の形が変わるんです。でも、卵などは高温で処理しないと変成しないため消化したような状態にするのはなかなか難しいです。アミノ酸になる手前の、2つ3つ分子がくっついたものをペプチドといいます。アレルギーの赤ちゃんが飲める粉ミルクというのはペプチドミルクと呼ばれています。食品化学的な技術で、赤ちゃんがアレルギーでも飲めるミルクが開発されています。この仕組みをどう利用して症状を起きないようにさせるかが、治療とか症状を起こさないための代替食品の開発等と深く関わっているわけです。
    • 患者さんのお母さんたちのために、保健所や生協さんが勉強会を開いてくれますが、そこでも必ずこの話をします。仕組みを知って理解し、どう生活に生かすかが大事だからです。
    • タンパク質に対してIgEがアレルギー反応、抗原抗体反応を起こすと、この仕組みは体が記憶してしまいます。一度記憶されたアレルゲンに対しては、いくら消化吸収ができるようになっても記憶は消えないので、反応は起こります。成長とともに消化がうまくいくと、症状が出なくなる食物もあります。ただ、仕組みはそうだけれども記憶があるということは忘れないでおきましょう。赤ちゃんのときに卵アレルギーがあって、成長とともに治った人が、大人になって風邪をひいた。でも会社も休めないから卵酒を飲んで元気になるつもりが、それでまた発症することもあります。記憶はちゃんとある。アレルギーは治るが仕組みは忘れられてない。それで、食物アレルギーは治るけど治らない病気と言われます。体の記憶は消えないんですね。
    • 皆さんがよく知っている予防接種は、この仕組みを活用してるわけです。一度敵とみなしたら、次に体に入ってくる前にやっつけようとする仕組みができるということですね。
    • もう1つ私がこれをお話しする理由は、先ほどSRSの話をしました。ロイコトリエン、プロスタグランジンはあまり聞きなれないですよね。油が体の中で消化分解される過程で出てくるものです。食べる油によって刺激が強いものと、弱いものがあります。最近若い女性の間でダイエット効果があるとはやっているα-リノレン酸の油があります。アマニ油とか、エゴマ油とか、シソ油。α-リノレン酸またはオメガ3系列といいますが、これは刺激が弱いので患者さんで油がかゆみの原因になっていると感じる人、こういう仕組みを考えて油を気にしている人は、α-リノレン酸系列の油を食べたりしています。治療ということではなく、症状が間違って出たとしても刺激が少なくて済む、イガモジョ物質としては弱く働くということで、油を取るならこちらを取るという人たちがいるということですね。
参加者

繰り返しがポイントなのは、分かりやすいです。繰り返しのサイクルは個人差、年齢によっても随分違うのかなと、話を聞いていて思ったんですけど、大体どれぐらい頻繁に取っていると感作が起こる可能性が出てくるとかは、あるんですか。

赤城

これは遺伝的傾向とすごく関わっています。体の外から異物がやってくる、それに対して、やっつけなきゃいけないという反応は免疫の働きですから、誰もがみんなその働きを体の中に持っていて、これは普通です。ただ、アレルギーの遺伝的傾向のある人は、敵がやってきたらやっつけないと、というときに、体の中にIgE、パトロール隊をたくさん作ってしまう。IgEをたくさんつくるか、あんまりつくらないかというのが遺伝的な違いです。例えれば、たきつける薪の量の多い、少ないかな。つまり火元のある、なしではないんですね。パトロール隊がいっぱいいると、ちょっとの刺激に対して働くセンサーが多いので、見逃さない。過剰反応を起こすということになります。この体質は影響するので、同じ数だけ繰り返しタンパク質にさらされたとしても、遺伝的傾向のある人とない人では反応が違うんですよね。

    • だから、遺伝的傾向のある人のほうが花粉症になりやすいというか、同じ分だけさらされたら、ある人は発症しないのに、ある人は発症するという違いが表れます。どのぐらいの分量というのは言えないですね。遺伝的傾向を持っているかどうかが大きく働きます。ただ、最近は、遺伝的傾向がなくても花粉の絶対量の多い地域に住んでいると、繰り返しの刺激に耐えられないで花粉症になってしまう人もいます。アレルギーがある人は国民の3人に1人と言われていますが、統計を見ると大学生だと80%が抗体を持っていて、いつでも症状が起こる準備段階にあるといったデータも紹介されています。年齢と暮らす環境によって刺激に対する反応は違うということですが、よろしいですか。
黒木

異物を認識するのが、そのIgEとか抗体ということで、でも、一方ではそれに反応する人もいれば、しない人もいるわけで、反応する人、アレルギーになってしまう人は、もうそのIgEの数がもともと多いっていうことも関係するんでしょうか。

赤城

もともと多いというより、刺激を受け続けたときにIgEをどんどん作りやすい。いつも多い状態ではなく、お肌と同様に28日ぐらいの周期でIgEも増えてはなくなり、増えてはなくなりしているんだと思います。

    • 一度刺激を受けて体が反応し始めると、どんどん作ってしまう。アレルギーのお子さんのお母さんたちを前にしてIgEの抗体検査を受けた人はいますかと聞くと、大体みんな手を挙げるんですけど、皆さんはいかがですか。ないですね。例えば、子どもの場合はIgEが70ぐらいが平均値と言われていて、大人の人で100と言われているんです。それが21世紀の日本人の平均値です。ですから、時代が変わるとまた違うわけです。
    • 10年ぐらい前にエチオピアの方のIgEの平均値、血液中のIgE、パトロール隊がどのくらいいるかを調べたグラフを見せてもらったことがあります。日本人は平均100と言いましたけども、エチオピアの発症してない人の数値はどのぐらいだと思いますか。エチオピアも、都市は素晴らしく発展して東京と変わらない感じですけど、都市から少し離れた所はもう本当にサバンナとかがあるような所で、上下水道の整い方も違う。日本は世界有数の上下水道の整った環境ですね。この環境の差の中、エチオピアの発症してない方のIgEの平均値5,000なんですよ。
    • 上下水道が整ってないということは、寄生虫に対しての対抗する仕組みをきっちり持っている。その寄生虫が体の中に入ってくると、そのタンパク質は異物なので、寄生虫対抗システムとして働く。本来はこの働きが中心だったのが、今はタンパク質が寄生虫以外にもいろいろ体の中に入ってくるので、それがアレルギーの原因になってきていると本には書かれています。だから、アレルギーは先進国病だと、一時期言われていたんですね。
    • つまり、エチオピアの人は5,000でもアレルギー症状が起きないんですよ。寄生虫と戦うのに忙しいから。免疫のパトロール隊が恒常性を保つためにこの働きをしても、不都合が起こらないぐらい敵と戦うことに役立っている。でも、日本の21世紀の私たちは、もう寄生虫と戦う必要がなくなったので、別のたくさんやってくるタンパク質と戦っていて、もしかしたら、体にとっては余計なお世話なのかもしれない。だから、免疫の暴走と言われたりもしますね。
    • 例えば花粉症にしても、過去の都市政策でスギを多量に植えたため、今スギ花粉という特定の1種類のタンパク質が飛ぶことになってしまった。それで、今度はかつて多かった雑木林を増やしてスギを減らそうと、都市政策を転換しようとしたりしています。花粉症は人間が引き起こした自然のままだったらおこり得ないようなタンパク質の大量飛散をおこしてしまって、それに対して、体がNOと言っている状態です。卵の食べ過ぎとか、乳製品の取り過ぎとか、子どもたちに今起こっている食物アレルギーもその状態と考えることができます。今の日本の生活環境では、寄生虫がいなくなった分、普通の日常にあるものが別の敵として取って代わったと考えればいいのかなと思います。

環境とアレルギー

ディスプレイの前にいる赤城さんとファシリテーターの黒木さんの写真

ファシリテーターの黒木さんの質問に耳を傾ける赤城さん

    人はなぜアレルギーを起こすのかを考えること、それには生きる環境が関わっていることを知ることが大切だなと思います。繰り返し刺激がやってくると免疫の反応、B細胞とT細胞が情報を伝達し合ってセンサーIgEを体につくって、それがマスト細胞に張り付いて、中からやっつける物質が出ます。

    • この抗原抗体反応が体の中で起こる状態を例えば鼻の穴で想像してください。体の中と体の外があります。花粉が飛んできて、鼻の穴の粘膜の内側に刺激がある。IgE、パトロール隊が待機しているのですが、繰り返しの刺激によって抗原抗体反応が起こると、粘膜の内側に水分がたまってきますよね。水分がたまって、粘膜が盛り上がって、粘膜の内側が水分でいっぱいになってくると、鼻の穴の中が狭くなってきますよね。空気が吸いにくくなって、イガイガ、モジョモジョする状態が起こって、耐えられなくなって、水分、鼻水が出てくる。これを花粉症っていいますよね。
    • この状態が気道の辺りで起こると、息を吸うときに水分が移動するので、ゼロゼロ、息を吐こうとすると空気の通り道が狭くなってくるのでヒューッという音がします。これは、ぜんそくと言いますよね。腸の中で、こういう水浸しが起こると、嘔吐とか、下痢とかになって、たまった水分を出そうとすることが起こる。皮膚の内側でも、いろんなことが起こって皮膚炎が出たりするわけです。この仕組みが起こる場所によって違う病名がついていると理解していただいていいと思います。

アレルゲンとなるタンパク質と社会情勢の関係

    さて、先ほどからお話ししているセンサーに引っ掛かるのはタンパク質です。そのタンパク質、アレルゲンについて、日本の法律で表示が義務化されているのは、卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かにです。ここまではご存じだと思います。表示義務ではないけれども、できるだけ表示していきましょうと言われているものが20品目あります。(スライド4、5、6)

    • その中で、ゼラチンは、かつては予防接種の培地に牛のタンパク質とか、鶏のタンパク質が使われていたことがあって、予防接種をするとアレルギーを起こすということが起こっていたので、ちょうど今の中学生ぐらいの年齢の方たちまではゼラチンのアレルギーの方がいますけども、それ以下の年齢は、そもそも予防接種のワクチンの培地がそういう動物のものが使われなくなったので、患者はほぼいなくなったんじゃないかと思います。ゼラチンのアレルギーで困っている方たちはまだまだいますが、多分今の小中学生ぐらいが高齢者になって亡くなられる時代が来ると、もうゼラチン対策は要らなくなるかもしれない。それくらい、予防接種がきっかけで症状が出た人たちがいた時代があったということです。
    • また、キウイフルーツのアレルギーについては、今、30代ぐらいの方が小学生になる頃に給食で出されるようになったんですけども、それより前の時代はキウイフルーツ自体そもそも見掛けない食物だったと思うんです。だから、30代より上の人たちにはあまりキウイフルーツのアレルギーの人がいません。このように、食べる物が海外から入ってきたり、食卓の文化が変わるとアレルゲンは変わるということですね。

食物アレルギーと表示ミス ケーススタディ

    食物アレルギーの症状について、厚生労働省が実施しているモニタリング調査の数字では、皮膚症状を起こす人が90%以上、呼吸器症状が33.6%、粘膜症状が28%。この数字をを見ると、1人で2つぐらいの症状を起こしていることが想像できると思います。消化器症状を起こす人は18.6%です。(スライド7、8)

    • ショック症状というのは、いわゆるアナフィラキシーショックのことです。食物アレルギーの人の約10%がアナフィラキシーショックを起こしています。食物アレルギーの人全部がアナフィラキシーショックを起こすわけではないですね。1人で1つか2つぐらいの症状があるんだけれども、アナフィラキシーというのは、臓器全部が一度に症状を起こす状態です。だから血圧が下がって、起きていられなくなって、パタンと倒れちゃうようなことが起こる、
      ということですね。
    • 同じ調査で、食物アレルギーの原因食物について、鶏卵39%。乳製品23%、小麦12%と報告されています。あとはすごく少ないですね。20年ぐらい前、母数は全く小さいんですけれども、私たちは電話相談などで繰り返しこういう統計を取っていたんです。その頃ピーナッツは1%未満でした。果物もすごく少なかったんです。バナナは果物の中で突出していましたが。それが今、20年たってピーナッツは5倍ということなんですね。だから、全体としては大きい数字ではないけども、食卓が変わって、ピーナッツオイルとかが使われるようになって患者が増えたというのを、私たちは身をもって感じています。(スライド9)
    • 食品回収情報というのは、47都道府県すべての保健所がウェブサイトをやっているわけじゃないんですが、現状基本的に保健所が統計を取ってウェブで発信しているものを、アレルギーに関してのみ手作業で集めています。アレルギーの表示義務化は2000年からスタートしていますが、私たちの統計は2008 年からスタートしています。(スライド10、11)
    • 残念ながら2017年は、2月初めにようやく統計が終わって今回資料のグラフには反映されていませんが、2016年までのデータを示しています。合計が下から2番目の数字ですが、全体として増えているのが分かると思います。消費者庁に届けられた発症数も出ていますけれども、私たちが調べると、こんな少ない数字じゃないんですね。公のものに登録する制度というものがないので、まさに氷山の一角だけが行政に吸い上げられている感じがしています。(スライド11)
    • 食品回収の理由を、保健所が発表した文章から拾って分類してみると、ラベルの貼り忘れの類いが30件ぐらい、2013年からずっと出てきています。意外に思うのは、Aという総菜とBという総菜を互い違いに間違えて貼ってしまっているという例がとても多いことです。(スライド14)
    • 例えばえびチリのお総菜と、ほうれん草の煮びたし、見た目赤と緑で全然違うけども、ほうれん草のほうにえびチリ、えびチリのほうにほうれん草の煮びたしと貼ってあるような表示ミスで回収に上がってきています。必ずしも表示の微妙な違いでアレルギーの人が発作を起こしかねないというような危険の大きな間違いばかりとは限りませんが、こういう作業上の間違いが増えたと感じています。貼り間違えたメーカーさんに電話で聞いてみると、このケースの場合パッと見て、貼るラベルの文章が違うのは分かりそうなもんですよね。それが分からない理由は、製造現場に日本の言語以外を使う方たちが増えたということと無関係ではありません。(スライド15)
    • だから、ぱっと見て間違っているか、合っているかっていうのが分かる仕組みを別途製造者の皆さんはやらなきゃいけないんじゃないかということを、私たちはお伝えしています。時代の趨勢で海外の人が日本の製造現場で働くというのは、もう当たり前の状況なので、その中でどうやってミスを防いでいくかということも大事かなと思っています。
    • 同じ2016 年の統計を食品分類で分けてみると、すごく特徴的なのは、お総菜が多い。その次に、お菓子、パンと続きますが、1、2位とそれ以下とは全然違う数字ですよね。事故が突出してるのが総菜の貼り間違いということもありますが、書かなければならない材料が多いということも関係しているんだと思います。(スライド11)
    • 月間の平均回収件数を見ると、とても多いですね。1カ月19件というのは1日おきに何か回収のお知らせが来るということですね。これは私たちがウェブサイトで公開しているので、あとで興味のある方はぜひ見てください。無料です。メールアドレスを登録すれば食品回収の情報が日々届きます。多いときは1日に何件もあるときもありますが。(スライド12)
    • アレルゲン別に分類してみると、やはり小麦がダントツに多い。小麦製品、お菓子の回収が多いこともありますが、それだけいっぱい食べているんですね。また、乳製品や卵が多いのは、それらを使うことで食品が柔らかくなったり、味に深みが出たりすることとも無関係じゃないという感じです。(スライド13)
    • 特定原材料7品目以外のものでは、大豆がダントツで回収数が多いです。大豆油もこれに含まれるので、材料に大豆油を使って、「使用されているもの─大豆」と書かれていて、回収になっているものが多いということですね。
    • 回収の理由を書き起こしてみると、表示ミスの理由は、原材料供給元の規格書に十分な説明がされていないことによるものもあります。規格書というのは、メーカーさん同士がやりとりする原材料とか、温度管理とか、いろんなものを書く書類です。また、いわゆるトレーサビリティーでいうところの原材料屋さんが輸入した原材料で、輸出元の情報などがきちんとトレースされていないことによって、表示ミスが起こっているというようなケースも含まれます。先ほどの貼り間違いや入力ミスなど、人がやる作業の中のミスもあって、回収の理由にはいろんなことがあるということが、聞き取りや統計から分かります。(スライド14、15)
    • 表示義務化がスタートするときに、メーカーさんは、食物アレルギーが何か微量なものの混入によって起こるんじゃないかと随分警戒したのですが、もちろん成分が間違って含まれないように、製造現場がアレルゲンコントロールをきっちりやらなきゃいけないという基本的なことはありますが、成分を管理するだけではアレルギーの表示ミス、あるいは誤食事故はなくならないということですよね。人のいろいろな作業の中で、注意しなければならないところがたくさんあるということだと思います。

どれくらいの量でアレルギーの反応が起きるのか

参加者

いわゆる外食の大手チェーン店ではなくて、個人でやっておられるようなところのデータはないんでしょうか。メーカーから出されてるパッケージになったものでなく、スーパーで売っているお総菜とか、一般のお店の食物アレルギーの事故についてのデータですが。

赤城

外食に関しては私たちが患者さんに聞き取った誤食事故はあります。ですが、行政が取っているものがありません。

参加者

いわゆる個人でやっておられる方に表示義務はないですよね。そこに落とし穴があるんじゃないだろうかと。データを取っておられて、その深刻さ、重要さについては、どのようにお考えですか。

赤城

後半でそこをご説明しますね。その前に感受性について(スライド16)。時間があったら、後で皆さんにエピペンを触ってもらおうと思うんですが。私たちが行っているキャンプでは、2泊3日で食事の提供をします。患者さん、ボランティアさんを含めて120人集まるキャンプでは中に注射器を持った患者さんが20人ぐらい含まれるんですね。私たちの提供するもので誤食することはないんですけど、例えばキャンプ場はいろんな人が来る場所なので、前に来た人たちが目玉焼きを食べて、テーブルにちょっと目玉焼きの汁が滴ったとしますよね。拭いたけれども、目に見えないタンパク質が残っていて、患者さんが触ると、じんましんを起こすかもしれません。レストランでアレルゲンを間違って出してしまわないように提供するのと同じように、私達のキャンプでも間違わないように提供するんですが、それでも接触事故があり得ます。事故を起こさないようにとにかくテーブルをしっかり拭いて、今まで発症はないんですが、可能性があるので訓練をしています。(スライド17)

    • レストランではアレルゲン管理というのがなかなかできない状況ですが、アレルギーの患者さんがどのくらいの微量な量に対して反応するのでしょうか。卵が目の前にどんってあれば、卵アレルギーの人は卵には触れません。でも、今の例のようにテーブルにこぼれたものを拭き取った後にも残っているくらいのタンパク質でじんましんが起こる場合があります。症状を起こさない人もいるけれども、起こす人もいます。
    • では、口に入れるのはどのくらいの量だったら起こるのか。表示義務は10ppm 以下をコントロールしなさいという法律になっていますが、患者さんのほうはどう見たらいいのか。これは神戸医療生協病院の、木村彰宏先生が作成した、食物に含まれているアレルゲンタンパク量を示したグラフです。(スライド18)
    • 一番下が牛乳ですけれども、牛乳のアレルゲンタンパクは100g中3.3gぐらいなんです。牛乳はアレルゲンタンパクとしては他の乳製品に比べて、そんな多くないんです。患者が乳製品を食べられるように、お医者さんの管理の下で負荷試験という訓練(治療)をするときには牛乳が使われることが多いです。カゼインに含まれているアレルゲンタンパク質がとても多いことが表から分かります。カゼインはいろんな加工品に入っています。お菓子にもカゼインという表示はあるし、カマボコなどの練り製品に含まれている場合もある。今度お買い物するとき、パッケージの裏の原材料表示を見ていただくといいと思います。カゼインというのは、食品の味付けではなく別の意図で使われている場合が多いと感じます。
    • 脱脂粉乳はお菓子類にたくさん含まれていますが、アレルゲンタンパク量が多い。パルメザンチーズにもアレルゲンタンパクは多いです。これは乾燥して凝縮されているからじゃないかと、木村先生はおっしゃっていました。2012年に食物アレルギーの小学5年生の女の子が、学校でチヂミを食べて亡くなった事件がありました。あのときにチヂミに含まれていたのが、粉チーズでした。削ったパルメザンチーズではないかとお医者さんたちが言っているんですが、そうだとすると、分量が少なくてもアレルゲンタンパクの濃度が高ければ反応を起こしやすいということが、これを見ても分かると思います。
参加者

資料にある量は、基本的に乾燥したもののグラム数でしょうか。いわゆるウエットのチーズだったら多少水分が入っていますよね。グラフのパルメザンチーズは粉と思われる含有量だったので。水分含有量などはそろえてありますか。そうではないデータですか。

赤城

これはお医者さんがやってらっしゃるので、わかりません。検査キット会社さんが似たような数値を出されているんですが、それは分離にかけるからウエットでそろえてあると思います。

参加者

乾燥とウエットの状態でグラム数もかなり変わるのではないかと、摂取したときの量で考えたときに思ったので。例えば、この表で牛乳そのものを100g 飲むより、パルメザンチーズを同じ100 グラム取るほうが、アレルゲンをいっぱい含んでるよ、という見方でいいですか。

赤城

それでいいと思います。

お米アレルギー患者さんのためにお米を食べる感触を

    お米のアレルギーは、患者さんの数としてはあまり多くないんですが、治療ではなく、その患者さんのQOLのために、お米っぽいものを食べたいであろう米アレルギーの患者さんが米を食べる感じに慣れるように、チンして食べる米飯のパックが売られているんです。患者さん用のレンジのご飯です。表はその比較です(スライド19)。精白米は普通のお米です。「ゆきひかり」というのは、品種改良で患者さんが食べられるようになっているお米です。たまたま調べたのがここのメーカーのものでしたが、いろんなところがゆきひかりを生産していて、食べてみると味は一般のものとそんなに違わないんですよ。

    • Aカットごはん、ケアライスという、アレルギーの人が食べられるご飯ができる以前は、酒米を食べていました。つまり、酒造用にお米の外側を削って、いわばタンパクのおいしいところを全部取ってしまったものなら食べられる患者がいるというので、酒米を食べていたんです。ただ、実際はそんなにタンパク量が減らないので、患者の中でも食べられる人と食べられない人がいたんです。ケアライスの場合、お米のグロブリンとかアルブミンを技術的に取ってしまっていて栄養は全然ないでしょうけど、見た目は米粒なので、ご飯としてチンして食べられるような状態です。タンパク質のパーセントもすごく低く作られています。ケアライスではほとんどの患者さんで症状が出ないと言えるんですけど、Aカットごはんでは症状が出る方がいるので、この感受性の差というのは患者によって違うということですね。これは、お米の例なので、一般の他の、例えば卵の患者がどうなのというのは、なかなか比較できるものがなくて説明しづらいです。
黒木

お米アレルギーというのは知りませんでした。

参加者

ケアライスは、ペプチドとかに分解するというような加工なんでしょうか。

赤城

ペプチド分解ではなく、アレルゲンを取り去った状態ですね。お米から、アルブミン、グロブリンというアレルゲンタンパクを取り除いています。

参加者

食べたときの味は変わるもんなんですかね。

赤城

お米のおいしいところがアルブミンとグロブリンなんですよ。そこを取ってしまった感じです。ただ、かんだ感じはお米ですね。やはり患者さんのQOLのためのものだと思います。粘度も多少はあります。もち米を食べるときの弾力はないですが、ああ、お米だなという感じはしましたね。

    • 実はお米アレルギーの人は、即時型というより、即時型とゆっくり型の間、8時間ぐらいたってから症状が出ることもあります。ひとたび症状が出始めると、即時型の反応と同じようにわぁーっと一連の反応が起こります。だから、診断できるお医者さんも少ないんじゃないかなと思います。

誤食の例から学ぼう

    誤食の例をイメージしていただくために、よくある例なので、このスライド(スライド21)を使っていつも説明しています。コロッケの例で3例出しました。子どもさんたちが大好きな憧れの食物だからなんでしょうか、コロッケの誤食例は日々耳にします。コロッケはそもそもジャガイモの中に牛乳を混ぜたり、お肉や野菜を入れたりして固めたものに衣、パン粉を付けてから揚げますよね。ここで取り上げる例は、原材料に卵、乳成分が含まれていなくて、パン粉に使っているパンにも卵や乳が含まれていないものを患者が探してきて買っているケースなんです。

    • パン粉に脱脂粉乳が使われてなかったのに、使われるようになった。コロッケはお肉屋さんなどで売られていたりするので、表示が曖昧で、店頭販売のものは表示義務もないこともあって、原材料に卵、乳が使われていないコロッケが、脱脂粉乳が使われているものに変わったことに気づかずに食べてしまったのが1例目。
    • 2例目も同様で、原材料、パン粉に卵や乳が入っていないと思っていたら、仕入れ先変更のため規格が変わって、パン粉が乳を含むものになってしまった。それで症状を起こしてしまいました。表示があるものもあれば、ない場合もある。それでも買ってしまうのは、どこそこメーカーのあのコロッケは前は乳が入ってなかったから食べられるという思い込みで、次から表示を見ないで買ってしまうということ。それで誤食が起こっています。
    • 3番目の例。乳の表示があったのに、パッケージが以前からのものと変更がないから規格変更されてないだろうと思って次のときも気づかずに買って食べる。これは年齢の低いお子さんで、結果としては顔が腫れた。顔が腫れるという経験、あまりないと思いますが、アレルギーのお子さんのことをお母さんがよく表現するのは、2歳ぐらいの子の顔が倍ぐらいに膨らんだという言い方をします。目が開かないぐらいに、ぱんぱんに腫れる感じだと。小さなお子さんの場合、顔が大きく腫れるというのはかなり危険だと思っていいと思うんですが、そういうことが起こっています。原材料のコロッケではなく、衣のパン粉の中の乳や卵の成分に反応するんです。
    • 次の例はよくあるウインナーソーセージとかなんですけども、単純にソーセージと言ってもお肉だけじゃないですね(スライド22)。つなぎに小麦、卵が使われたり、風味を良くするのに乳が使われたりします。ウインナーソーセージの事故もそうした気づかずに食べてしまう誤食の典型的と言えます。
    • 事例1は、4歳の子が咳と嘔吐と腹痛が出てきて、症状が腸の辺りと気道の辺りの2カ所で起こっている状態ですね。それで、転げ回って痛がっている状態というのは典型的な食物アレルギーの症状かと思います。
    • 事例の2番目は、2歳で全身にじんましん。これはアナフィラキシーショックの状態だと思うんです。大人も全身に出るのはかなり危ないですけど、大人と子どもが同じように全身症状になったら、子どものほうがはるかに危険度が高い状態ではないかと思います。
板書する赤城さんの写真

板書でさらに話題が広がります

  • また、次のケースのようにサイコロステーキの結着剤で反応を起こした例もあります。試食コーナーで子どもたちが走ってきて「ちょうだい」と言われたら、ついあげたくなりますね。けれども、すぐにはあげないで、「お母さんを呼んできて」と言ってあげてねと、今スーパーの方たちにお願いするようにしています。
  • POPみたいなものにも、食物アレルギーの人向けに、例えば「卵が入っています」などと、書くようにお願いしています。
  • 黒木

    「保護者の方と一緒に食べましょう」とか書かれているのを、見たことあります。

    赤城

    けちで言うんじゃなくて、命を守るために、お母さんと一緒にということですね。

    外食では「聞いて確認」が大事 ビュッフェはトングに注意

    参加者

    10ppmで表示義務ということでしたが、100gの中のたった1mgですね。コンタミネーションというのでしょうか、「一切、そんなものは使ってません」というくらいの微量でもアレルギーが出てしまうかもしれないですよね。実際に起きた例が2つあるんですけど。マンゴーアレルギーの女性でマンゴーに触れると唇が腫れる人がいて、本人もわかっていたのでレストランで食事をする時に「マンゴーが入っていますか」と聞いたところ、マンゴーはコンタミじゃないから、マンゴーが入っているかいないかを聞いて確認したという例。もう1例は蕎麦アレルギーの女性で、その方はそば殻の枕をしただけで、顔がぱんぱんに腫れて目が開かないぐらいなので、本人も注意しているんだけれども、中華料理店では蕎麦は使ってないだろうとは思うけど、念のためにそばアレルギーがあるけれど大丈夫か聞いてみたら、調理用のコショウにソバが入っているんだそうですね。

    赤城

    そうです。

    参加者

    私はその時に初めて知ったんです。お店の人は「では、そのコショウは使いません」と対応してくれましたが、こういうのは聞かないとわからなくて、もし入っていたらその場で食物アレルギーの反応が出てしまいますよね。

    赤城

    アンケートを取ってみると、お話にあったマンゴーのアレルギーのように、全身に行かない唇の辺りだけに出る口腔アレルギーの人の失敗っていうのは例があります。

      • 例えば、グラスがよく洗われていないですとか、立食形式でトングで料理を取る際に、気をつけてアレルギーのものを取らないようにしていても、トングのほうに、避けたはずの何かが付いていることがあります。トングで食べたわけじゃなくて、トングで何か安全なものを取って食べたはずなのに、唇が腫れたというような話は例として出てきます。
      • 口腔アレルギーではなく、食べてアレルギーを起こす人の例もあります。総菜売り場とか、ホテルのビュッフェ形式の朝食などで自由に取って食べるようにお料理別にトングが付いていますが、中にはあるお料理を取ったトングでそのまま別なお料理を取ってしまうということもあります。一度その別のものに触れたトングをアレルギーの人が使ってしまうと、見た目は自分にとって安全ではないものが何も付いてない状態なのに、そのトングで取ったことで重篤な症状が起こってということもあります。
      • 私たちがウェブで9日間だけやったアンケートでは350例ぐらい誤食例が集まったんですが、それを具体的に細かく読んで、アレルゲンがこれで、事故の原因がこれだと明確に解析できるものは55例ぐらいに減ってしまいます。
      • ということは、原因が分からなくて、本人はこれがアレルゲンだと思うけれども、本来入っていないはずのものだったりするので、第三者に説明できないという事例がすごく多いんです。350例の中ので55例だけというのは少ない気がしますが、ちょっと違う視点で見れば、全部が多分実際に反応が起こったことなんだと思います。その55例の解析の中ではトングが原因というのが10例ぐらい在りました。
    参加者

    ノロウイルスなどの感染と似ていますね。

    赤城

    そうですね。総菜屋さんもレストランも表示義務はないんですが、例えば総菜屋さんなどの場合、ショーケースの中の総菜ごとにトングを区別して詰めるような所で、スタッフの方も間違って同じトングで隣のものを取っていたりする、そういうときに限って事故が起こっているので、スタッフ教育をすることで事故の半分ぐらいは減らせるのではないかと、私たちもそのアンケート結果を解析していてそう感じました。

      • 先ほどのアンケートでは、「外食のときに何を一番安全だと信頼してその食事を選びますか」という設問もしていてさまざまな回答を得ています。中華料理店で念のために店員さんに聞いたという先ほどの例のように、店員さんに聞くというのがすごく大事で、店員さんが正しい情報を出していれば事故は起こっていないです。逆に言えば、アンケートでもわかったのですが、店員さんが間違った情報を出して誤食する例が結構あるということです。
      • 同じ中華料理のお店で、写真で料理を選ぶような場合に、肉野菜炒めと書いてあって、原材料が書いてない中華料理屋さんは、よくありますよね。ある例では、その人は卵アレルギーで、メニューにあるこの料理を選びたいんですけど大丈夫ですかと店員さんに聞いたら、その店員さんは店長さんで「大丈夫ですよ」という答えだったんです。ただ、調理の現場では中国の方が調理をしていて、中国の調理方法ではお肉を柔らかくするために卵白に浸すというようなやり方をするそうですね。店長さんは原材料に卵は入ってないと思っているけれども、日によって調理する人も変わるんですね。確かに卵の入ってない日もあったんだけれども、その日の調理人さんがお肉を卵に浸していたので症状が出ちゃったんです。店長さんが後で調べて、「ごめんなさい、日によって卵を使っていました」と言って、もめ事にはならないで済んだけど、こうした発症事故が起こった例がありました。
      • その意味では店員さんに聞くだけじゃなくて、本当は調理場に確認してもらうというのがいいのかなと思いますね。日本のレストランではお肉を卵に浸すというのは、あんまりやらない方法かもしれませんが。

    表示義務の基準値の考え方 製造現場の対応は

    参加者

    アレルゲンにはいろんな種類があって、今のお話だと100gのうち1mgを超えて含まれる場合に表示義務があるということですが、どこがどう決めてこの数字になっているのでしょうか。前回の別のサイエンスカフェで聞いたのですが、この数字を決める際には安全係数が必ず入っているはずだと思いますが、今の話だけを聞いていると、とにかく入っていたらいけないというお話になっているような印象を受けるんですが、するとこの数字にはどういう意味があるのかわからなくなって、消費者をミスリードするようなものになってしまわないかと危惧するんですが。

    赤城

    表示義務があるのが容器包装された食品に限るということがあって、その意味でこの基準については主に食品加工のメーカーさんが取り組んでいるわけです。もちろんレストランとか航空会社とか、いろいろな所も取り組んでいるのですが、一応法律で決められた数値が示されているのは容器包装された食品だけなんですね。

      • この数字は、厳密にはタンパク量ではないんですよ。配合量というのでしょうか、使われている量なんです。だから、メーカーさんの中にはタンパク量で計算しないとおかしいじゃないかと、毎回消費者庁に意見書を出したりしている所もあるんですね。
      • 配合量、実際に入っている量が何グラムかということで、その症状が出たとか出ないとか、抜き打ちで検査をしたら何ppm出たので表示義務違反というふうに実際の法律では運用されてます。
      • その数値は食品表示検討会っていうところが決めたわけです。それは厚生労働省と農水省の共同会議を経て、いろんな立場から検討されたものであるのには間違いないですが、この間講演会を開いたときに、最後に決めた時のメンバーの方に「どうやって決めたの」「本当は何なの」と聞いたら、えいやで決めたと言っていました。「えいや」というのは、つまり、患者さんのしきい値、閾値というものがありますが、あの閾値が世界で決められてないんですよ。食べ物によっても違うし、もしかしたら人種によっても違うのかもしれない。
      • 私は年に1回だけ国際会議、食物アレルギーとアナフィラキシーの国際会議に行っているんですけど、23カ国の人が集まる会議で、行くと必ず「日本はなんで10ppmと決めたか」と、毎回、毎年この10何年間各国からずっと言い続けられているんです。それは、どこの国もみんなしきい値、閾値を見つけられずにいるからなんです。
      • 例えばフランスがいろんな患者さんに本人の同意を得てテストをして、バナナは4ppmで反応が出ると発表したんですよね。一方、日本での事故例では、私たちが実際に患者さんの誤食で発症した事例で、食べたものの材料を調べたら小麦が4ppmで出ているし、乳製品は5ppmで出ています。でも、それはあくまでもケーススタディーでしかありません。だからと言って、乳アレルギーの人を100人集めて、何ppmで反応するかなどという試験をやるのかというのは、なかなか難しい問題がありますよね。
      • 実際には、そういうことは治療につながることとして負荷試験といって、患者さんが数ミリグラムずつでも食べられるようにして、最終的にはコップ1杯の牛乳が飲めるぐらい、例えば乳成分であればそのぐらいのものが食べられれば、間違って食べても生き死ににはかからないでしょうということを目的とすることも行われています。この負荷試験というのを、お医者さんによっては赤ちゃんの頃から、人によっては5歳ぐらいからやるというやり方をしているんですが、実施しているお医者さんたちはたぶん何ppmとか何ミリグラムとか摂ると反応がポーンと出てくるかというのを分かっていると思うんですけど、それは公表されてないんですよ。
      • だから、あくまでも参考値で4〜5ppm辺りで出る人がまれにいるけど、ほぼ10ppmぐらいなら症状が出ない人が圧倒的に多いというぐらいのところを、えいやで決めたっていうのが、その検討に関わった方たちのコメントでした。だから、やっぱりおかしいぞと思うのはそうかもしれないなとは思うんですけど、それが実際のところです。
    参加者

    アレルゲンのタンパク質の分子量というのがまちまちなんで、確かにppmオーダーで表現するのはおかしな話だとも思うところはありますよね。そうすると、例えば10ppm以下で、原料を使っていて誰か患者さんに症状が出た場合にはどうすればいいんでしょうかね。

    赤城

    加工食品の場合は回収事項になります。それで、私たちはその回収事項をカウントしているという状態です。

    参加者

    表示義務違反にはならないですよね。

    赤城

    なかなか難しいところですが、表示義務違反じゃないです。実際、4ppmで出たというのは、表示義務違反にはならないけど、回収にはなっています。そこが矛盾してると言えば矛盾してることだと思います。

      • 参考情報として、スライド11の表に小さい字ですが、「欄外注意喚起 1例」とか、「推奨表示品目 14例」と書いてありますが、これは表示義務違反じゃないのに食品回収をした企業があるという意味でカウントしています。本来ならば食品回収は、表示義務違反があって、それが危害を与えないようにするために回収をするわけですよね。しかし、実際は、違反してないのにもしもこれで間違って誰かが食べて症状を起こしたら困るからっていうので、表示義務には違反してないけど回収しているんです。つまり企業が数千、場合によっては何万個も回収しなきゃならないとしたら、その費用は数千万円単位でかかるわけです。それでも、その費用を負担してでも事故を起こしたくないから回収しているという現実があるということなんです。
      • 私たちもそれを良しとするわけではないんですけども、メーカーさんとしてはやはり事故を恐れて、「欄外注意喚起」という、原材料表示、法律の範囲とは全く関係ないところで、例えば「この製品は同一ラインで作る製品で卵を使っています」等と表示をする、だけどそこを卵と書くべきところを誤って乳と書き間違えて、それで回収しているということがあるということですから、本当に法律というものが何のためにあるのだろうと思うんですけどね。企業としては、怖いなと思うと回収しているということですね。
    参加者

    今のことについて、発症する事故が起きて、それはもちろん事故なんですけど、結局は過誤というか、ミスではないということですよね。それを心配しないで済むためには、専用ラインでそれしか作らないというくらいにしないと、怖くて出せない状況にあると思うんです。実際にそうした対応をしているメーカーはあるんでしょうか。

    赤城

    あります。専用ラインではないですが、同じ製造ライン上でアレルゲンを使った場合は洗浄してから、タンパク残量を確認してから、アレルゲンが含まれない次の製品を作るっていうことを管理しているメーカーさんはすごく増えました。

      • 日本の食品業界の現状は、私たちも食品メーカーさんといろんな勉強会を一緒にやっていて、参加の内訳は大企業が20%ぐらい、80%は中小の企業さんなんですが、製品の市場シェアで言えば業者全体の20%に当たる大企業が80%以上のシェアを占めています。その勉強会でよく言われることは、食品の安全管理については大企業がコントロールを頑張ってやれば、かなり頑張れるんですよという言い方です。実際は私も分からないんですけども、メーカーさんの感覚はそうなんだろうなと思います。
      • 実際、私たちは今、いろんな食品メーカーさん、コンビニエンスストアさんとか、スーパーさんとかのチェーン展開をしてるところから、取引企業の教育をしてくださいっていう依頼を受けて、アレルギーの話をしています。つまり、大企業が小規模な企業さんをアレルゲンコントロールのために教育をしているっていうことです。日本の企業はかなり頑張ってやってらっしゃるんだなと思います。
      • 先ほどのご質問のあったレストラン、表示義務がない店頭の量り売りの総菜屋さんとかはどうするのかについては、消費者庁で去年ぐらいまで検討会がありました。今はすぐには無理だけど将来的には義務化していきましょうという結論が出て、今は農水省でレストランとか外食チェーンがアレルギーに対してどういう手順を踏めば事故が起こらないようにできるかっていうのを検討中の段階です。

    東京2020へ どんな時も確かな情報を得よう

      なぜ今のタイミングで容器包装の加工食品以外での表示義務について検討されているのでしょう。それは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを迎えるにあたり、その時に海外からたくさんの人たちが来日しますが、そこで、事故を起こしてはいけないということがあると思います。

      • ただ、初めのほうでも説明しましたが、そもそもアレルギーの反応の数値は日本の、21世紀の日本の数値ですよと言いましたように、違う国の人たちが反応する食べ物は、食文化が違うのでみんな違うんですよね。アメリカやイギリスなど西欧諸国では、ピーナッツがコントロールすべき一番重要な食べ物なんです。アジアを見ると、卵、乳、小麦です。日本もそうですけど、卵、乳、小麦のコントロールがすごく大変なんです。
      • 先般、アジア会議の場でのインドの発言では、インドの患者は卵、乳も多いけれども、ひよこ豆に対する反応がある患者が増えているそうです。ひよこ豆って、日本だとちょっとおしゃれなサラダなどに入っているお豆ですよね。日本の大豆アレルギーの人は大豆の代わりにひよこ豆を食べてるぐらい、ひよこ豆って安全なものだという感覚があるんですけど、インドでは違うんですね。
      • いろんな国の人たちの、いろんなアレルギー事情があって、海外から多くの人が来日するという状況でアレルギーの事故を起こさないようにどうしたらいいか、東京都が取り組んでいます。東京都のホームページを見ると、アレルギー対策のためのピクトグラムとして、イラストでアレルゲンを認識するための表示が工夫されて、比較的ポピュラーと思われるものがアイコンで説明されていますので、ぜひ見ていただくといいと思います。
      • 日本の従来からの事情に対しての対策ももちろんですが、海外から違うアレルゲンの人が来た場合でも、やるべき対策として必要なことは、やはり製造者の言葉をきちんと聞き取るっていうことですよね。自分を防衛するためにも、あるいは一緒に食事する人の安全を守ってあげるためにも、不確かな情報ではなく、元をたどった確実な情報を手にすることが重要だと思います。
      • (完)

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