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第12回サイエンスカフェ「聞いてみよう!食品添加物のコト―嫌われものの正体―」開催報告

掲載日: 2015年3月13日

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熱心に聞き入る参加者の皆さん

 3月4日(水)、第12回サイエンスカフェ「聞いてみよう!食品添加物のコト―嫌われものの正体―」を開催しました。
 関崎勉センター長の挨拶と細野ひろみ准教授のファシリテーションのもと、国立医薬品食品衛生研究所食品添加物部の穐山浩博士に、添加物とは何か、添加物使用のメリットと使わなかった時のデメリット、食品添加物の規制や規格などの基準についても分かりやすく説明して戴きました。
 春を感じさせる心地よい陽気の中、多くの方にご参加戴き盛会となりました。ご参加下さった皆様、ありがとうございました。

配布資料(PDF)

※表記のない箇所の発言は全て穐山博士によるもの。
※質疑応答は一部抜粋

危害要因に対する不安の程度

    • 内閣府の食品安全委員会が行った危害要因に対するアンケート調査は、普通の消費者の方を対象に毎年行われています。
    • 平成25年の調査結果では、農薬やいわゆる健康食品に対する不安が高いようですが、食品添加物に対しても約2人に1人が不安だと思っているようです。
    • そして、食品添加物も毎年“不安”とされるもののベスト5に入っているような状況です。

食品添加物は昔から使われていた!!

    • 添加物と一言に言いますけれども、食品を保存したり、加工したり、調理する際に昔から使用されていました。
    • 例えば、梅干しの紫蘇で赤い色素で着色する。クチナシで栗に黄色い色をつける。豆乳やニガリを加えて豆腐を作る。小麦粉にかんすいを加えて中華麺を作る。ハムやソーセージに天然の硝酸塩を加えて、色や風味を良くし、保存性を高める。牛乳に牛の粘膜にある酵素を加えてチーズにする、などです。
細野

梅干しの紫蘇で、赤い色素で着色すると、紫蘇が添加物になるのですか?

穐山

紫蘇から赤い色素が出てきて、色を付けるわけですよね。その色素が添加物なのです。

細野

ニガリは添加物になるのですか。

穐山

ニガリは添加物です。ニガリがないと豆腐が固まりませんから、無添加の豆腐はありません。

添加物の大原則―6箇条―

    • 平成8年に当時の厚生省が「指定および基準改正の基本的な考え方」という指針を出しました。
    • 現在、添加物は使っていいですと許可を得ているものだけが使える指定制度になっているのですが、その基本的な考え方を示したものです。
    • そこでは、「食品添加物は、人の健康を損なう恐れがなく、かつその使用が消費者に何らかの利点を与えるもの。安全性、有効性が科学的に評価されること。」とされています。
    • この考え方から、食品添加物の大原則6箇条が生まれてきました。その6箇条とは、有効性、指定制度、規格・基準、安全性評価、使用基準、摂取量調査です。

第1箇条 有効性

    • まず1つ目ですが、「有用性がないと添加物ではない(有効性)」ということです。
    • 何でもかんでも、入れていいというものではありません。「食品加工の機能がないと入れてはいけませんよ」となっています。
    • ここでいう機能とは、①食品の製造や加工のために必要な製造用剤で加工食品を作る時に使われるもの。②食品の風味や外観を良くするための甘味料、着色料、香料など食品を魅力的にするもの。③食品の保存性を良くする保存料、酸化防止剤など食中毒を防ぐもの。④食品の栄養成分を強化する栄養強化剤(ビタミンやミネラルなど)です。
細野

カルシウム強化の牛乳も添加物ですか。

穐山

外から添加しているのであれば添加物です。

細野

「風味や外観を良くするため」などの目的は、商業上のメリットはあるとは思うのですが、外観は良くしなくてもいいのではないか、自然の方がいいのではないかと思うのですが。市場や企業にとっての有用性ということになるのですか。

穐山

それもかなり大きなウエイトを示していますけれども、発色剤の中には食中毒を防ぐものもあります。なかには、自然のものは腐ってしまっているのではないかととらえる人もいます。

細野

卵の黄身は、日本は凄く黄色いですが、コメ粉卵だと黄身が白くて、あまりおいしくなさそうだなという印象があったのですが、その餌にビタミンEなどを加えて黄色くなっていますよね。その場合も添加物になるのですか。

穐山

餌の場合は飼料添加物、動物飼料として安全性審査をしています。動物への影響を評価して審査しています。

細野

そういうものについても、食品の安全性という意味でも検査されるのですか。

穐山

食品添加物は食品添加物扱いで別に評価しますけれども、飼料から来る摂取量は考えて、安全性を評価することになります。

参加者

着色というのは、消費者のニーズがあるからですか。

細野

食欲が増すというのも重要な要素ですよね。食欲が湧かなくて、食べなくなっていったら、それもまた健康に悪いですからね。

色素について

    • 色素の話ですけれども、クチナシの白い花の果実から黄色や赤色や青色の、3つの色素を作ることができます。
    • ネギトロを買った際に「着色料(クチナシ)」と書かれていました。それは、わさびの色だったのです。緑色の着色料がなかなか無いので、黄色と青色の着色料を混ぜて緑色の着色をしているのです。
細野

クチナシから抽出した色素の場合は、クチナシと書いたらいいのですか?それともクロセチン?

穐山

クチナシですね。この場合は黄色か青色かは分からないですけれども。

細野

クチナシと書いてあると植物から出来たものだなと思うのですが、クロセチンって書かれていると怖いというイメージがあるような気がして。クチナシと書けばいいのですか?

穐山

名前の書き方は色々あるのですが、消費者が分かればいいのかな、と思います。

細野

科学的に色素を合成することはできますか。

穐山

できますが、かなり大変だと思います。

参加者

クチナシやウコンなど植物由来のものでも、「安全性は高いとは言えないが注意すべきだ」と本で読んだことがありますが、安全なのでしょうか?

穐山

ほとんどの天然添加物は、安全性は確認しています。ただ、合成よりも天然の方が安全だとは言えない。天然も量を食べれば安全ではないものもありますから、そこはちゃんと評価しなければならないのです。

細野

天然のものから抽出すると、抽出してきた化学物質に、他のものも混ざっているかもしれない。でも合成すれば純粋なものができるということでしょうか。

穐山

後ほどご説明します。

    • たらこスパゲッティのソースを作っているメーカーですけれども、着色しないで売ったら売れなくなったので、着色して売るようになった。無着色だと美味しくなさそうですし、スパゲッティの色と変わらないのでどこに入っているのか分かりませんよね。

甘味料について

    • コーラ350mlに砂糖39g、500mlに65g、1000mlに108g。大体500mlくらいだと飲んでしまいますよね。65gだと5gのスティックシュガーが13本なのですね。コーヒーを飲むときに多くても1本入れるか入れないかだと思いますが。
    • アメリカだと大きなカップに入れて、肥満になってしまって、サイズを小さくしようとしているのですよ。
細野

ダイエットコーラだとどうなのですか。

穐山

そういったことから、人工甘味料が生まれてきました。最近0カロリーが流行っていますが、0カロリーのコーラには人工甘味料が入っています。

    • 昔のダイエットコーラはアスパルテームという甘味料が主流でした。アスパルテームはあとから甘い味が長く残ります。最近の主流は、アセスルファムKやスクラロースなどが主流で、口の中に入れた瞬間に甘く感じるのです。そこに、ほんの少しアスパルテームを入れると甘さが長続きします。
関崎

ブレンドしているのですね。

穐山

そうなのです。

      • アセスルファムKが実験室にあったので、持ってきました。先程の砂糖65gと同じ甘さを再現しようとすると、アセスルファムKはたった0.32gです。砂糖の200倍の甘さです。

 

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アセスルファムKと砂糖の量を比較する穐山先生

    • 天然ではステビア抽出物が使われます。これは日本の会社が作ったのですが、全世界で使われています。
    • 甘草(カンゾウ)はグリチルルチルサンという甘い物質を含みます。
細野

ステビア抽出物や甘草も人工甘味料になるのですか

穐山

いえ、ステビア抽出物や甘草は天然の添加物になります。

食感(増粘安定剤)

    • 食品の魅力を増すものとして食感があります。
    • アラビアゴムノキの樹液、コンブ等のアルギン酸などがあります。両方とも多糖類が含まれます。
    • アルギン酸で人工イクラを作ります。
細野

イクラの中身を作るのですか。皮を作るのですか。

穐山

イクラの中身です。最近、イクラは結構安く手に入ることと、似せて作る必要はないので見かけない。

    • 最近、イクラのアレルギーが増えています。その理由として、添加物ではないかとよく言われるのですが、天然のイクラの成分に対してアレルギーであって、アルギン酸ではないです。
    • その背景には、和食のファミリーレストランや回転寿司が増えてきているので、食べる機会も増えてきたため、アレルギーも増えてきたのだと考えられます。
    • 中国に行くと、常温で24時間溶けないアイスクリームがあります。カラギーナンという増粘安定剤で、常温で24時間溶けません。
細野

24時間置いておくと、冷たくないのではないですかね。

穐山

24時間置いたら冷たくなくなるでしょうね。

関崎

なかなか溶けないのですか。

穐山

なかなか溶けない。ほぼゼリーなのではないでしょうか。

細野

冷たくないのですよね?

穐山

最初は冷凍庫に置いておくので冷たいかもしれませんが。しばらく溶けないので、持っていてもベタベタにならないです。

    • 日本人は食感に非常にこだわりがあります。
    • こういう言葉が、おいしいと感じるランキングにありまして、人気があります。「もちもち」、「しっとり」ですね。「ちぎって」にいたっては、香りの出し方まで、ちぎって食べてね、と書いてあります。

食中毒と添加物

    • 人類は、食中毒との戦いでした。そのため、塩分を多く入れたり、冷やしたり、加熱したり、密封の容器に入れたりして、保存性を高めていました。それでも、防げないものがあります。
    • ボツリヌス菌は増殖すると危なくて、昔はこれでお亡くなりになった方もいらっしゃいます。
    • 最近多いのはO-157、サルモネラ、ノロウイルス、黄色ブドウなどです。

保存料

    • 日本で1番良く使われる保存料がソルビン酸で、2番目が安息香酸です。
    • ソルビン酸は元々、ナナカマドの未熟な種子より得られましたが、今は合成品が使用されています。また安息香酸は、エゴノキの樹脂成分より発見され、元々は天然ですけれども、今は合成品が使われています。
細野

昔から、天然から抽出したものを使っていたのですか。ソルビン酸という名前は知らなかったとしても、保存性を高めるためにナナカ

穐山

歴史は分かりませんが、もしかしたら、そういった使い方で発見されていたのだと思います。

    • さつま揚げでソルビン酸を添加したものと無添加にしたもので、20℃で6日経過させました。普通、皆さんこの温度でこんな置き方しないと思うのですが、このくらい経過させると、ソルビン酸を添加した方には見た目上の変化がないのに対し、無添加の方にはカビが発生しています。
    • お餅にカビがあっても、削って食べてしまったりしますけれども、あまり良くないと思います。カビはいろんな物質を作ります。カビのいい面だと思うのは、抗生物質を作りますが、一方では史上最強の発がん物質であるアフラトキシンも作ります。カビは見えてもカビの毒は見えないので、カビの毒は取りきれない可能性があります。ですので、できるだけ食べない方がいいですよ。
    • 食品がカビてしまって、カビを取り除いて食べた場合のデメリットと添加物を使うデメリットを比較した場合、私は、カビを取り除いて食べた場合の方がリスクの方が大きいのではないかなと考えています。
細野

カビを切り取ったとしても、毒は残るのですか。

穐山

カビの周辺が多いとは思いますが、浸透してきますから、無いとは言い切れません。

細野

お餅などでは、見えないところや堅いところでも入ってしまうのですか。

穐山

昔は削って食べてしまう。もしかしたら、入っているかも知れないです。

細野

カビが生えたら食べない方がいいですか?

穐山

(食べない方が)いいと思います。発見されているカビの毒は多分ごく僅かで、未知の毒があると思うので。

参加者

ミカンの一部がダメでも反対側などをよく食べますけど、避けた方がいいですか。

穐山

私なら避けます。

細野

箱買いをして、1つだけカビていて、遠くにあるほうは食べてもいい気もするのですが。

穐山

たぶん大丈夫だと思いますが、リスクはあると思います。なぜなら、彼ら(カビ)は胞子で簡単に飛ぶのです。

細野

スーパーの同じ袋の中に入っているものがカビてきたら食べない方がいいですか。

穐山

新鮮なものを手に入れたら、できるだけ早く食べたほうがいいです。加熱するなど何か他の対策をしなければならないです。

参加者

加熱すればいいのですか。

穐山

カビそのものは死にますが、カビが作った毒のなかには壊れずに、毒のまま残ります。史上最強の発がん物質アフラトキシンはなかなか壊れないです。

    • アフラトキシンは絶対入れないようにという基準値が決まっています。
    • 徐々に、摂取し続けると癌になりますが、微量のアフラトキシンで急に食中毒にはなりません。

酸化防止剤

    • もう1つ保存性を高めるものに酸化防止剤というのがあります。
    • お茶の中にカテキンなどが入っていますけれども、カテキンは茶抽出物。これに酸化防止機能が入っています。
細野

カテキンも添加物になるのですか。

穐山

茶抽出物と言う名前ですけれども、添加物になります。

    • 米ぬかから得られたフェルラ酸、γオリザノールといった物質も酸化防止剤の効果があります。
細野

書かれ方で米抽出物とか茶抽出物と書かれていると、あまり不安に思わないのですが、γ―オリザノールという表示が書いてあると、「何だこれは」と思うのですが、どちらの表示をするのですか。

穐山

確か7つか8つは用途名と物質名が併記されていると思います。

    • お茶のペットボトルに酸化防止剤(ビタミンC)と書いてあるかと思いますが、それは、栄養目的に入れているのではなく、酸化防止のために入れているということです。
    • 食中毒は今でも事故が起きています。1997年にカイワレ大根で食中毒が発生したのを記憶している方もいらっしゃるかもしれません。また、2011年に焼き肉チェーン店でユッケのO-111という大腸菌で事故があって、亡くなられた方が出ました。1997年のカイワレ大根の教訓が生きていなくて、2011年、ヨーロッパや北米で、発芽野菜で50人の方が亡くなっています。2012年、最近の減塩ブームの浅漬けで、4歳の方から80代の方まで免疫が弱い年代の方が8人お亡くなりになっています。
    • これは、殺菌剤処理を十分行っていないことが原因だったのです。殺菌剤とは添加物なのですが、添加物の効能と事故というのは、マスコミはリンクしてくれないのです。
    • 添加物の機能として(殺菌料など)もあることを理解して頂ければと思います。

第2箇条 指定制度

    • 機能があれば何でもいいかと言うと、そうではありません。国が評価して、「使っていいですよ」という許可を得なければなりません。使って良い添加物が決められているのです。それ以外は使ってはいけないのが指定制度です。
    • 食品衛生法第10条で決められています。
    • (国から使っていいですよと許可された)指定制度の指定添加物は現在446品目です。
    • 平成7年より前までは、(指定添加物の対象が)合成添加物だけだったのが、平成7年以降は、天然添加物も含まれるようになりました。
    • 平成7年までは、天然添加物に関しては無法地帯だったものを、「食経験から、ここまでは使用してもいいでしょう。」と天然添加物として使えるものを指定しました。
細野

指定添加物の中には合成添加物も天然添加物もあるということですか。

穐山

平成7年以降、そうです。

細野

指定添加物に入るためには、使っても人間の経口に影響がないかどうか確認されて、「決められた量を使ってもいい」ということになっているのですか。

穐山

安全性が評価されて、品質も規格という方法で規定があります。

細野

添加物の品質ですか。

穐山

純度、含量、定義等ですね。

    • 天然添加物は大きく3つに分類されます。天然香料、一般飲食物添加物、既存添加物です。
    • 天然香料と一般飲食物添加物、これらは非常に微量ですし、殆ど一般の飲食物と変わりません。リスト化はしていますが、あまり通常の食品との区別ははっきりしていません。
    • 天然のものを濃縮したり、天然のものから抽出したりしたものを既存添加物という名前に変えまして、「この品目だけはしばらく使っていいですよ」ということになりました。
細野

クチナシなどですか。

穐山

そうです。国の責任で安全性評価及び規格品質を決めています。

細野

平成7年より前は、天然の添加物なら何でも使って良かったものが、7年以降は、「この品目は指定添加物ではないけれども、使ってもいいですよ」というリストが出来たということですね。

穐山

そうです。

参加者

平成7年以降に指定要請があったものはどうなるのですか。

穐山

評価されOKなら指定添加物に含まれます。

添加物としての流れ

    • 業者が添加物を作ります。指定の資料を厚生労働省に申請します。そこで、有効性、安全性評価、規格に関する資料を確認して、食品安全委員会にデータを持って行き、ADI(一日許容摂取量、一生涯食べても安全な量)を設定して頂きます。ADIを設定した後に、厚生労働省に返ってきて、ADI等を確認して、使用基準や規格基準を検討し、許可、不許可を決めます。途中で、パブリックコメントとして意見を求めることがありますので、そこで意見を言っても構わないのですよ。
    • 発がん性が見られたら、ADIは設定されないと思います。
細野

発がん性が駄目というのは、アフラトキシンは少しでも食べてはだめなのですか。

穐山

毒性の一生涯食べても問題ないでしょうというADIとは違う値(TDI)があるのですが、かなり低いです。分析して入っていないかを確認する基準値がありますから、それが非常に低いです。アフラトキシンは添加物ではありませんが、食品安全委員会には、自然毒の安全性評価の専門調査会もあります。自然毒で評価もあります。

第3箇条 安全性評価

      • どんな食品も絶対安全とは言えないのです。水や塩でも沢山摂取すると安全ではありません。
      • じゃがいもは芽にソラニンという毒があるのですけれども、小学校で栽培して食べて、ソラニンが原因の事故も起きています。
      • 大豆は、基本的に生で食べませんが、加工(加熱)によって、トリプシンインヒビターの毒を消しています。
      • タピオカデンプンはキャッサバという芋からできていますが、青酸化合物なのですね。青酸カリと同じですけれども、化合物が入っています。危ないのですが、加工の時に、精製して除去していますから、安心して召しあがって下さい。

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細野

日本で食べると安心かと思うけれども、途上国などで食べても大丈夫ですか?

穐山

アフリカでは、キャッサバを主食としている民族がいるのですが、風土病があります。

細野

加熱してもダメなのですか

穐山

加熱してもダメと思います。

細野

どうやって除いているのですか?

穐山

高分子と低分子で分離しているのだと思います。

細野

精製しているということですか?

穐山

そうです。

    • また、トマトにはトマチンという毒が入っていたのですが、今は育種で低減化しています。
参加者

大豆を酢につけて食べても大丈夫ですか。

穐山

分かりません。ただ、大豆を粉にしてラットに与えたら、加熱しなかったので、何匹か死んでしまいました。

細野

カビの場合は、切り取ってもダメだったのですが、じゃがいもの場合は芽の部分だけを取り除けば大丈夫ですか。

穐山

大丈夫ですが、芽の部分に多いというだけで、皮の部分にも若干含まれていますから、たくさん食べればリスクは若干あります。

細野

ソラニンは加熱しても壊れないのですか。

穐山

通常加熱して食べますよね。それでも食中毒が起きているということは調理の熱でも壊れないと思います。

参加者

60年前は、何も気にせず畑にあるトマトを食べていたのですが、その頃には、トマチンは育種によって軽減されていたのでしょうか。

穐山

おそらく軽減されているのではないかと思います。

細野

どのくらい前ですか。戦前ですか。

穐山

おそらく戦前より前だと思います。商業的になってきたのは、かなり前だと思います。

    • 塩や水でも沢山とれば毒です。特に塩は血圧が上がるし、水だって水ぶくれになってしまいます。食べる量によって有害にも無害にもなります。
    • どんな食品でも、度を越して大量に食べると健康を害します。どのくらいの量なら体に影響を与えないかを知って食べる必要があると思います。
    • 銀杏も1日に6~8粒までが目安なのですよ。ギンコール酸という毒がありますから。
細野

冬になると拾って食べたりしますよ。

穐山

あまり食べても酷くはなりません。

細野

でも、毎日食べませんものね。

穐山

安全な食品や添加物があるのではなく、安全な量があるだけなのです。

    • 摂取量を横軸、生体の影響の程度を縦軸にしますと、だんだん生体反応が出て、中毒になって、死んでしまうのです。
    • 安全な量があるということなのです。
    • 我々の体には、排泄や代謝・分解機能があり、一定の量までは悪影響が表れません。
    • 食品とともに口の中に化学物質が入ります。腸管を素通りして排泄するものもありますし、腸管から吸収して、血中から肝臓、心臓、全身に行きます。ですが、肝臓で代謝、解毒、胆汁を作って混ぜて溶かしてくれて、腎臓から尿と一緒に、溶けないものは胆汁と混ざって便として排泄されます。ですから、微量ならば問題ない。天然由来の悪い物質でも、解毒機能が備わっているので、銀杏を10個食べても問題ないということです。
    • 1日許容摂取量(ADI)とは、人が生涯にわたって毎日摂取し続けても、健康に影響をおよぼさない量を設定しなければならないのです。
    • 無毒性量(NOAEL)とは、動物実験で有害な作用を示さない量です。
    • ADIをどのように求めるかと言うと、ネズミに試験物質を投与していくと、5匹のうち1匹の調子が悪くなる。毒性が認められるものが出てくる。毒性がない量をNOAEL(ノアエル)といいます。これは動物実験から求めます。動物実験から求められたNOAELをさらに、安全係数というもので割ります。安全係数を100とすることが多いのですが、無毒性量の1/100がADIです。つまり、ADI=NOAEL÷100(動物とヒトとの違い(種差)×ヒトの個人差(個体差))
    • 使用上限はADIよりさらに低い値です。
細野

健康影響がないと、実験で影響が出なかったところの1/100をADIとし、もっと厳しいところに使用基準があるということなのですね。

参加者

風邪を引いて免疫の弱っているときなどで変わってくるのではないですか。

穐山

個人差がありますから、免疫の強い方は毒性が出ないと思うのですが、免疫の弱い方や赤ちゃんやお年寄りまでいらっしゃいますから、安全係数10で幅を持たせています。だだし、設定した後に、何か新しい動物実験のデータが出た場合、再評価して設定値を変えることはあります。

参加者

毒性影響とは具体的にどんなものですか。動物試験で影響が出たかどうかはどうやって判断するのですか。体重が減少しただけでも毒性ですか?

穐山

毒性とするかしないかは、個別に考えます。おそらく、体重が減少すれば他にも影響が出てくると思うのです。単純に体重が減るということはないです。血液が減るとか、どこかの組織に問題があるなどのデータが得られると思います。若干の体重の減少で他に影響がなければ毒性と取らないと思います。

    • 無毒性量を決めた動物実験というのは、色々あります。単回投与毒性試験、反復投与毒性試験、増殖毒性試験、発生毒性試験、発がん性試験、体内動態試験、遺伝毒性試験、一般薬理試験などです。
    • それらの添加物試験のデータを求めます。すると、それぞれの試験に対してNOAELが出ます。その中で一番低い値をNOAELに設定して、それを100で割った値がADIというように食品安全委員会で設定します。
    • 90日反復投与、1年間の慢性毒性や発がん性試験で見つけることが多いです。

第四箇条 規格・基準

    • 添加物の品質が決められています。
    • 食品衛生法の第11条で「厚生労働大臣は添加物の製造、加工、使用、保存の基準や添加物の成分について規格を定めることができる。」とされていて、食品・添加物等の規格基準という法律になっています。これを守らないと食品衛生法違反になります。
細野

指定添加物に関してのみですか、既存添加物もですか?

穐山

順次規格を作っています。

    • この添加物の規格基準をまとめた本を公定書と呼んでいます。厚生労働省が出している本です。規格基準には、成分規格、製造基準、保存基準、使用基準の4つがあります。
    • L-アスコルビン酸はビタミンCなのですが、その規格基準の中の、「性状」という項目の中には、「本品は、白~帯黄白色の結晶又は結晶性の粉末で、においがなく、酸味がある。」とされています。ですから、においがあったら違反になるわけです。

第五箇条 使用基準

    • 何でも大量に食べれば毒ですから、「ここまでしか使ってはいけません」という量か決まっています。
    • 食品添加物の品目ごとに食品が決められています。
    • ADIに基づき日本人の各食品の摂取量などを考慮したうえで、使用対象食品や最大使用量などが決められます。
    • 使用基準の上限量を添加してもADIを十分下回る量しか摂取しないように決められています。つまり、色々な食品から添加物を摂取しますよね。それらを全部摂取したとしても、ADIを超えないように食品の種類、使用量、使用濃度、使用目的、使用方法を制限しているということです。
    • ADIが100mgだとしたら、「この食品はここまで」、「この食品はここまで」というように、使用量が制限されていて、それらを全て食べてもADIを超えないようになっているのです。
参加者

コンビニ食などを頻繁に利用していても大丈夫ですか。

穐山

一応、使用基準の上限と国民栄養調査の平均の摂取量でADIを求めていますけれども、毎日は食べませんよね。おそらく、ADIの使用上限の最大までは使っていないと思います。ですから、ADIを超えることはないと思います。また、摂取量調査として、世代を4分類して、食べる量から摂取しすぎていないかを確認しています。

参加者

確認してみて、ADIを超えそうなこともあるのですか。

穐山

アルミニウムは膨張剤として菓子パンに入っています。アルミニウムは国際基準で、ADIのようなPTWIという値が決められたのです。そこで、赤ちゃんや乳児など世代別の摂取量を鑑みて、摂取量を推計した結果、2歳ぐらいの幼児の約20人に1人が1週間の最大摂取量を超えてしまうというデータが出まして、使用基準を設定し直そうとしています。バランスを取っていなくて、菓子パンを毎日与えている場合、アルミニウムの「ここまで大丈夫ですよ」という量を超えてしまう人が5%ぐらいいます。

      • 甘味料のスクラロースのADIは、15mg/kg/day(日)と決められています。そのうち、菓子・生菓子には1.8g/kg以下等と決まっています。

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15mg/kg/day(日)

体重50kgの人だったら単純に50倍です。

750mg/50kg/day (750mg=0.75g)

    • スクラロースの各食品の使用量の最大上限を入れたものを国民栄養健康調査で調べた平均的な食事量と掛け合わせたものを全部足したとしてもADIを超えません。

第6箇条 摂取量調査

    • 国として、実際に食べすぎていないかを毎年確認しています。摂取量調査と言って地方自治体と協力してやっています。
    • 実際に食品を買ってきて、食べている量と掛け合わせて、「超えていません」ということを報告しています。
    • 普通の食生活をしていて、多い物でもADIの0.5%程度です。
関崎

普通じゃない食生活をしているとどうなるのですか。

穐山

添加物による影響よりも、食生活のバランスの乱れによる影響の方が心配されます。

    • 指定制度にされてない添加物が外国から輸入されている場合がありますので、分析法を作って、検疫所で監視して、入らないようにしています。港をすり抜けたとしても、地方自治体で流通品を監視しているということです。さらに、使用基準も地方自治体の方で、モニタリング(抜き打ちで)監視しています。
    • 食品衛生監視員が、工場に立ち入って、規格基準を守っているか監視をしに行くこともあります。
    • 摂取量、食べすぎてないかを調査して、食べ過ぎているようであれば、使用基準改正という流れになっています。
    • 規格基準の違反よりも表示違反の方があるかもしれません。
参加者

最近、添加物(保存料)を多く摂取しているせいか遺体が腐りにくいという話を聞いたことがあります。

関崎

亡くなった日から火葬までの間に時間がかかる場合などは、ご遺族の同意を得て、亡くなった早い段階で、遺体の中に腐らない薬剤を注入するという措置をする場合があるそうです。

参加者

蓄積したりはしないのですか。何を持って安全と言えるのですか。

穐山

一生涯食べて大丈夫かなど、不安な気持ちも分かりますが、先ほどお話したように人間は解毒機能があり排泄されますので、蓄積は難しいし、どんなものでもリスクはあります。カビの毒のリスクや、腐ったものを食べるリスクもあります。1生涯が2年のラットに、毎日毎日1年間食べさせてADIやNOAELが出てくるのです。人体実験するわけにいきませんので動物試験するしかありません。解毒機能も多くない(影響を受けやすい)小動物で実験しています。そこに、更に安全だと思われる係数をかけてADIとしているので、添加物摂取によるリスクより、食中毒等のリスクの方が多いように思います。

参加者

日本は添加物を1400種類も認可していますが、そんなに認可する必要があるのでしょうか。

穐山

外国より我が国は、既存添加物は多く、また、加工助剤や栄養強化物も添加物ではありません。また、ヨーロッパでは香料も含まれていません。そういった点で諸外国より多く認可しているように見えるのかもしれませんね。

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