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第30回サイエンスカフェ「附属牧場の先生に聞いてみよう!(続編) ─救出された被ばく豚たち。それから」開催報告

掲載日: 2018年3月29日

話題提供者の李さんの写真

話題提供者の李さん

2017年11月21日(火)食の安全研究センター第30回サイエンスカフェ「附属牧場の先生に聞いてみよう!(続編)─救出された被ばく豚たち。それから─」が開催されました。2011年東京電力福島第一原子力発電所の事故後に附属牧場に救出された豚たちの健康観察や牧場のその他の動物たちの状況について、2016年に開催されたサイエンスカフェに引き続き東京大学大学院農学生命科学研究科 附属牧場助教 李俊佑さんより紹介するとともに、継続的に積み上げたデータからわかってきたことなどを話題に、参加者との対話が進みました。

○第30回サイエンスカフェ配布資料につきましては、後日ご案内いたします。
※以下、記載がない場合の発言は関崎氏のもの
※質疑応答は一部抜粋

東日本大震災の後に起きたこと、乳牛たちの様子

    2011年3月11日、東北の大きな地震と大きな津波のあと、東京電力第一原子力発電所の事故があり、放射性物質が飛んできました。われわれの牧場は(地図を指す)このあたりですけれども、この図(原子力規制委員会の「放射線モニタリング情報」)の色分けでは牧場の付近も放射性物質がちょっと落下したということになります。ここが私が勤務している附属牧場です。

    • 附属牧場から原子力発電所は地図ではこのくらい(地図を指す)の距離で、2 号機爆発の際の風と地形による気体の流れで、放射性物質が飛んできたような形です。附属牧場は約0.1μSv(マイクロシーベルト)ぐらいの放射線に汚染されたような記録になっています。牧場よりもっとひどく被ばくしたところもあって、われわれの大学は柏のキャンパスもありますが、柏キャンパスのほうが牧場より多少福島からは離れておりますけれども、地図から見て濃度的には被ばくの程度は牧場よりちょっと重かったかと思います。
    • これは実際のデータですけれども、われわれの牧場は、甲状腺に関係あるヨウ素では5.13KBq/kg(キロベクレル)。柏キャンパスの場合は17.24となっていますから、牧場より3倍以上になったわけです。牧場のほうが福島により近いんですけれども、汚染濃度は柏のほうが、牧場より強かったということが印象的です。一方で、本郷と牧場はそれほどの差はないと思います。
    • そういう状況で、放射性物質が落下しましたので、牧場にも多少の影響があったかと思われます。特に牧場の敷地は36ha、東京ドーム8 個分ぐらいの広さがあり、その半分以上が牧草地です。普段牛とか馬とかヤギたちは牧場で屋外に放牧されていて、家畜たちが自分たちの
      好きな草を食べたり、排泄したりしているんですけど、牧草地のところは放牧していません。放牧しないで、牧草をつくって収穫し、それを秋から春まで蓄備して、家畜に与えたりします。そのための牧草地です。
    • イノシシの被害もあります。1989年、バブルの盛りの頃には25万頭くらいだったのが、今88万頭といわれるほど、シカと同様なカーブで急増しています。もともとそんなにたくさんいなかったのが、ものすごく増えています。
    • この牧草地での牧草の生産は、今の時期、すでに播種が終わっています。福島第一原子力発電所の事故の前の2010年秋に播種が終わったあと、明けた2011年に原子力発電所事故が発生しました。牧草がある程度伸びたところに放射性物質が落ちてきたわけなんです。
    • 牧草は通常5月中旬ぐらいになったら刈り取ります。2011年も同様で、この年は汚染したものを刈り取ってもらって、回転して、乾燥して、このロールベールラップをつくったわけです。通常はラッピングした牧草は1 カ月ぐらい置いておいたら中で発酵するんです。乳酸発酵です。一度発酵してしまえば、2年間保存がききます。そうして安定した栄養分を継続して家畜に与えることが可能なので、いつもこうした生産システムを取っているわけなんです。
    • 残念なことに、2011年に刈り取った草は汚染されていましたので、その草を用いて、1つは、乳牛に与えて、その汚染物質がどのぐらいミルクに移るかを研究しました。もう1つは、豚に与えて、豚の臓器、肉にどのぐらい移るかを研究しました。
    • 当時の刈り取った場所を調べてみると、牧草地は、2011年4月8日、土の表面10センチだけを取って測りましたら、ヨウ素131の濃度は3,500Bq/kg(ベクレル・パーキログラム)くらい、セシウムは1,700Bq/kgぐらいありました。牧草も刈り取り前でしたので、草を取って測ってみました。するとヨウ素が測れたんですね。4月8日、半減期が8日ということで、すでに何サイクルも過ぎていると思うんですが、それでも0.92KBq/kgというデータが取れました。セシウムは草の上に残っているものは0.90Bq/kg。その同じ牧草が、ヘイレージになると濃度が倍ぐらいになりました。
黒木

ヘイレージというのは具体的にはどういうものなのでしょうか。

牧草を刈り取ると、当初水分は大体9割ぐらいです。その時の濃度が先ほど申した程度なのですが、ヘイレージのヘイは乾燥という意味で、刈り取った草を乾燥させて半分ぐらい水分を飛ばします。水分を50%まで飛ばしたから、約2倍ちょっと濃度が上がったわけですが、ヘイレージを測定した頃はすでに6月でしたので、ヨウ素は検知できなかった。半減期が短いものはすでに見えなくなっていたんです。

黒木

今おっしゃった値は、高い、低いで言うと、やっぱり高いと考えていいんですか。普段事故などでの汚染がなければ、こんな値は出ないんでしょうか。

出ないです、普段は。でも高いとも言えないんですね。食品安全基準からしたら、200Bq/kgですので、それほど高くはないですが、事故がなければ、大体0だったわけです。

    • この汚染された草を、ミルクを絞っている牛に与え、ミルクにどのぐらい移るかを調べました。すると、汚染飼料を与えたら、急に数値が跳ね上がったんです。それで、われわれはこの汚染飼料を与えるのを止めました。止めると下がるのもすごく早いんですね。汚染飼料を止めるのを続けてみましたが、2 週間ぐらいでは0 には戻っていなかったというのが結果です。ただ、急激に上がった時と、汚染飼料をやめても0には戻らないという時の放射性セシウムの検出の原因は異なると考えています。対照的に非汚染飼料をずっと投与したものは、0に近いところに留まっていたという結果です。
    • この結果から、屋内で飼育し、汚染されていない餌を与えて、水も汚染されていない地下水
      であればミルクは汚染されないというのがわかっていただけるかと思います。関東近辺はほ
      とんどこの屋内で飼育する形態が多いんですね。牧草も輸入飼料や北海道からの乾燥飼料が
      多く、濃厚飼料はほとんど輸入飼料ということで、言葉遣いは悪いかもしれないですが、ラッ
      キーと言えばラッキーでした。関東のミルクはそれほど汚染されてないということが、この
      結果から理解していただけるかと思います。
    • そんなことがあって、自己生産の牧草は汚染されていますし、牛にはほかの草がないので、ミルクをずっと廃棄してしまって、牧草も廃棄する形になったんですね。でもその後牛に部屋を充てていただいて、飼育は屋内でする形になりました。
    • そうすればミルクの汚染は避けられるだろうと結論を得ましたので、飼育はそのようにすることになりました。それまでは牛には庭で運動をさせて、多少の草を食べるようにして、ミルクを絞る時間には牛が自分で部屋に戻ってくるようになっていました。なぜなら、部屋に戻ってくればおいしいものをもらえるからです。おいしい餌に釣られて、ミルクを絞る時間帯に部屋入ってくれていたんですが、今はその必要がなくなってしまったんですね。いつでも部屋につないでおけるし、牛は与えられた餌しか食べられない。絞る時間も、われわれがいつでも絞れるくらいになっているので、その意味では安全確保ができたと思っています。

救出された豚たちのその後

    ここから豚の話になります。先ほど汚染された草がありましたが、われわれミルクの研究で、1つ非常に残念なことに後から気付いたんです。汚染された飼料を与えてから、ミルクしか絞ってなかったんですね。血液中にどのぐらい入ったか見てないし、臓器にどのぐらい入ったか見てなかったんです。そこで、せっかくだから、この飼料を使って、豚の臓器とか肉にどのぐらい移るのかというのを見る研究を計画しました。

    • その話をする前に、救出された被ばく豚の話をします。事故のあった原子力発電所の北北西約17km の小高区の一関というところにある養豚場の豚26 頭を救済することになりました。
    • この豚たちはずっと屋内で飼育されていました。ですからお話ししたわれわれの牛のやり方と似ています。豚は、餌は濃厚飼料しか食べないですし、水も地下水なんです。ですからこの時点でのわれわれの考え方では、汚染されてない。当初はそう考えました。それで、われわれもその豚を救済することが許されたんですね。
    • 豚たちの水は地下水でしたが、地下水は汲むのに電気が必要です。それで、発電所の事故の後停電にならなかったかと確認させてもらいました。飼い主さんからは停電はなかったという答えでした。東北電力にもその時停電しなかったかどうか、問合せのメールを送りました。すると、東北電力から電話があって、「調べてみたら停電にはなっていませんでした」という答えをもらったんですね。さらに、その答えをメールでもいただいて、確実に停電がなかったと確認できました。つまり当時の豚舎で地下水の汲み上げには問題なかったというです。
    • この牧場の豚は、ちなみに餓死が1頭もなかったというのも確認が取れました。餌は、十分とまでは言えなくとも餓死することがない程度にはあったということは確認が取れました。
黒木

あんなに原子力発電所から近かったけれども、一応汚染はないだろうと考えられたので、救出ができたということですね。

    • 救済した豚は26頭で、品種的なバランスは取れてないんです。数もバラバラで、品種ごとのメスとオスのバランスも取れていません。なぜだろうと確認したら、豚舎は警戒区域内なので、そんなに長く滞在したくないですし、出口に近いほうの豚から、出てくる順に取った結果だという話なんですね。普段は自分の部屋からなかなか出てこないんです。ご存じないかもしれないですけど、いくら出そうとしても出てこない。出すのにすごく苦労するので、出るものから取ったのがこの26頭だったんです。オス10 頭、メス16 頭でした。
    • われわれの牧場に移ってから、約3カ月ぐらい経った2011年9月9日、1頭が病死しました。病死でしたけど、内臓を調べてみようということになりました。そんなに重い気持ちはなかったんですが、臓器を取って、中のセシウムを測ってみたら実際に放射性セシウムが残っていたということがこの研究の始まりだったんですね。
    • 部屋の中で育ち、汚染されていない餌を食べ、汚染されてない水を飲みました。だから汚染されてないと、ミルクの研究でわかったんですけれども、この豚たちもそのように飼育されていたから放射性セシウムはなくなるはずなのに、出てきました。画面のグラフ一番左が1頭目で、順に2頭目、3頭目となっています。2頭目が死んだのは9月30日で、3頭目、この緑の色で示しているのは、死んだのはお正月なんですよ。ですからわれわれのスタッフもお正月にも出てもらって、臓器採材してもらったんです。
    • この研究で、2012年1月1日に死んだ豚も、約9カ月経っても体内には放射性セシウムが残っていたとわかりました。思いがけないきっかけではありましたが、彼らの体の中に放射性セシウムが入っていることと、何らかの形でこれは汚染されたのだというのがわかりました。
ファシリテーター黒木さんの質問でよりわかりやすく、写真

ファシリテーター黒木さんの質問でよりわかりやすく

黒木

救出された豚のうち、9 頭は亡くなってしまったということですね。

このデータを出した時というのは2013年8月7日で、グラフからは時期が少しずつずれているので1頭ずつ下がってくるのが大体わかっていただけるかと思います。たまに2頭目のほうは高かったりするんですけど、これは個体差だと思うんですね。後で死んでも、ちょっと個体的にはこっちのほうが重かったりするから高かったんだと思うんですね。

    • われわれは実際に、現地に行って、現地の豚も採材させてもらったんです。原発事故でそのような事態になった現地に行って。そうしたら、やはり1頭、1頭違います。福島現地で採材した豚は3 頭で、ここにあるのは3 頭のデータです。
    • われわれの死んだ豚たち、東大牧場に移してからの豚ですけれども、同じ時期を過ごしてきての9月なんですね。けれども、現地の豚のほうがかなり高かったんですね。1,500Bq/kgあるものもあれば、高いのは4,000Bq/kg を超えていますよね。このようにやはり現地のほうは高かった。6月に救済した豚たちはだいぶ下がっていますけれども、現地の豚のほうは、どんな飼育方法を取ったかわからない、もしかしたら放牧させたかもしれないですが、かなり高かったというのがグラフでわかると思います。
    • 臓器別に測ったグラフです。順に生殖器、脾臓、肝臓、腎臓、大腰筋。大腰筋というのはヒレです。体内の一番奥の筋肉ですけれども、棒グラフの1本が豚1頭に対応していて、棒が1個足りないところは去勢してしまった豚なので生殖器がないということです。また、尿からとったデータでは、尿は、死んだ豚では取れなかったとか、血液を取っていないので血液のデータが取れてないところもあります。
参加者

現地で採材した豚というのは同じ地域の豚ということですか。

まったく同じ地域ですね。

黒木

この結果を見ると、この大腰筋が一番値が高く見えますが、そこに放射線、放射能が集まりやすいというふうに考えられるんでしょうか。

そこはわれわれもよくわからないんですけれども、大腰筋という腰を固める筋肉が奥のほうにあるんですけど、一番奥だからリリースが一番遅いんじゃないかと思うんですね。

黒木

放出されにくい。

血液の中に徐々に出していくと思うんですけれども、大腰筋は筋肉であって、ほかは筋肉ではない。筋肉もなくはないとしても、筋肉そのものじゃない。大腰筋は普通に筋肉ですから、それでこれは遅くなっているのかなと感じています。

    • これはわれわれの反省点なんですが、牛は屋内で飼育し、汚染されてない餌を与え、汚染されてない地下水を飲ませました。そして出てきたのは汚染されてないミルクだったんです。豚もそうして屋内で飼育して、地下水で、餌はパイプラインで受けてるので、まったく汚染はなかったんですね。ところが、お気づきになったかもしれませんが、窓が開いてるんですよ。カーテン式なんですね。(写真を提示)事故当時は人が行けないので、アンモニアが溜まってしまいます。だから、ずっと開けっ放しにしたというのが飼い主さんからも確認が取れています。つまり、豚舎の空気は外と同じようなものだったんですね。
    • ほかの養豚場だったら、ベンチレーションというのがありまして、1日24時間空気を新しく入れてるんですね。ですから外の空気が汚染されてしまったら、空気はずっと汚染されたままで入ってきてしまうんですね。つまり空気と一緒に体内に吸い込んだんですね。
    • それで、体内から全部クリーンアップするのにどのくらい時間がかかるかを調べてみたわけではないんですけども、死ぬ順番に採材して調べてみました。そうしたら、少なくとも2012年1月9日までは体内に残っていたんですね。その後はしばらく間が開いて、次に豚が死んだのは2012 年9 月でした。間にどんな変化があったのかはわかりませんが、この時点では0 になっ
    • たという話なんですね。データを見るために、救済した豚は1頭も自分では殺してないんですよ。だから病死するたびに、採材して調べているわけなんですね。2012年の1月〜9月この間には病死がなかったので、この時点ではすでにもう完璧になくなったというのが結論になる
      かと思います。
    • さっきの反省点については牛もそうなんですよ。空気を吸うのは避けられないんですね。ですから豚が空気を呼吸して汚染されたということは、先ほどのわれわれの豚の測定結果でわかっていただけるかと思います。このことはこの豚で研究したことで初めてわかったことなんですね。
    • これらの豚から採材して測定した結果は全部呼吸で汚染された結果になるかと思います。スタート時点で0じゃなかった。非汚染飼料を食べさせて徐々に下がったんですけども、0まで戻ら
      なかったという結果になるかと思います。これは多分、先ほどご質問ありましたように、筋肉とか臓器に入ったものが徐々にリリースしますので、血液の中に全部排出するんですけども、0 になるまではまだ時間が必要だったんじゃないかとわれわれは思ってます。
    • 2014年5月、ようやく許可をいただいて、現地の養豚場での調査をさせていただきました。豚の生産はまた始まっています。今はグーグルからも写真が見られます。かなり規模が大きな養豚場ですが、いろんなところで土を取らせてもらって、セシウム濃度を測ってみました。やはり多少高かったですね。ここの社長さんはよくわかっていて、この辺が一番高いだろうと言って奥の屋根の上のものを取って持ってきてくれたんですが、測ったら10万Bq/kgもあって、やはり一番高かったんですよね。

寿命や体重の変化、繁殖や子ども世代の状況は?

    救済した豚は26頭でしたが、今は24頭が病死し、2頭だけになりました。救済時のオスの年齢は3.7歳で、メスは4.8歳ですね、ちょっとメスのほうが年上だったんですよね。平均寿命は1歳違うんですが、オスのほうがちょっと短かったというのが結論ですね。しかし、救済後の寿命は、2.84 歳と3.29歳。救済してから牧場で生きた年数はあまり変わらない。

    • 今は生き残っているのは、なぜか2頭ともオスで、救済時もちょっと若かったんです。1.8歳と7カ月齢の豚でした。24頭は死亡して、メスは16頭だったのが全部病死しました。オスだけは、10 頭の中で8 頭病死して、2 頭が残っております。
黒木

これは救済してから生き延びた年数ですか。3.7に2.8を足したぐらいの年齢生きたと。じゃあ、病死した豚も、平均すると一般の平均寿命と同じぐらいは生きたということになるんですか。

一般の豚と比べたら少し違います。現段階では少し短いという感じ。難しい質問ですが。この豚たちの子どもをいっぱい作らせてもらいました。遺伝的な変異などを調べるためにその子豚たちの遺伝子の放射線被ばくレベルを調べましたが、まったく汚染されていませんでした。

    • その子豚たちに汚染された餌を与えた場合、体内にどのぐらい蓄積されるんだろうというのを調べました。牧場には牛、馬、ヤギ、豚の4種類の家畜を飼育しています。牛、馬、ヤギはみんな草を食べますが、豚は通常濃厚飼料だけなんですね。われわれが持っている汚染飼料は例の草です。でも豚は意外に雑食で草も食べるし、根茎類も食べたりする。それで、実験は汚染された牧草でも可能だというので計画を立てました。
    • 草は細かく刻んでもらいました。そして、作ってもらった袋で毎日測って豚用の濃厚飼料と混ぜたものを約1 ヵ月あげました。
    • 2種類の実験を計画しました。1つは成豚について。体重241kgの成豚で、体重はずっと維持するレベルです。太らせてしまったら子どもが産めなくなるので、ふつうこの体重を維持しています。餌を制限しているんです。だから与えるとすぐ食べ切ってしまいます。
    • スタート時点の体重です、2013年11月5日、平均体重は241kgですね。それが1カ月経って243kgですね。ほとんど体重は変わってないんです。でもこれは半年経った2014年5月22日ですけれども、体重は238kg ですね。ずっと維持していて素晴らしい飼育システムです。
    • 一方、育成の場合は体重は9月3日25kgと小さい、4カ月齢でしたが、2カ月経ったら57kgになりました。32kg増えていますね。増えていますが、これもある意味では制限しているんです。この時期、豚は1日800gから1kg増えるんです。でも、餌を制限して伸ばさないようにしているんです。さらに8 カ月齢後です。2014 年5 月22 日は131kg ですから、まだ成豚にはなってないんですね。でも投与する餌の量は同じだったんです。同じ量で、成豚は成長しないが、育成豚は成長できるんですね。大きい豚は維持するために餌のエネルギーが必要。でも、育成豚は維持するために必要なエネルギーが小さい分、残った分は成長に使えます。
黒木

同じ量の餌でも、成豚では変わらないけど、子豚、育成の豚は体重が増えていく。

そうなんですね。体重には維持代謝ってありまして、その維持代謝分は太らない。でも、維持代謝を超えたら成長代謝になりますので、成長につながります。

    • 実験結果です。成豚241kg の豚の結果は4 頭しかなかったので、マキシマム(最大)のところから測ってみました。コントロールは置いていません。なぜなら食べさせなければ、セシウムが入らないのは皆さんご存じだったと思いますので。1カ月食べさせたら、これ上がるんだろうというのが予想される結果ですね。毎日620〜709Bq/kgを食べさせるように牧草を入れました。そうしたら肝臓、腎臓、生殖器、オスメスありますが、そして大腰筋、甲状腺、血液、尿、胸腺、脛、大腿骨など骨にどのぐらい入るかも調べました。一番高くてどのぐらいまで上がるんだろうと思って測ると、上がってはいたんですけど、骨には入らないんです。
    • 胸腺のところは、3カ月齢の時は下がってきます。でも、骨は上がっていくんです。すごく不思議な結果だったんです。この時に一番高いんだろうと思ったら上がらなかったということで、骨に入るには、多分時間が必要なんじゃないかと思うんですね。口から入る分はなかったんですけれども、他の臓器から排出する分が血液の中に入って、骨に移るんじゃないかとも考えられるんですね。ですから後から上がったんですね。6 カ月齢では脛に一番高くなっています。このことから骨に入るのはちょっと遅れてくるのではないかと、この研究でわかっていただけるかと思います。
黒木

甲状腺が6カ月で増えているということですが。

いい質問です。多少個体差が出てくると思うんです。高くなっているものもあります。1つには餌をあげるのが4 頭同じ部屋で、個々の食べる量や食べるペースが同じではなかったり、体質の違いもあるのではないかと思います。調べるのも毎回1頭ずつしか落としてないので、その個体差かなとも思うんです。ただ、流れ的には大体下がってくるんですね。ただ甲状腺は個体差的に高くなっているんじゃないかと思われます。

黒木

この値は4 頭の平均なんですか。

違います、1頭ずつの値です。個々に毎回違うわけです。4頭で実験して、毎回落とすのは1頭だけでしたから、平均値ではないです。各回1頭ごとに解剖して調べた値です。全部並べると、1、2、3、4 頭分になります。このように下がっていっているんですね。

黒木

わかりました。そうですね、1頭目はやめてすぐの値で、2頭目はやめて1カ月後、3頭目が3 カ月後、4 頭目が6 カ月後。たまたまここは高かったんだろうと。

そうですね。ただ、これは前の豚にもありましたよね。1カ月前に死んだ豚と、1カ月後に死んだ豚の値が高かったりする、それは多分個体差かなとわれわれは思っております。

黒木

骨に行くのが遅いというのは、3 頭すべてそうだったことからこれは個体差ではないと。

そうです。胸腺はなかなか取りづらかったです。胸腺というのは大きくなったら豚の体から退化してしまうんですよね。それで記録が取れなかったりするので、ここでは参考だけなんですけどね。脛と腿の骨なんですね。

    • こちらは若い、育成という豚です。育成ですけれども、これには対照群を置きました。対照群を置いたのは、1つは、血液を見るためです。成長段階で血液成分はお互いに変わってくるんですね。ですから若い時と8カ月後だったら、血液成分は変わってきますので、そのためにこれは対照群を置いてやらせていただきました。これも大体同じ量ですけれども、体重は小さいのにこの同じ量を食べさせたんです。そうしたら濃度が、先ほど45ぐらいだったんですが、こちらは100 以上にもなったりする。同じ量食べて、小さい体だったので濃度が高くなったんじゃないかとご理解いただけるかと思います。肝臓では45、50くらい。若い豚ではそれほど上がらなかったんですけれども、腎臓で高くて100 を超えたというのがあります。
    • 同様に骨のほうもストップ時点でも上がっているんですね。脛と腿の骨、両方上がって、長く続いているんです。8カ月齢になっても骨には残っているのが確認できますね。全部8カ月齢で確認されました。
参加者

対照群を置いたとおっしゃいましたが、リファレンスはどうなっていますでしょうか。

対照群は血液成分を見るためだったんです。

参加者

具体的に飼料は、放射線飼料を与えないという意味なんでしょうか。

みんな1頭ずつです。豚をそんなに大量に飼育するためのお金がなかったためです。その
ため、実際いまだに血液成分を測れていない部分もあるんですよ。それで、対照群は全部1頭
ずつ。番号は個体番号です。ですから厳密に言えば、有意差検査ができないんですよね。

    • ただ、放射線については有意差検査というよりも、投与しなければ数値が上がらないのは当
      たり前ということもわかりました。ただ、成長段階で牧草を与えるから対照群を置いてある
      んですけども、牧草を入れないのであれば、実際対照群になる個体はいっぱいいるわけなん
      です。飼育している豚は対照群になれるわけです。しかし、ふだん飼育されてる豚たちは、この
      牧草を与えていないので、牧草を与えるということで対照群を参考のために置いたということです。
黒木

このグラフの中で対照群のバーは、入れていないんですね。

検出限界以下だったということで、入れていません。

    • 先ほど繁殖の話がありましたけれども、東大の牧場へ来てから3カ月ぐらい経って、体調が落ち着いて、体重や状態がよくなった頃に繁殖を始めたんですね。この豚たちの繁殖によって、
      1つには子孫に与える影響を調べるため、そして正常な繁殖能力を持っているかどうかを調べ
      るためです。体重が重くなりすぎてしまってからでは難しいということは、皆さん多分ご存
      じかと思います。重くなってしまったら、人が手助けしなければなかなかできなくなってし
      まいますから。

血液の継続的分析からわかること

    おかげさまで、豚の繁殖はうまくいきまして、立派な豚が生まれてきました。ここでわかっ
    たことは、体重の変化についてです。図の線の1本1本はそれぞれ1頭の豚の体重変化です。
    16頭いましたので16本の線があります。毎月豚の体重を測ってその変化を見ます。一番困る
    のは体重が増えすぎて繁殖できなくなることですが、この体重だったら十分だろうということ
    で、繁殖と体重の変化を見ていきました。

    • マークがあるのは分娩した豚の意味ですが、ご覧のとおりほとんど体重に影響されずに分娩がうまくいったことが確認できました。結果的には救出豚16頭のうち、繁殖能力が回復したのは7 頭で、9 頭は繁殖できなくなりました。7 頭が15 回分娩して159 頭の子豚が生まれました。1 回分娩する豚もいれば、5 回分娩する豚もおりました。メス・オスの割合はほぼ半々です。
    • この豚たちから、6頭のメス豚を残し、その豚からまた繁殖して子どもを作ってもらって、同じ豚が子孫に与える影響を調べました。6頭で10回分娩して104頭生まれ、メス・オスは半分ずつでした。連れてきた豚のうち繁殖的には7頭しか回復できなかったという結果ですけれども、子どもの6頭がまた分娩し、6頭のうちの4頭は生き残っています。先代の16頭は全部死んでしまったんですね。
    • 結果です。ピンクのラインは女性ホルモンです。妊娠できる豚は太いラインでより上に行く。女性ホルモンが太いラインより上に行かなければ妊娠できていないという形になっています。ピンクラインの上にあるということは、正常な卵胞があるということです。女性ホルモンが上がっているところが、実際この豚はこの間には1 個しか必要ないのに、3 つもあるわけなんですね。3つ山があるというのは、この山の時、正常卵胞があるということになります。一方、青いラインは妊娠を維持するためのホルモンで、ピンクのラインが1回上がったら青い線が上がってこなければならないんですが、上がってこないから、ピンクが何度も上がり続けるんですよ。
    • 青いラインのホルモンは、ある意味ピンクのほうを抑えているホルモンなんですね。もう正常に1 回排卵しましたから、そろそろ妊娠してもいいですよと抑える役割をするんですけども、これがない限りはピンクのほうが増えてくるんですね。それが、この豚がずっと発情は見えるんですけれども妊娠できなかった原因なんです。
    • 1 種の卵胞嚢腫または体に炎症が起きているんですね。でも炎症があるなら黄体を潰したホルモンが出てくるんですね。それならこれは上がらなかったんじゃないかと思われます。
    • また、別の豚ですが、ピンクの太線の上に全然出てこなくなっていますから、これは正常な卵胞がないということになるかと思います。
    • 別の豚の場合ですが、ピンクがきれいに上がって、青いほうも上がっている。今お話しした理論のとおりなら当然妊娠するところですが、上がったのはこの1 回だけで、次からはなくなって妊娠できなくなってしまいました。ちょうどデータを取った時は状態がよかったんですけど、次から発情が来なくなりました。これらのデータの6 頭は全部妊娠ができなかった豚なんです。
    • 次にお示しするデータの豚は全部妊娠できた豚です。ご覧のとおり、ピンクが1 回上がったら、青も1回上がる、青い線がこんな高く上がるんですね。これは抑えられるので妊娠が確立できるんですね。こちらのデータも同じです。こちらのデータの4頭は全部分娩、子豚ができた豚
      たちなんですね。このように血液中のホルモンのデータから卵巣が正常か、なぜ妊娠ができないか大体結論がわかってきたかと思います。
    • 資料画像を共有しながら理解を深めます

      資料画像を共有しながら理解を深めます

    • また別のデータの豚は、さっきの例とは逆に、分娩してからまったく卵巣が動かなくなってしまっています。一度ピンクが上がり、青が上がり1回分娩して、その後は上がってこない。卵巣が止まってしまったということで、その後は妊娠できなくなりました。後に、この豚は病死してしまうんですけども、その卵巣を取って調べてみたんです。そうしたら普通妊娠できる豚は写真のようにきれいな卵胞が見えるんですが、こちらの豚は卵巣が止まってる状態で見た目が違います。このことは、われわれが血液を採って分析した結果と全く一致したわけです。
黒木

妊娠をするのには、この2つの種類のホルモンが大事で、さっきの図で言うと、ピンクのが上がってから青いラインが上がるのが通常。でも測ってみると、妊娠できない豚はそれがうまくいってなかった。正常じゃなかった。

少なくとも片方が正常じゃなかったということになるかと思います。

黒木

実際に卵巣を見てみても、卵胞が全く見られなかったということなんですね。

参加者

これは被ばくしたことの影響が出ているという解釈なんでしょうか。

それについてはこれからお話ししたいと思います。

    • これらの豚については、せっかく血液を採ったので、後に血液成分を分析してみました。これもまた1つすごく意外な結果になるかと思います。この全部のメスのリストです。上から順番に年齢順となっていて、救済した時の年齢順も書いてあります。黒いラインを引いていますがラインの上のほうが繁殖できた豚たち、下は繁殖できてない豚なんです。何できれいに割れるのか。実は年齢できれいに分かれてるんですよ。4.8と4.9、大した差じゃないんです。たまたまだと思うんですけども、上の豚は全部繁殖できて、下の豚は繁殖できていない。偶然もあるかもしれませんが、ある程度年齢の影響はあるんじゃないかと思われます。
    • 4.9歳というのは繁殖できるリミテーション(限界)かと思ってしまいますが、そうでもありません。5.1歳まで繁殖している豚も、7.3歳まで繁殖している豚もいるわけですから、普通に考えれば全部繁殖してもおかしくない年だったということがわかると思います。ではなぜこういう結果になったのか分析してみました。
    • 血液成分をずっと調べてきましたから、ここでは白血球を見ていただければと思います。正常の豚、われわれの牧場の普通の豚の白血球の濃度、そして被ばくしたけれどもちゃんと繁殖できましたという豚の白血球の濃度、130 と125 ですから、大した有意差はなかったんです。でも、次が興味深いです。被ばくして繁殖できてない豚の白血球濃度は187まで上がっているんです。正常なこの豚では125。つまり、被ばくしたけれども正常な繁殖できた豚というのは白血球の濃度が低いんです。
    • 統計分析の結果、ここで有意な差が出てきました。先ほど申し上げた繁殖できた豚たち、そしてできていない豚たちのうち、繁殖できていない豚たちは何らかの影響で白血球が上がっているということがわかっていただけるかと思うんですね。白血球が上がるというのは、大体炎症か何かで、体の中で何か異変があるということを示していますね。それで繁殖ができていない。しかし先ほど申し上げたとおり、炎症があれば黄体ができないはずなんです。それで何かの関連づけがでないかと、考えてみました。
    • 白血球の3週間の変化を見ました。採血を追跡的にやってきたので見てみると、20日間の白血球の濃度は、繁殖できている豚たちでは変化はそれほどないんです。でも繁殖できてない豚たちは白血球の変化が著しく激しくなっています。白血球の変化は、ご存じのとおり、免疫
      力と関係があるんですよね。それでこういう結果につながったのかなと思います。
黒木

比べてみると、繁殖できてない豚の赤い線は、この上の繁殖できた豚の白血球の数とあまり変化がないように見えますけれども、やっぱり反動、変化が大きいというのも1つ要因かなということですか。

そうです、変化が大きいということは平均値を取ったら高くなってしまうんですね。高いところは350を超えているんですけど、やはり平均値が高くなってくると思うんですね。もしこれが1回だけの検査でこういう低い状態の時期の時に取ってしまったら、平均値が多分低くなると思うんです。毎日取っているからこういう結果がわかってきたんだと思うんですね。ですからこの豚もまったく同じですね。毎日取ってるから、平均を取ったら、高い値が出てきたというのが結論的にわかっていただけるかと思いますね。

参加者

1 つ前のデータで、赤血球と血小板の数値がありましたが。

赤血球は、正常値は780ですけれども、ここは651で、ここも多少有意差はあるんです。

参加者

赤血球は有意差があるんですね。血小板は有意差がない。

赤血球は有意差があります。でもわれわれの問題提起では繁殖できない原因を調べてたので、これではちょっと難しいかなと思って。

参加者

白血球の変化というのは何から来てるんですか。

これは広島大学の先生のデータですけれども、リンパ球は、ふつう放射線を浴びたら下がってくるんです。骨髄の影響があった時には下がるんですけれども、次のデータにもあるように、リンパ球が一度減少しますよね。下がったら、病気にかかりやすいですよね。病気にかかった
ら、体が反応して白血球をいっぱいつくりますよね。だから、リンパ球が下がったところにいろいろな病原体が入ってきて、炎症が起きて白血球が上がったんじゃないかと、われわれは思ってるんですね。

    • 実際、病死した豚を解剖してみたら、体の中がすごく病気になってしまっていたのがわかっています。それは放射線ばかりとは言い切れないです。福島から牧場まで運ばれてくる段階とか、環境が変わっていろんなストレスが溜まってきたこととか、いろんな原因があると思うんですけども、とにかくリンパ球下がったことによっていろんな病気が出て、その影響で白血球が今度は上がってくるのではないかと思うんですね。解剖した時にとにかく炎症が多かったのはやっぱり結果的にはつながってると思うんです。

白血球の不安定さは炎症のせい?

参加者

変化が大きい、上がったり下がったりするのはどうしてなのかが、よくわからないんですが。

:われわれの体は、例えば風邪をひいたら白血球が上がります。ウイルスが体に入ったとなると、体がそのシグナルをもらって、攻撃し始めるので、白血球が増える、それが普通の反応ですね。

参加者

体調が安定してないということなんですか。

そうです。安定していたら、白血球はそれほど変わらず、正常値です。でも、何かしら炎症があった時は、白血球がグーンと上がります。

関崎

健康な人でも白血球というと、リンパ球の数と、いわゆる好中球の数、日内変動というのがあるんですけど。採血は毎日同じ時間にやっているんですか。

はい。作業時間が午後1〜3時に決まっています。ですが、白血球のデータも個体差がありますので、1回の採血ではなかなか言いづらいところもありますので、いっぱいのデータで平均値を取るという形になるかと思います。

黒木

被ばくと白血球の増加というと、どうしても白血病などを思い浮かべてしまいますが、白血球が上がったというのは、白血球の中でもどういうものが上がったとか、それが異常な白血球だったのか、正常な白血球だったのかとかについては、何か見られていますか。

異常な白血球というのは?

黒木

白血病の白血球というのは、通常のものと形態が違ったり、異常なものが増えてしまって白血球数が上がると思うんですけれども、そういう所見はありますか。

さっきのリンパ球と好中球と好塩基球を細かく調べているんですけど、全部有意差があるんですね。白血球の各サイズごとの数をの異なるものをカウントします。好塩基球、好中球など、3つに分かれてるんですが、これは全部で有意差が出ています。また白血球だけでなく、リンパ球も、全体的に上がっていいます。

参加者

今のはメスのデータでしたが、オスのほうへの影響というのは。

オスはあまり調べてありません。そういう準備が全くなかったことと、そもそも専門は栄養と繁殖だったので、繁殖では、オスは1頭さえいれば十分だということで。でもオスは、一応種付けには全部使えましたし、子どもは生まれていますから、射精能力と精子の能力は多分問題なかったんだろうと勝手に推測しています。

参加者

オスは白血球はどうだったんですか。

オスはちょっと比べてないんです。オスは、採血はしても対照群がないんです。オスを飼っている農場が少ないこともあって、比べる対照群がなかったので、そのままにしてあります。ただ、調べたデータだけで言えば下がっています。

    • もう1つ、放射線は今回被ばくしたこの豚たちで確認取れました。でも放射線の被ばくを受けたのならばと1つ気になって調べてみたんですけど、脱毛があるんですね。脱毛してるとすれば、被ばくされたら線量が大体3Gyぐらいまであるんですけども、これは発症の時期として2~3週間以内というのが人の場合なんですね。

一時的な脱毛も

    われわれの牧場に救済した豚たちは、記録にするために写真には日付を入れています。写真は2012年の8月ですから放射線事故が起きてから1年半後でこうやって脱毛現象があったことになります。写真は全部とってありますが、脱毛はこの時1回だけなんですよ。その前にも後もありませんでした。人の場合は2〜3週間の早い時期に脱毛があるとされていますけれども、この豚たちは被ばくから1年半たった頃にだけだったので、記録として残してあります。ですが、因果関係はよくわかりません。きれいにこのように毛が抜けてくるんですね。
黒木

これは全部別々の個体ですか。

全部別の個体です。

黒木

でも、同じ時期に起こったんですね。

そうです、確か8月だと思うんですね。

黒木

そうですね、8月、9月って書いてありますね。

好中球、血小板の変化なんですけれども、被ばくした場合に骨髄の障害で起きる
血液の変化は先ほど説明したようにいろいろ値が下がるんですけれども、大体回復するんですね。被ばくして3カ月、4カ月後で救済してるので、通常であれば、一旦下がった値が回復する時期に救済したんだと思うんですね。ただ、われわれの牧場に救済した豚の場合、少しこの時期とはズレがあるようです。

救済された豚たちの記録を今後へ

    ヨウ素131についてお話しします。放射線というのは、大体4種類、アルファ線とベータ線とガンマ線と中性子線があるんですけれども、アルファ線というのは紙1枚で止められる、だからあまり飛ばないんです。パンチ力は大きいけど、これしか動かないと理解していただければと思うんですね。

    • ベータ線はアルミのホイルで数ミリでシャットダウンできるんですね。アルファ線よりはちょっと飛ぶんですけれども、ガンマ線にははるかに及ばない。ですから、この辺にあるだけでは全然怖くないわけですね。アルファ線もこうやって怖くない。でもガンマ線は、50センチのコンクリートでも、遮蔽できないぐらい強いんですね。
    • 外部被ばくだったら、一番怖いのは中性子線ですね、で、ガンマ線、ベータ線、アルファ線は一番飛ばない、飛べないから、遠い存在で怖くないという印象ですが、内部被ばくしてしまったら、一番怖いのはアルファ線とベータ線。飲んでしまったらこっちのほうが怖いですね。重いですけど短い距離しか飛ばない。でも体内だったら、短い距離も体内ですから怖いんですよね。そこが大きく違うかなと思います。
    • セシウムの場合、われわれが体に吸い込んでも、体の中で組織の一部になって機能性を持ったりすることはないと思います。でも、ヨウ素は甲状腺ホルモンを生産するのに必須です。ただ、そのためにわれわれが普段摂っているのは原発事故の直後問題になっていたようなヨウ素ではない。そもそもヨウ素は同位体が37種類くらいあるらしいんですけれども、その中で一番安定しているのは127なんですね。ですからいくら取っても、それは放射能を持ってないから安全です。
    • でも、今回原子力発電所の事故で、原子力安全保安委員会のデータではキセノン、そしてヨウ素の131などが計測されています。これはベータ線を飛ばしているんですね。ベータ線ということは遠くへは飛ばないですけど、吸い込んだらよくないということです。放出されたという数字を見ても、ピンと来ないかもしれませんが。
    • ヨウ素というのは半減期がすごく短いんです。8.02日ですから、数カ月経ったら大体消えてしまうんですね。残るのはキセノンになります。われわれは4カ月後に救済していますので、ヨウ素の影響を調べるというのは不可能だったんですね。
    • どうやって今度の放射能事故について、この量を推定できるんだろうと、いろいろ論文も調べました。日本は素晴らしい施設があって、国際放射線監視機関がおかれています。1日24時間、空気中に飛んでる放射性物質を取って調べているんですね。今回のような事故のためということでなく、いろんな国で原子力開発や核実験などをしてますので、それが空気中に飛んだりしている、それをチェックするための機関ですね。
    • この機関で、福島の事故があった際に取られたデータがあります。3月12日に1号機が爆発しました。監視機関がおかれている高崎は215キロ離れていますが、ここでこういう高い濃度のヨウ素が取られているんですね。多分、推測ですけれども、福島の原子力発電所の事故から飛んできたものだろうと、時間的にこう予想されるんですね。
    • 3月21日、22日にもデータが記録されていますが、高い濃度になっています。これは何らかの形でまたそこで爆発があったんじゃないかとも推測しているんですが、一番高い濃度で飛んでくるのは実はヨウ素131だったんですね。飛んでくるものは、われわれが吸ってしまったら、体内に入ってしまうんですね。それが内部被ばくにもつながるんじゃないかと思ったんですが、住んでた豚たちがどのくらい吸い込んでるだろうというのは、なかなか難しいですね。
    • 結果的に、高崎までこんな高い濃度が飛んできました。我が牧場もこういうのを測っておりました。でも、こういう飛んだというのが確実に出てきたということになりますので、救済した豚にはどのぐらいあるんだろうというのは、これからも調べさせていきます。
黒木

最後に、先生は放射線が豚に何らかの悪い影響を与えるとお考えでしょうか。

それは一番難しい質問であるし、一番答えづらいところだと思うんですけども、先ほど申し上げたとおり、この豚たちは輸送段階でもいろいろなストレスがあったと考えられます。特に、豚って意外にすごく繊細な動物なので、そのストレスがどのぐらい溜まっているか。また、一時は餌もそんなに十分ではなかったということ、地震の際がどのぐらい揺れたかということもありまして、それらが影響を与えた度合いはよくわからないんですね。

    • でも明らかになっているのは、その豚たちはそこで空気を吸って、ある程度は放射線の被ばくを受けたというのは間違いないだろうと思うんですね。また、この実験では結果的として、対照群はずっと置いてないわけです。被ばくした豚と同じ条件にいた豚はほかにいないわけです。つまり、われわれはすごく大事な資源動物を救済して受け入れさせてもらった。それで何らかの形でデータを残したいということで、われわれは調べてきているんですね。
    • これらが将来的に参考データになれればと思ってやってるんですけども、この結果で、必ずしも放射線と結び付くというのはなかなか難しい結論になるかと思うんです。被ばくした量もそれほど多くないことは、データの通りです。ですからそれで理解していただければと思います。
    • (完)

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