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第31回サイエンスカフェ「聞いてみよう!─食べて安全?植物がつくる化学物質─」開催報告

掲載日: 2018年9月28日

話題提供者の浅見さん

話題提供者の浅見さん

2017年12月12日(火)食の安全研究センター第31回サイエンスカフェ「聞いてみよう!─食べて安全?植物がつくる化学物質─ 」が開催されました。東京大学大学院農学生命科学研究科 応用生命化学専攻教授 浅見忠男さんより、植物が自らを守るためにつくりだす様々な化学物質、私たちが気づかずに日々食材として口にしているそうした物質は果たして安全なのか、科学的見地からデータをもとに紹介。安全とは、リスクとはについて、考え方を共有し、改めて安全・安心な食べ方等について語り合いました。

○第31回サイエンスカフェ配布資料(pdf)
(クリックすると開きます)
※以下、記載がない場合の発言は浅見氏のもの
※質疑応答は一部抜粋

安心? それとも安全?

    「食べて安心?植物がつくる化学物質」というテーマなんですが、本当に安心なんだろうかと
    いうことを、サイエンスカフェですので、ちょっと科学的に、まずは「安心って何?」という
    ところから入ってみたい。

    • 植物は、光合成で絶えず取り込んで、いっぱい化学物質をつくるんですね。デンプンから何から。人間とは違って本当にいろんな化合物をつくります。その中には時々毒性のあるものもあります。今日はそういうものを食べて安心なのか、特に皆さんが普段食べているものを対象にして、話題提供をしていきたい。
    • 植物の一生に関わる植物ホルモンは物質で、オーキシン、ジベレリンなど、聞いたことあるかもしれません。その中には実は日本人が見つけた植物ホルモンがいっぱいあるんですね。赤い字で書いてあるのが日本人が初めて植物ホルモンだと発見したもので、うちの研究室の出身者とか先輩が見つけたものです。私も新しいホルモンを見つけようと思って、植物ホルモンの研究を一生懸命やっております。
    • これらの植物ホルモンは、皆さんが食べている野菜にみんな入ってるんです。中には発がん性なんて言われたものもあるんですけど。そういうのも、順を追ってお話しします。さて化合物嫌いな方のために、植物ホルモン擬人化サイトを紹介します。うちの研究室とは縁もゆかりもないんですけど。なぜかアブシシン酸、オーキシンさんとか、みんな女の子になっていて、オーキシンは中心的な役割をしているというので、オーキシンさんがクラス委員長なんですね。サイトの中には漫画もありますので、興味があったら植物ホルモン擬人化サイトに行っていただくと植物ホルモンに親しみが持てるかもしれません。
    • 今回もこれだけお集まりなので心配されているのかなと思いますが、食事に含まれる植物がつくる化学物質です。まず、「化学物質」という言い方がちょっと怖そうですが、食べても安心だという人いますか。逆に含まれる植物がつくる化学物質を食べるのは不安だという人は。不安な人は、1 人ですか。他の人は、もうみんな安心して食べているんですね。
    • 科学では安全という言葉を使わないといけない。安心と混同しないように。そして安全というのは科学的に評価できるものなんですね。安心という場合は、本当は安全じゃないかもしれないという可能性もあるわけです。実は安心ということのほうが人間生活する上で非常に重要です。安心は安全という知識の上に多分乗っていると思うんですね。牧草地での牧草の生産は、今の時期、すでに播種が終わっています。福島第一原子力発電所の事故の前の2010年秋に播種が終わったあと、明けた2011年に原子力発電所事故が発生しました。牧草がある程度伸びたところに放射性物質が落ちてきたわけなんです。

安全性と危険性は裏返し。高いか低いかを考える

    化学物質についても、安全の上に安心があるわけですが、逆に言うと、安全じゃないのに安
    心と思っていることもいっぱいあるんです。だからこそ、ここで科学的な考え方をしようとい
    うことです。ここで「リスク」について考えましょう。近頃よく使う言葉です。

    • 一般的にリスクというのは、これが危ないっていう意味じゃないんですね。温度のようなもので、熱いと冷たい、ちょうど人間にとっていい温度がありますけども、冷た過ぎても、熱過ぎてもまずい。リスクは低ければ低いほどいいですけど、リスクという言葉の意味は危険性ですから、低いほうがいい。反対は危険性が高い、となる。
    • 逆に、安全性という言葉はどうか。安全のような気がしますけど、やはり安全性も高いか低いかですね。安全性が低いということはリスクが高い。安全性が高いっていうことはリスクが低い。だから「リスクがある」というのは危ないという意味ではなくて、その危険度、その可能性について考える、そういう安全・危険の程度の具合を考える物差しみたいなものです。リスクがある、安全性があるではなく、高いか低いかであると。今日はリスクという言葉がよく出てきますが、だからといって、リスク=怖いというふうには思わないでください。
関崎

なるほど。安全性と危険性は裏返しのものだと。

浅見

熱い、冷たいと同じような関係にあるわけです。さて、「食べて安全か」について今日は簡単にご紹介します。多くの要素を持ち出すと複雑になるんで、主に急性毒性、食べて、「うう、苦しい」などと映画などで、ばったり死んだりしますけれども、食べて毒か、そうでないかについて、そして、後半に発がん性にも少し触れたいと思います。

    • 毒性学というのは、動物または植物に由来する天然毒、医薬品、農薬などの人工的化合物や
      放射線などの有害性について研究することです。放射線は今日はおきますが、中でも、天然毒、
      医薬品、農薬などについて、安心か、不安かではない、安全性について科学的に考えてみましょう。
    • 安全性を科学的に考えるには、リスクの大きさを算定する必要があります。先ほど、リスク
      は高い、低いで考える、と言いました。化学物質、化合物が持ってる毒性、急性毒性については、曝露量、摂取量、つまり取った量を掛け算した値の大小で表します。正式に言うと掛け算でもないんですが、端的な数字で表すと曝露量、摂取量を考えるということです。
    • 例えばフグが持つテトロドトキシン。これは猛毒です。青酸カリの1000 倍ぐらい強い毒です。そこに、フグなんて食べたくないという人がいて、食べなかったとすると、テトロドトキシンの曝露の機会がない。フグの持つテトロドトキシンは毒性という意味では高い、リスクではなく毒性は強いですね。でも、曝露の機会はない。そうするとテトロドトキシンの中毒のリスクについては、食べなきゃ死なない、毒も体に入らない、リスクは低いと言えます。単純化して話していますが、こういう考え方ができます。これが先ほど言った曝露量との関係ですね。毒性というのは、テトロドトキシンならテトロドトキシンを取る量によって、ものすごく少ない量だったら全然問題ないということかもしれない。
関崎

薄めて、薄めて、薄めて薄めれば大丈夫かもしれないと。

浅見

これがリスクを測るということです。では、もうこれで食べて安全でしょうか。実は、植物の化学物質も、安全とも危険とも言えるわけです。なぜなら、魚がつくるフグの毒も安全とも危険とも言えるわけですから。要するに体の中に入れる量の問題なんですね。

    • 量が問題であるならば、安全を確保する情報について、正確な知識を持っていただかないといけない。フグの毒だとすごく強いから、怖い、怖いと意識する。でも、毒性が弱いものだとだんだんグレーゾーンになってくる。世の中そういう物質が実は植物中にも山ほどあります。だから、正確な情報を持つことが重要なんです。

                

毒性はどうやって決めるの?

    急性毒性ということですが、では誰が毒や毒性を決めるのか。化学物質の毒性は、毒性試験で決めます。人体実験を行うことはできません。本当は動物試験も反対者はいっぱいいますけ
    れども、実質はマウスとかラットを使ってやることが多いです。実験動物を用いて、ある数字
関崎

その急性毒性っていうのは、死んじゃう量ということなの。

浅見

なかなか実際は死んじゃうまではあげないです。図で説明します。縦軸と横軸、死亡率と薬の量です。薬の量が、だんだん増えていくと、途中までは大丈夫ですけど、途中あるところから死ぬものが現れた。普通は角度とか形は違うんですけども、量に比例して危険度は高くなる。さっきの「リスクが高くなる」と、同じですね。牧草は通常5月中旬ぐらいになったら刈り取ります。2011年も同様で、この年は汚染したものを刈り取ってもらって、回転して、乾燥して、このロールベールラップをつくったわけです。通常はラッピングした牧草は1カ月ぐらい置いておいたら中で発酵するんです。乳酸発酵です。一度発酵してしまえば、2年間保存がききます。そうして安定した栄養分を継続して家畜に与えることが可能なので、いつもこうした生産システムを取っているわけなんです。

    • ここは覚えてください。投与した動物の半数が死亡する薬量LD50(Lethal Dose, 50%=半数致死量)です。mg/kg。mg(ミリグラム)はg(グラム)の1000 分の1 の単位です。1mg、目に見えます。皆さん、毒物、劇物とか聞いたことがあるかもしれないですけど、これには定義があります。毒物の定義は50mg/kg 以下の物質と。体重60kgの人が食べると3g。1kg 当たりですから、例えばマウスとかは体重が150gぐらいですからね。
関崎

これは半分が死ぬ量ですから、数字が少ないほど少量で死んじゃうということですよね。

浅見

そうです。ちょっと食べただけで死んじゃいます。劇物は300 mg/kg。なんか怖そうですね。このようにして、量が決まっています。今はこれは法律で決まっているんですね。

関崎

これより多い値のものは、普通のものということ。劇でも毒でもない。

浅見

はい。ただし、医薬品とか農薬とか、人工の添加物では、ですね。

関崎

つまり、このLD50で測れないものもあるんですか。

浅見

他の規制がかかっているものがあります。LD50 がこれより小さくても。

関崎

このLD50は基本なんですね。

浅見

そうです。これより小さくても、いろいろ規制はかかっていて、特に人工の化合物はすごく規制が厳しい。一方、天然物だと同じような数字でも全然OKみたいな感じ。それで、気にせずどんどん食べている。毒も食べているかもしれない。医薬、農薬、食品添加物、この辺以下の小さい数字でも、皆さんすごく心配されますけど、不思議と植物に含まれていると、全く気にされないですよね。私、コーラも飲んでいますけど、そこにもこの辺の化合物がいっぱい入っています。

    • 資料に書いてあるのは、まず代表的物質の急性毒性。これも先ほどお話しした半分が死んで
      しまう量です。小さければ小さいほど危ない。例えばフグ毒、青酸カリ。
関崎

随分差がありますね。

浅見

これは、もう1000倍違う。だから、フグの毒がいかに強いか分かると思います。青酸カリは10mgですから、60倍して体重60kgの人にすると600mgです。1gない量で半分の人は死んでしまう。この数字は試験によって、ちょっとばらつきがありますが、桁はあまり変わらないと思ってください。大体この辺がよく使われる殺虫剤です。これは普通物なんですけども、MEP 有機リン系殺虫剤、330mg、まあ、毒なのかな。

関崎

有機リン系殺虫剤っていうのは、いかにも毒っぽい感じがしますね。

浅見

毒入り餃子の事件がありましたけど、あの農薬は有機リン系殺虫剤でした。しかも、もう今や中国でも使わない、日本ではもう規制されている農薬だったんです。毒性がさらに強い。10倍までは行かないですが、数字的には数倍しか変わらない。このことは逆に心配になるかもしれないですが、あとで大丈夫なんですよという説明をします。しかし、あの事件のように意図的に入れちゃうのは想定外なので、かなり危ないです。

    • アレスリンは、噴霧式のシューッとまくスプレー殺虫剤に入っています。これには、2つの成分が混じっています。これも880mg。スプレーの缶の中にはガスと一緒に有機溶剤が入っているんですけど、そこに0.5 %ぐらい入っています。だから、500cc の0.5 %、2.5g ぐらいですか。そんなものがいっぱい入っていて、ちょっと心配になりますね。
関崎

でも、全部使っちゃうぐらいじゃないとここまで行かないですよね。

浅見

シューッとやるのは数10mgぐらいですから大丈夫ですけどね。次にあるのは、アスピリン。これは、皆さん、パクッと飲んじゃってますよね。頭が痛いときに飲む頭痛薬です。アスピリンは1,000mg/kg、アレスリン等といい勝負ですね。有機リン系殺虫剤のたかだか3 倍じゃないですか。皆さん、これ多分何の疑問も持たずに飲まれていますが。

関崎

頭痛のときは飲まないとね。

浅見

でも、逆に命を縮めてるかもしれません。

関崎

だから用法、用量を守ってと言うんですね。

浅見

そういうことです。仮にバファリンを1瓶飲むとかなりまずいことになると思います。でも、農薬、医薬等には規制があるんですね。青酸カリもそうです。それで人が亡くなったりすると、すごい新聞沙汰になったりしますよね。フグ毒も調理師免許を持っていないといけないというふうに、ちゃんと規制されています。

    • 規制がないもの、われわれがよく食べているものについてはどうか。ビタミンAなんてアスピリンなどと比べるとちょっと値は大きめですけど、でも、殺虫剤成分のフタルスリンと同じ程度です。それからアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム。これは家庭用中性洗剤。例えば家庭用洗剤をコップ1 杯、ごくごくごくって飲むと、もうお亡くなりに……。
関崎

具合悪くなるどころじゃなく、お亡くなりぐらいまで行っちゃいますね。

浅見

体重60kgの人に換算すると120gが半数致死量です。コップ半分ぐらいですね。

    • 食塩はどうか。今の2つとあまり変わりませんね。60kgの人なら180gまあ、そこまで摂取することもなかなかないと思いますが。砂糖、これはかなりきつい。30g かける60 だと1.8kg。
関崎

1.8kg の砂糖というのはちょっと無理ですね。

浅見

アルコール、7,000mg。ビールは約5%ですからコップ2杯飲むと400ccで、20g入ってます。全然皆さん気にしないですよね。ところが、さっき言った殺虫剤では2.5g、ビールのほうは皆さん喜んで飲んでいる。殺虫剤のほうはちょっとのことで大騒ぎするのにね。私はこれが毒性がさほどないと知っているのでシューっとまいています。妻はすごく嫌がりますが、安全ですといつも言っています。むしろ酒を控えたほうがいいかもしれない。

    • 私ね、別に酒は嫌いじゃないですけど、結構いつも憎んでいるかのような言い方をします。酒はいいことは1つもない。酒は発がん性もある。毒性も高い、酔っ払い運転は危険だし、中毒性もある、何もいいことはないです。これが今発明されところだったら、国は、こんな飲み物絶対許可してませんよ。ただ単に伝統的に飲んでいる。そういう側面が強いですね。伝統的に消費者が良しとすると、毒でもいいってことになっているんです。

規制がなければ安全なのか

    ここまででちょっと毒のイメージが湧いてきたかもしれません。では、規制のないものは安全でしょうか。例えばさっき言った、砂糖1kg とか。水10〜20L、こんなに飲めないですよね。でも、アメリカ人はよくバケツ1杯のアイスクリーム食べちゃうという人もいるけど、かなり危ないんじゃないかと思います。さっき塩なら180gと言いましたけど、どうですかね。

          

    • これを、もう少し分かりやすいように換算してみました。殺虫剤でよく使われるのは、リン系の殺虫剤。それは、分解しやすいからなんですけども。分解するとリン酸になっちゃうんです。
関崎

リン酸はまったく大丈夫なんですね。

浅見

かえって肥料になるぐらいで。25m 四方のレタス畑で全部のレタスにかかったとして、これをそのまま全部食べたとしたらその量というのが半分死ぬ量。けれども市場に出てくる時は、サーッと分解して出てきます。洗ったりすると、ほとんど気にすることはない。

    • 一方しょうゆコップ6杯。しょうゆに換算したお塩の量ですね。ウイスキー1.5本、これはあそうですね。学生が急性アルコール中毒とか。これらも半分致死量です。
    • また、毒は嫌だと言いながら、誰でも毎日空気中の一酸化炭素を吸ってます。あと、水銀も空気中にはいっぱいあって、ふわふわ飛んでいます。でも一酸化炭素は致死量は1,500ppmぐらい出ても全然余裕があるんで、もちろんOKなんですけども。もし空気中で濃度が高かったら人間は生きていないと思います。
    • 毒のイメージとして、昔から言われているような、しょうゆ一升瓶飲むと死ぬよとか、学生の急性アルコール中毒、一気飲みしたら死んじゃう等の話も、納得できる数字かなと思います。ここまで一通りご紹介したようなことが、現在の毒性の基準です。今までみんなが安全と思ってたものとか、安全でないと思ってたものもひっくるめて、特に急性経口毒性については、基準としてはこのようにして決められています。
    • ここで植物のほうを見てみましょう。割と有名なほうから、これはウメ。若いうちは青酸が入ってて苦い。青いウメです。危ないんじゃないかというのは有名ですね。これは梅干しにしちゃえば安心ですよ。じゃあ、実際何がいけないのか。実はこういうC≡Nが付いた物質、これC≡N が青酸カリとかシアン化物で危ないですね。これは、酵素でC≡N が出てくるんですね。
関崎

青酸カリにも同じものがあるんですね。

浅見

そう。青酸カリ、シアン化カリウム(KCN)っていうのは同じ成分。ですがLD50 では、405mg/kg、大人300 個、子どもで100 個ぐらい青いウメのまま食べちゃうとちょっとまずいんじゃないかと。300 個をかりかり。でも、世の中そういうことをやる人はいるんですよ。

関崎

聞いたことがあります。戦後すぐの頃で食べる物がなかった時に子どもが木になっている青ウメの実を取ってきて、かりかりと半日くらい食べて具合悪くなったというような話。

浅見

だから、皆さんこの辺はそんなに気を付ける必要もないかなと。

関崎

そこまでふつう食べないですから。じゃあ、1 個とか2 個なら食べてもいいわけですね。

浅見

やめたほうがいいかも。まあ、うちの子も食べちゃったけど、そんなに何もなかったです。大騒ぎしなくても、一口食べたぐらいだったら全然平気。おいしくないと思いますし。

ジャガイモに含まれる有毒成分とは

    過去50年間のわが国の高等植物による食中毒事例の傾向です。患者数918、幸い死亡者はいないんですけど。ジャガイモ、これは有名ですね。時々新聞に載ります。私も毒性の面から言ったらジャガイモは禁止食品にすべきだと常々言っているんですけども。実は安心なんです。ジャガイモの中毒原因物質っていうのは、構造がちょっと長いのが特徴の、有名なソラニンですね。一般的にはグリコアルカロイドと言われているものです。トマトに含まれているトマチン、これもグリコアルカロイド。大体どのぐらいかというと、ここでの数字は中毒量で、LD50とはちょっと違うんですけども、成人で2.8mg/kgで、マウスの経口だと500mg/kgで、まあ、どうということはない。ただ、ウメと違ってジャガイモのほうが食べやすい。

    • ジャガイモの毒は皮にかなり局在、偏在してしまう特徴があります。そして芽。特に芽になると余計また増えます。これは大体1〜3mg/kg、人間が60kgだと180mgで症状が出る。60掛ける360mgで死亡する可能性あり。実際の量は、100g未満のジャガイモ、100g以上のジャガイモ、そして平均で示されていますが、メークインには50mg/kg 含まれています。
関崎

さっきまでのものからすると、随分数字が小さいですよね。危ないですね。

浅見

危ないんです。換算すると、体重60kgの人が180mg摂取すると危ない。さっきの症状が出る可能性のところで言ってますが。メークインだとちょっと気持ち悪いなと。メークインは男爵よりもちょっと多いんですね。あ、資料のジャガイモ400gというのは計算間違っていますね。皮ごと食べた場合は、3kg です。ジャガイモ30個。もし皮だけむいて、私は料理名人だから無駄なく食べようと言って皮だけ食べさせると、30個の皮だけの量は大したことないですから食べられちゃう。ソラニンの量はずっと危ないことになります。皮付きのまま調理したりすることもありますが、ただ3kgということからすれば、普通はいっぱい食べても1kgぐらいですから。ただ、ジャガイモの皮が好きな人は影響あるかもしれない。

参加者

その毒性は、料理しても変わらないんですか。

浅見

基本的には変わらないですね。ただ、酢酸、お酢と一緒にぐつぐつ煮たりすると、この辺の構造が切れるかもしれません。

関崎

酸っぱいスープでぐつぐつ煮れば分解すると。普通の中性のもの、普通に考えられる調理だったら、まだ毒は残ったままだと。すると、芽のところなどは……。

浅見

これは芽が出てるっていうことを想定していない数字なので、芽を出すともっと危険になります。皮ごとホイルにくるんで焼いて、バターを乗せて食べるのも皮は食べないもんね。

関崎

皮は残したほうがいいんですね。

浅見

1 個くらいは大丈夫ですよ。リスクという言葉、あれは高いか低いか。掛け算ですから。

関崎

皮付いたまま切って油で揚げて食べる、あれも皮を、こう削いで食べればいい。

浅見さんに質問する関崎さんの写真

ファシリテーターは関崎さん

浅見

日常食べる量なら大丈夫。でも、他の化学物質と比べると、そういう天然物はいかに甘やかされて育ってるか、ぬくぬくしてるかっていうのが、後で出てきます。これは去年のもの。ジャガイモの食中毒、9割は学校菜園です。ジャガイモを植えて、だんだん育ってくると土から露出してイモが光を浴びてしまいます。日光に当たってしまった緑色のジャガイモのほうが毒が強いですね。だから、ちゃんとしっかり土をかぶせましょうというのが、小学校や家庭菜園の人に向けたこの案内ですね。

関崎

緑色だったら、本当に剥いちゃわないと危ない。

浅見

危ないと思います。というのは、これは毎年こんだけ騒がれてるほど多いから。

ギンナン、トリカブト、スイセン

    ギンナンにも毒が含まれています。ギンコトキシンなんて書いてありますけど、毒だ毒だっ
    て言われていますけど、さっきのウメと同じぐらいで、まあ、そんなに毒ではないと。割と季
    節ものだし、茶わん蒸しに1個入ってるくらいならいいけど、でも、30個とか食べると、どう
    でしょう。
関崎

これだけつまみにしてぽりぽり食べちゃったりすると。

浅見

人によって感受性とか違いますけど、何十個とか食べると中毒症状を出す人はいると思いますね。でも、普通に食べている分には大丈夫です。

    • あと、こんなもん食べる人はいませんよね、トリカブト。この毒は有名です。栽培してるだけでまずいです。いくつか見て、植物はやっぱり結構毒つくるんだなというのがわかりますね。トリカブトみたいにめったに見ないものから、イチョウ、ウメ、そして、そこまで食べないよなっていうものからジャガイモみたいなものまである。ちょっと危ないなと。
    • 次のものは、2016 年人が亡くなっちゃったんですよね。これも栽培を中止したほうがいいんじゃないかって、訴えたほうがいいんじゃない?
関崎

毎年春先に起こりますよね。

浅見

スイセンの葉、ニラの葉。2 つはよく似てる。うちにも両方生えてるんですけど。

関崎

よく見れば違いますよね。

浅見

においも全然違うし、ニラのほうが細いです。でも、結構間違えてしまうんですね。2017年のニュースもあります。豊野高等専修学校でニラとスイセンを間違えて食べて、気持ち悪くなっちゃったと、調理実習で。気をつけようということですが、実はニラも結構毒が入ってるんですけども。

関崎

ニラもあるんですね。毒のない植物はあるんですかって逆に聞きたくなるぐらい。

浅見

というか、ほとんどは毒なんですけど、その中でも毒性の低いものを選んで野菜にして食べてると言ったほうがいいと思います。特に庭に咲いている花とかは、ほとんどが毒を含んでいて、だから、彩でちょっと食べるのはいいんですが。

関崎

じゃあ、そういう庭の花とか葉とかをうかつにムシャムシャ食べちゃいけないですね。菊の花を食べたりとかあるじゃないですか。

浅見

>菊の花も何十個も食べないほうがいいと思います。花びらとか葉とか。彩や風味で、ちょっと食べるぐらいはいいと思いますけど。

    • この縦長の化合物なんですけども。これは去年男性が亡くなりました。スイセンに含まれているのはガランタミンという化合物なんです。マウスでLD50 が25mg/kg。ずいぶん低いです。もう毒物指定の域です。殺虫剤と同じで猛毒で、先ほどもう使用が禁止になったジクロルボスと言いましたけど、それと同じ作用です。ジクロルボスはこれは劇物指定なんですけども。だから、世の中からスイセン全部引っこ抜いたほうがいいんじゃないかと思うんですけど。そうすると、ほかのいろんな植物も植えられなくなりますもんね。
    • 知識とか情報が必要ですよと言ったのは、こんなふうにスイセンみたいなものを食べないでください、こういう毒が入ってますといったことなんです。ただし、さっき計算してみたんですけど、この男性はスイセンをどう見ても1kg 以上は食べてますね。鍋だからひたひたになるので食べれちゃうんですね。含まれている含量からすると、そんなに多くはないんです。例えばスイセン1 本や2 本食べても大変だなんていうことはないんですけども。
関崎

じゃあ、間違ってちょっと食べたとしても、ちょっとならば慌てなくてよいと。

浅見

ウメもギンナンもスイセンもそうです。トリカブトはちょっと違うかもしれないけど。これは対症療法の薬もありますから、まあ、大丈夫。ヒガンバナは食べないですけど、ヒガンバナにも同じようなものがあってよく言われるように、やはり毒が含まれています。

    • 厚生労働省のホームページに行くと、いろんな毒のある食べてはいけない植物等をたくさん掲載した一覧表もあります。毒があるのは知っていましたが、私も今回勉強して初めてこういうページがあるのを知りました。もし、食べていいのか分かんなかったら、食べなければいいんですけど、分かんないんだけどどうしても食べたいっていう場合は、こういうサイトを見て、ちゃんと調べたほうがいいと思います。

さらに身近なタマネギ、ヒジキ、ダイズ、カツオ節……

    大部分の方にとって、ウメとかイチョウとかは特別な話でしょう。都会では見掛けるものもありますけど、トリカブトとか間違えたりしないし、注意していれば大丈夫だと皆さんお考えかと思います。でも、さっきジャガイモの例を挙げました。ジャガイモが出るということは、まだ何か隠し玉を持っているんじゃないか。他のよく口にする植物にも毒が含まれるんじゃないかとお思いでしょう。そのとおり。おおよそ皆さんが口にされるレタス、キャベツなど、正直言うとみんな毒だらけなんです。まあ、それは量がかなり少ないからいいんですけど。

    • では、もうちょっと身近な毒についてお話しします。有名な、猫とタマネギの話です。毒は実験動物を使って毒性を測っていますと言いました。皆さん、猫にタマネギを食べさせるなって言いますよね。猫が死んじゃうよとか、血出しちゃう、血尿出しちゃうよと。大体これ、60 〜 100g、大さじ4 杯ぐらいの量です。生は食べないから炒める。炒めちゃうと猫も食べちゃう可能性があります。すると、猫は死んじゃいます。
    • 人間も、タマネギを食べて血液さらさらと言いますけれど、さらさらが行き過ぎると赤血球壊れちゃうんですね。大きなボールで、タマネギを、うまい、うまいなんと言って1杯も2杯も食べちゃうと、まずおしっこが赤くなります。さらさらが過ぎて溶けちゃうんです。催涙性もありますよね。動物が好きで、猫が好き、猫が危ないというのに、なんで皆さんタマネギ食べるんでしょう。
関崎

切っている時に、ぽろぽろ涙が出ます。

浅見

明らかに毒じゃないですか、タマネギ。猫に食わしちゃいけない。やっぱりジャガイモもタマネギも規制すべきじゃないかと。

関崎

するとカレーが作れなくなりますね。

    • タマネギについて、これは書いている方の本から持ってきたのですが、「天然食品は安全なのか?」と。タマネギの毒性というものを動物試験でLD50などを出しています。食品添加物や農薬と同じ基準に当てはめると、カレー1皿に許容される量は0.016g。皆さん、もし農薬がこれだけの量入っていたら、大騒ぎですよね。でも、それどころか、実際はこの1,000倍ぐらいのものをタマネギで食べているんですよね。0.016g は、みじん切りにしたひとかけより少ないじゃないですか。催涙性もある。サラダで、0.008g、炒めるとちょっと少なくなるってことですかね。
    • ここにジャガイモがあります。ジャガイモの毒性が、もし残留農薬だったなら、基準値以上
      で全て回収です。でも、ソラニンが含まれているから回収したジャガイモって聞いたことな
      いですね。また、イギリスではヒジキは危険物です。ヒ素が結構入っていて。これについては、
      日本の食品安全委員会でも明解に答えを出していないですね。みんな食べてるんだからしよ
      うがないじゃないって。今まで食べてるから大丈夫と。でもイギリスでは危険物で
    • 最近テレビでやってました、和食が広がってるフランスでもカツオ節は輸出できません。発がん物質のベンツピレンが入っているので、フランスは輸入を許してくれません。だからカツオ節をフランスで作ろうという動きがあるぐらいですね。また、大豆、イソフラボンを環境ホルモンだとして疑問視する国は多いです。

コーヒー、タバコ、お酒も毒?

    どうも植物にもいっぱい毒があるなと、お分かりいただけたかと思います。では、皆さんの身近にあるカフェイン。これは、コーヒーの成分ですね。エナジードリンクを飲み過ぎて亡くなった人がいたとニュースで聞いたことがありましたが、カフェインのLD50 は200mg/kg です。殺虫剤より小さいですよね。だから亡くなっちゃう人がいるんでしょうか。あと、カプサイシン、唐辛子大好きな人いますね。これはもう毒物に近い劇物ですね。
関崎

猛毒じゃないですか。

浅見

はい。あと、これは食べる人いないと思いますけどタバコのニコチン。これはかなりな神経毒です。神経の受容体に、ボコッとくっついてしまう。赤ちゃんだと数本分の煙草の水溶液で死んじゃうんです。だから、よく空き缶に水入れて灰皿にしてタバコの吸い殻を入れたりしますけど、あれは赤ちゃんが飲むと死んじゃいます。危ないんです。そういう意味で、身の回りで一番あるということでは、ニコチン、カフェインが代表かもしれません。

    • アドレナリン、これは体の中でもつくっていますが、経口最少致死量30mg/kg。人間の体でつくっているものも毒なのかと思われるでしょう。この量は体外から与えた場合の数字ですけども。では、カフェイン、これはどのくらい摂取してもいいイメージなんでしょうか。
関崎

150杯ですか。

浅見

コーヒー150杯。こんなには飲みませんよね。ただし、これは半数致死量です。国は規制はしてないですけど大体コーヒーは4 〜5杯にしてくださいと言っています。それ以上は影響が出ますと。妊婦の人は2 〜 3 杯にしてくださいと、厚生労働省のホームページにはしっかりと書いてあります。知っていましたか。今日はサイエンスカフェでコーヒーをどうぞと言っていますけれど、私は嫌です。(笑)コーラを飲んだんですけど、コーラにも5 分の1ぐらいカフェインが入ってます。

    • カプサイシン。これはちょっと心配かなって思うんですけども、大丈夫です。半分致死量は12kg ですから。一度にそれだけは食べないし、その前に辛さの刺激で死んじゃうかもしれない。この12kg はさっき出たLD50 の数字を具体化したものですね。
身近な食品の「毒性」の話に熱心に聞き入る参加者の写真

身近な食品の「毒性」の話に熱い注目が集まります

参加者

「一度に」という言葉が出ました。年間どれだけという計算もされてるんでしょうか。

浅見

ADI(acceptable daily intake= 1日当たりの許容摂取量)というのが、今度は一生涯食べ続けた量ということなので、年間どれだけにもなりますが、みんなが普段飲んでいるものを、ADIでカフェインを決めることはわざわざしないんですね。ADIを決めちゃうと1日飲んでいいコーヒーって0.1 杯ぐらいになっちゃうんです。

関崎

ADI は、それだけの量を一生飲み続けても大丈夫という理論ですよね。

浅見

一生涯飲み続けて全く何の影響も出ない数字。だって、3 〜4杯飲んだら影響出るって言ってるのに、ADI は一生涯だからもっと小さくなるはずなんですけど。コーヒー業界が怒るじゃないですか。皆さんだって反対する。危険を冒してでもコーヒーを飲みたいって言うに決まっているんですから。会場の皆さんもこの話を聞いた後もコーヒー飲み続けますよね。ADIを
取るにもお金がかかります。だからコーヒーみたいなものについては、わざわざ取らないんです。その代わり、新たに登録するような農薬とか医薬とか食品添加物に関しては、必ず取るようにしているわけです。

関崎

昔から習慣的に食べたり飲んだりしてるものは、そのような扱いなんですね。

浅見

化学物質という点では何の変わりもないんだけど、扱いでは大きな違いがあります。しかし、科学的に見ると同じ毒なんですよ。

関崎

変な感じがしますね

浅見

そうなんです。昔から食べているんだからとか言って。とはいうものの、日本人がジャガイモ食べ出したのはつい最近ですし、コーヒーもつい最近です。

関崎

コロンブスがいなければ食べられなかったのに。

浅見

カフェインに関してはお茶にも含まれます。お茶のカフェインはコーヒーの3分の1ぐらいです。だから、昔から食べているとも言えますが、通常そういうものはADI を決めないです。

参加者

それぞれ単品として毒性のお話を伺いましたが、例えば複合的に相互作用して毒性が上がることはないんでしょうか。例えば、お酒を飲みながらギンナンをつまんで、フライドポテトを食べるとか、普通の生活では複合的に摂ることになると思いますけど。

浅見

そういうのはADIを取るのは難しくて、基本的には単品で測られます。経験的にこれとこれを合わせたら卒倒したことがあるとか、そういう事例がない限りは食べ合わせしちゃうと思うんです。毎日普通に食べているものについて、ネズミを一生飼い続けて、いろんな濃度で測定するというのは、誰も得しない。例えばソラニンとかコーヒーとかで測っても、誰も喜びようがない。基本的にはやりません。ただし、誰か深刻な影響が出たという事例があって、国が危ないと思ったときはやるかもしれません。

関崎

でも、今日の浅見さんの話を聞いたら、連想しながら食べたり飲んだりしちゃいますね。これも入ってる、あれも入ってるって。

参加者

毎日複合毒の生活してるような気がしますけど。

浅見

本当は実際よりはもっと少なく、減らして食べたほうがいいのかもしれないです。

参加者

減らしてですか。

浅見

増やしていいことはないと思います。複合的な作用を気にするんでしたら。

    • さっきからお酒の悪口を言っているんですけど、多分これを見てもお酒をやめる人はいないと思うんです。アルコール飲料は急性毒性のほうがデータが多いんで急性毒性で説明しましたが、発がん性の物質もいろいろあります。
    • 例えば、コーヒー。これは未知の化合物22種を含んでいて、それらを調べると、そのうち16種が発がん性でした。しかし、そんなことに関係なく、皆さんはコーヒーを飲みますよね。アルコール飲料にも発がん性のある物質が含まれます。ベンゾピレン。先ほどフランスではカツオ節輸入禁止の例にもありました。新聞などで読んだ人もいるかもしれませんね。
    • 私が昔いた農芸化学というところでは、お酒は発酵食品で大事にせよと言われたものですけれど、お酒の毒性の話をするといつも「浅見はなんでそういう話をするんだ」と言われます。それでも、今飲んでいるのは毒だと、言い続けております。(笑)

結局、安全、安心な食べ物って何?

    安全と安心を混同しないことが大事です。アルコールやカフェインだって、実は全然安全じゃないんですが、皆さん気にせず安心してます。本当は安心することのほうが怖いんです。誤った安心をすることによって、死ぬこともあります。正しい知識を持つことが重要です。安全は科学的、安心は心理的という側面があります。みんながしている、みんなが食べている、だから大丈夫ということではありません。絶対的に安全な食品というものは、ここで挙げたものの中にはありません。

    • アメリカ人が、かつて「発がん性物質は絶対含んではいけない」という法律をつくりました。そうしたら、そんな食べ物ものは誰も食べられないっていうことが分かって、その法律は中止になりました。食品や物質によるリスクは、先ほども言いましたが、量によります。スイセンは少しの量なら死ぬことはありませんが、1㎏もの量、鍋のスープで煮えると味がついて嵩も減って食べられるように思いますが、そんな量を食べるのは危険です。
関崎

水もありましたね。

浅見

そうです。水も10L飲むと危ない。

関崎

だから度を超してはいけない。

浅見

安心を得るためには正しい知識を知っておくことが大事です。だから、時々は農林水産省や厚生労働省のホームページを見てもらいたい。

ADIはどんな数値?

    人工か、天然かにかかわらず、化学物質に違いはなく、その毒性は科学的に決められます。その安全性も科学的に決められるという話をしてきました。どのように決めているのか。さっき規制がありますと紹介しました。そして規制のないものがありますと言いました。

    • ADIは1日当たりの許容摂取量です。それを試験動物に生涯食べさせ続けた場合の影響を見て決めます。基本的に急性毒性とはちょっと値が異なってきます。場合によっては似たような値になることもありますが。動物試験で得られた結果を基に最も低い無毒性量、毒にならない、何の影響も見られないという量が決まります。11ページ右上の図に、摂取量、影響、無毒性量とあるように、量により頭が痛い、体がだるい、死に至るということにもなります。
関崎

さっきのLD50は生きるか死ぬかしか見てなかったけど、ADIはもっと厳しい。死ななくても何か異常がないかというのを見るんですね。

浅見

はい。それで、異常がないですよ、という値が決まります。動物試験ですから、哺乳類といっても人間とは違う場合がありますから、まず10分の1の安全係数を掛けます。また、人間個人によっても体の強さが違いますから、安全圏を取って、個体差を考慮してさらに10分の1をかけて、100分の1にする。動物に一生涯食べ続けさせる量が、100分の1量としてこの値になるので、体に入る量としてはこれよりさらに少ない量にしようと。

    • その量というのは、例えば残量農薬基準の場合、どうやって決めるのか。まず、無毒性量の動物試験から無毒性量の100分の1が自動的に決まります。でも、それらを野菜にかける、米にかける、肉には農薬はかけないですけど、何かを食べた動物がいて、その肉にその食べたものが入ってくるということがあるわけですね。そういう肉なり何なりを食べる量を、お米だったら1日10杯ぐらいかなとかちょっと多めに想定します。それを基準にして、お米に残っている農薬はこのくらいだろうということ考慮しながら決めていきます。
関崎

量が大事だから、それぞれの食品をどれくらい食べるかということですね。

浅見

そう。1日当たりの量を食物ごとに決めようと。実際に食べる量を考えるから国によって違うんです。例えば紅茶が大好きなイギリスではお茶をいっぱい飲みます。お茶のADIがより厳しくなります。その代わり日本よりもお米は食べないですから、お米のADIは緩くてもいいという考え方です。

    • ADIはたくさん食べるものには厳しくなります。それぞれの国の主食には厳しくなります。このようにしてこの程度までは体に入ってもいいですよということが決まるのがADIです。ここでもう一度コーヒーを悪者にしてしまいますが、例えば、急性毒性から計算した場合、コーヒーのLD50としてはヒトの場合150杯。大体コーヒー1杯当たりのカフェイン60㎎として。すると、玉露はすごい。お茶はコーヒーの大体3分の1ぐらいと言いましたけど、玉露はなんと2倍以上入っています。
浅見

玉露を毎日飲んでいる人いますか。ダイエットコーラだと45.6㎎。コーヒーと変わりませんね。ダイエットコーラはよく飲んでいますけど、よくないですよね。カフェインに関しては、実はADIとはちょっと違います。比べて見ると、大概の場合、急性毒性のほうがちょっと緩くなります。

関崎

ADIは一生ずーっと食べるとしての話ですからね。

浅見

仮に、12ページ左下図にあるような曲線で考えると、半数致死量はコーヒーでは150杯。無毒性量は数十分の1、100分の1まで行かないことが多いんですけど、わかりやすく100分の1とすると1.5杯。通常は、3~4杯飲みますけど。1.5杯にしてあります。そこから最大無毒性量1.5杯のさらに100分の1がADIになるので、コーヒーだと0.015杯になります。コーヒーは1日0.015杯しか飲んじゃいけないという基準になります。

関崎

逆に言えば、ADIはそれぐらい厳しい基準ということですね。

浅見

ですから、たまに残留農薬が基準を超えたという食品が出てニュースで大騒ぎしてますけど、専門家から見ると、基準がここまで厳しいことを考えれば、1日ぐらいしたら大丈夫だと思いますよ、というコメントになってしまい、もしかしたら消費者の怒りを買っているかもしれないです。不安な数字かどうかということでは、1日ぐらい残留基準の10倍ぐらい食べても全く問題はないと思います。

関崎

計算では100倍までは、いいんですもんね。

浅見

100倍以上食べると、不安になってくると思いますけども、10倍なら、全然OKだと思います。だからといってどんどん食べていいとは言わないけど。まず10倍を超えることも非常にまれなケースで、意図的に入れない限りは、まずあり得ないです。

カフェインの過剰摂取について

    カフェインの摂取過剰についてまとめてみました。どの国もADIの設定はありません。先ほどADIの話がありましたが。欧州食品安全機関の評価(資料13ページ左上)でも、ほとんど同じで、1日当たり400㎎までは健康リスクはない、妊婦の場合も200㎎までは胎児健康リスクはありませんよとなっています。コーヒー1杯はカフェインが60㎎ぐらい入ってましたよね。だから3杯飲くらいまでならOK。これを超えると健康リスクが増加しますよ、影響が出ますよって、と言っているんです。
関崎

ADIじゃないんですね。

浅見

そうです。ぎりぎりの所を言っている。実際は飲んでいる。だからコーヒーは規制できない。規制しちゃうと、大量のコーヒー農園で働く人たちがいるのに、つぶれてしまいます。無毒性量人工化合物、悪影響が見られない値から100分の1以下の量に規制しないといけないんですが、カフェインはぎりぎりの最大無作用量として、曲線が立ち上がる所でOKです、3~4杯はいいですかねえという感じで言っているわけです。

    • ジャガイモ、タマネギ、コーヒー、これは世界の食品三悪で、規制すべきじゃないかと仮に提案したらどうですかねと。皆さんの賛同いただければ、私も政府のほうに訴え掛けたいと思いますけども。いいですか。そうですか。ちょっと話が面白くなってといって政府に呼ばれたりするんじゃないかと思ったんですが。1人じゃちょっと勇気が出ないですけど。何ばかなこと言っているんだと言われそうなので。(笑)
    • カフェイン濃度については、エナジードリンクは結構多くて、数百ミリグラム入っているものもあります。そういうエナジードリンクを1日に何本も飲むのは本当にまずいですから、お気をつけください。お茶の場合、玉露はちょっと突出して大きかったですけども、大体20㎎とか、コーヒーの数分の1です。ですから、飲み過ぎには注意しましょう。
    • 発がんに関して、喫煙、肥満、野菜・果物の不足、飲酒、どれも影響はあります。やはり、飲酒は悪いですね。でも、野菜・果物についても、調べると発がん物質はいっぱい入ってるんです。入ってはいますが、本当に微量です。心配する人には自信を持って、レタス2個だろうが3個だろうが食べてもらって大丈夫だと思います。
関崎

畑一面のレタスを全部食べたりしなければ、大丈夫ですね。

人工化合物は悪なのか

    人工化合物からの訴え。根拠のないヘイト報道には反対です。人工化合物が人間、例えばクローン人間になったとします。普通の人間とわれわれは何が違うんだと。天然物至上主義反対、人種差別反対というのを、人工化合物さんは言いたいんじゃないかな。

    • なんで危ないと言われるのか。彼らは言ってみれば前科者なんですよ。昔、人工化合物はいっぱい悪いことした。でも、前科者だからって差別する社会はよくない、変えていこうというのが今の流れです。
    • 国連でも言っています。差別とは特定の集団や属性についての差別だと。もともとは同じ人間です。化合物に対しても特別な扱いをする行為と同じことです。国際連合は差別には複数の形態が存在するが、その全ては何らかの除外行為や拒否行為であると言っています。明らかにこれは化合物に対する「バケ種」差別ではないだろうかと。これはまあ冗談ですが。科学的に見た時の安全性の話として、天然物はやけに優遇されているんじゃないか。毒があろうが、何だろうが、天然物だというと、みんなOK、OKって。

正しい情報・確かな知識

    ここで、食の安全・安心にとって何が大事かというまとめに入りましょう。食べる物が必要量あること。これが食料安保につながるんですけど、あまりあれも嫌だ、これも嫌だと言ってると、本当に食べるものがなくなってくる。

      リスクについての理解というものが必要です。リスクは熱の冷たいか、熱いかと一緒です。リスクは高いか、低いかです。安全性の裏返しです。リスクっていう言葉を聞いただけで「怖い」って言いますけど、リスクそのものが怖いんじゃなくて、気にかけるべきは「高いか、低いか」。そして、大事なのは確かな情報。規制されているものは、考え過ぎなくても安全なんだと。むしろ怖いのは、規制されていないもの。例えばコーヒー。私たちはしょっちゅう簡単に飲んじゃっていますが、そういうもののほうが危ないのかもしれない。

    • そして、体に良いか、悪いかよいうことでは、重要なのは量について考えないといけないということ。お酒も砂糖も、いっぱい食べすぎると死に至るけれども、適量食べれば幸せな気分になれる。摂りすぎると肥満にも、酔っ払いにもなる。というわけで、確かな知識を持って、なるべく正しく食べて生活しましょう。その他は、あまり変に心配性にならなくても大丈夫じゃないかというのが、締めくくりのお話でした。

健康食品の「健康」とは?

関崎

最近、健康食品の中にビワの種を粉にしたものが入っていて、それをたくさん取った方が具合悪くなったというニュースを聞いたんです。ビワの種と聞いた時、ビワは種の周りを食べるもので種は食べないだろうと思ったんですが、その部分を粉にして入れると健康にいいとかとということで、健康食品として出されたようなんですが、やはり昔から食べていたもの、食べているものと違うものが出てくる時は、ちょっと要注意なのかなという気がします。

浅見

そうですね。多分ビワの毒性について調べている人はまだいないんじゃないかと思います。そういう話があると、多分慌てて調べているかもしれない。アンズの種に入ってるものと同じものがあったら、多分同じことになると思いますけども。

関崎

種に共通するものがもしかしたらあるかもしれない。

浅見

結構その系統があると思いますね。

関崎

でも、種って結構ナッツとかね、アーモンドとか、種で食べておいしいものはありますよね。ギンナンもそうかもしれないですけど。

浅見

ただ、アーモンドや豆類はタンパク質や油脂とかが多い。成分そのものには問題ないと思う。ただ、私は、アメリカから輸入された豆類とかはあまり食べないです。

関崎

なぜですか。

浅見

世界最強の発がん物質、アフラトキシンに汚染されていていてですね。

関崎

許容量はあるし、検査されてますよね。

浅見

ええ。検査して。普通基準値は入ってるんですが。なんとなく気持ち悪いなと。アフラトキシンはちょっとみたいな。

関崎

差別じゃないですか。

浅見

差別です。前科者はちょっと差別しちゃいます。すみません。

薬味の葉っぱは?

関崎

他にも木の葉、草の葉など危ないものもいろいろあると思うんですけど。やっぱり昔から使われてきたもの、お刺身に付いているシソの葉とかは、通常使っているくらいの量は全然大丈夫ですよね。

浅見

大丈夫だと思いますね。漢方薬でも食べ過ぎると毒なんですけども。このくらいの量にしてくださいとかありますよね。。

関崎

確かに薬っていうのは、やはり用量、用法を守らないと、いつ毒になるか分からないというものですよね。

浅見

そうです。だから、野草は、皆さんがちゃんとしっかりとわかっているもの以外はやたらと食べないことです。

関崎

キノコもそうですね。

浅見

さっきの話のありました、葉っぱでは、アジサイで中毒があります。

関崎

アジサイの葉っぱも飾りに付けたりしてるのがありますね。

浅見

そのアジサイの葉っぱを食べちゃった人が中毒になっちゃって。調べてみると、やっぱり毒がいっぱい入っているんですね。本当にちょっと食べるならいいんですけど、そういうものをもぐもぐ食べちゃう。そして危ないことになる。また、それ知らないで、見栄えがいいというので飾りで出しちゃう料理人も悪いのかもしれないですね。

参加者の皆さんから

関崎

なるほど。まだちょっと時間がありますけど、せっかくの機会ですから。マイク使って。

参加者

大豆に含まれるイソフラボンが環境ホルモンだとして疑問視する国が多いということですが、私は知らなかったんですけれども、日本だとビタミンEや大豆は体にいいとか、イソフラボンがあるとか、プラスのことばかりの情報を見かけます。環境ホルモンというのはどういうことなんでしょうか。

浅見

今、この環境ホルモンという言葉は使わないでくれと言われます。あまり正しくない使い方をしてしまいましたが、いっとき、貝のオスがメス化するみたいな話がすごく取り上げられ、そういう物質があると盛んに言われました。試験をして、例えば受容体にいろんな物質が入ったとして、その物質を受け取る受容体があるんですが、イソフラボンがその受容体にはまって、あまりイソフラボンを摂り過ぎるとメス化するんじゃないかみたいな話もまことしやかに出た時もあるんですけども。今はそういうのは、そんなに問題はないと。やっぱり最初の話題になった時って、すごく大げさに広がるんですね。そして調べていくと、そういうのは確かにあるけれども、量の問題でもあって、実生活に影響ないですねと。調べてだんだんわかってくると落ち着いてくる。

参加者

昨日まで台湾に行っていました。台湾の方はお肉は内蔵まで全部食べる代わりに、ピーナッツや大豆加工品もすごく食べるますね。摂り過ぎて大丈夫なんでしょうか。

浅見

中国もそうですが、ピーナッツとか大豆、よく使いますね。もちろん、取り過ぎはよろしくないじゃないですか。

関崎

台湾の方々、健康で暮らしてらっしゃるから、取りあえず食生活で今食べているくらいは大丈夫かと。

浅見

特にイソフラボンとかは食べても大丈夫。モンゴルでは、牛乳だけで生活している民族がいるとか聞きますし。テレビを見てると、あの栄養素がこの食品にはこれだけ入っている、その食品をそんなにいっぱい食べれるもんなのかというような話になるのがよくあると思いますけども。人間、ある程度適応能力はできます。毒性の強いものに関しては問題もありますけど、毒性あってもまあ、影響が出るほどまでの量を食べるというのは、実際にはそうそうないと思っていただいていいと思います。一般にいつも食べているものを、いつも食べている量食べる分には。かえって、新しいものは警戒したほうがいいです。

関崎

先ほどの日本人はお米をたくさん食べて、イギリスの方は紅茶をいっぱい飲んでというのと同じように、台湾の方が摂ってらっしゃるような食事も、台湾の方がいつもの食生活のように摂っている分には大丈夫なんだろうと思います。ただ、日本に来て同じことをすると、果たしてどうかなということですね。国や地域ごとの、そこに合った食事の加工性やバランスがあると思うので。

浅見

そうですね。

摂り過ぎ注意 子どもへの配慮と教育

参加者

先生はさっき、コーヒーの所で規制をかけたいとおっしゃったんですけど。私的には「かけてください」と思うんですけど。というのは、大人は自分で選択ができますが、子どもに対してどうなのか、心配だからです。子どもという定義が何歳までか難しいですが、いろんな食の議論の中で明確ではないのに、栄養摂取量は明確に男女や年齢で決まっているのに、コーヒーみたいなものとなると、大人、子どもっていうのも規制がない。一番いい例がハチミツの摂取だったりします。子どものための規制に関しては、もうちょっと大人が繊細にいろんなことを扱ってもいいんではないかなっていう点で、コーヒーもぜひその中に入れて欲しい。コーヒー牛乳なんて、もう小学生とか幼稚園ぐらいから飲んじゃうので。そういう意味で、大人が知らないうちにあげ過ぎているようなものについても、ちょっと知りたいなと思います。これについてはどう考えていらっしゃいますか。

浅見

子どもに飲ませるものは大人が与えていますんで、大人が気を付けてあげるべきではないかなと思いますね。そういった機会には、教育の一環として、これこれの量を飲み過ぎると危ないんですよとかも一緒に言ってあげることも大事です。「お母さんはおいしいと言って飲んでるじゃん」って思うかもしれない。コーヒーがうまいって言う子どもはあまりいないかもしれないですけども、コーヒー牛乳はおいしいですよね。そういう意味では食品の安全性っていうことを教育するいい機会かもしれないですね。本当は、タバコと同様にコーヒーにも「飲み過ぎには注意ください」とか書かないといけないですかね。ニコチンのほうが圧倒的に毒ではあるんですけどね。もしかしたらそういう方向になるかもしれないですね。

参加者

漢方薬に限らず全般的な薬でも植物由来の原料というのは多いかと思いますが、植物由来の化合物を薬として使うということと、今お話になっていた毒性があるということとは、どういう関係にあるとお考えですか。

浅見

まず、植物から取った物質が全て毒性があるかについて。ほとんどの全ての化合物に毒性はありますが、毒性が強いかというと、そうではない部分もあると思います。医薬でコルヒチンとかビンブラスチン、タキソールとか、植物から取られたものでしたけれども、あれは、細胞核を分裂阻害します。すると正常細胞にもやっぱりどうしても影響は出ちゃうんです。ただ、よりがん細胞に対して選択制があると。だから、またこの話になりますが、食品添加物とか農薬に対する皆さんの心配度から考えると、制癌剤のすごい強い毒性については、不思議と皆さんは許容してくださっているところがあります。

関崎

命に関わりますから、そんなこと言っていられないんですよ。

浅見

毒性は強いと思いますけども、やっぱり皆さんのコンセンサスっていうんですかね。それで、コーヒーは、いいじゃない、そんな言わなくたってと。そして、発がん物質や制がん剤も命に関わるからいいですよと、そういうのがみんなに受け入れ、パブリック・アクセプタンス、それがあると多分いろいろやりやすいんでしょうね。

関崎

もしかすると、その毒になるぐらい強い生理活性があるから薬になっているっていうことがあるかもしれないですよね。

浅見

そういう部分はもちろんあります。特にがん細胞はそうですよね。

関崎

がん細胞って、そもそも自分の細胞ががん化しているので、がんだけど元は自分なんですよね。ですから区別が付けにくい。区別できるのはどこかというと、ものすごく細胞分裂が活発だということなんです。がんの治療では、細胞分裂の活発な所に作用する薬が行きますので、がん細胞も攻撃しますけど、同じようにいつも分裂している毛根の細胞とか、腸の中の上皮の細胞とか、そこがアタックを受けて、毛が抜けちゃったり、おなかを壊したりするということなんですよね。

浅見

はい。

参加者

ビタミンA、催奇形性ありというふうに書いてありまして。私は知らなかったんですが、この催奇形性が認められたというのは、たまたまだったんでしょうか。それともテストで再現なんかされてるんでしょうか。

浅見

ビタミンAですか。これは、ビタミンAそのものがというよりは、レチノイドというんですかね。目が見える視覚、光が来て、その構図が変わって光を受容したことを神経系に伝えるのがあるんですが、それが体の中で分解される。催奇形性ありと言いましたけども、恐らくそのデータは否定するような、再現性はないというデータはないと思います。再現性はないというデータは、「試験によっては出ない場合もあるけれども、何度かやると、やっぱり出てくる」ということです。

参加者

それが試験で、いわゆる奇形のマウスが生まれということですよね。

浅見

どこかがちょっとおかしかった。それも、試験ではかなりの高濃度を与えますので、実際の使用の中では心配することはないと思います。ビタミンAをそんなに大量に体に入れるということは実際にはない。アスピリンの例でも1,000㎎と書きましたけども。

参加者

これは食物としてではなくて。ビタミンAを超高濃度で与えたと。

浅見

ビタミンAを飼料に混ぜてネズミに何か起きるまで与える、そういう試験をするんですね。そういう場合に何か起きてくるということですね。

参加者

それもエームズテストみたいなものをやるんと出てくるんですか。

浅見

ビタミンAに関しては、私はそのデータはないですが。エームズ試験は、今あんまり使われないです。例えば、さっきのキャベツやレタスなども、ほとんどの試験にプラスになって出てくるんで。

関崎

エームズ試験っていうのは微生物を使った試験で、微生物が突然変異を起こして性質が変わるものがどれぐらい出てくるかっていう、微生物だと扱いやすいのでやる試験があるんですけど、そのことですね。

参加者

安全の上に安心がある、そこにはリスクっていう考え方とか、確かな情報が必要で、量の問題でもあるというお話でした。考えてみると、これは「食」という言葉の代わりに他の言葉を当てはめても、いろんなものの考え方に当てはまるようなこと、基本的な考えなんだろうなと思いました。この年になってこういう所に来て、お話聞いてるんですけど、小学校、中学校、高校、それで大学とかにも進学して、ここまで過ごしてきてますが、こういうことはどこで学んでおけばよかったのかなと思います。どこかでこういう安全と安心の考え方をちゃんと学んでおけば、例えば添加物を使っていないから安心です、というような広告に踊らされるような風潮は少なくなるはずだと。一体どこをどうすりゃあ、こういう話でみんなの考え方がしっかりしてくるのかと興味を持ちました。先生のお考えをお願いします。

浅見

恐らく家庭科ではないかなと。食品について学んだり調理したりとか、そういう機会。今、高校でも男子もやると思うんですけども。そこで家庭科の先生にそういうのを話してもらうのがいいと思います。ところが、聞いてみると、家庭科の先生は健康食品万歳の方が結構いらっしゃるようです。別に、健康食品万歳でも悪くはないですが、学校の先生でサイエンスをやっている人なんだから、もう少しちゃんと勉強してほしいです。小学校・中学校・高校の家庭科で学ぶ。あとはリスク学。これも少し難しくなりますけど、どこでやればいいんですかね。社会でもないし数学でもない。

関崎

どっかの学年だけで終わりじゃなくて、何回も少しずつ難しい中身にして繰り返すのがいいかもしれないですね。

浅見

家庭でもそういう話をしていくといいですね。

食文化・食習慣と食の安全

参加者

先ほど、ヒジキがイギリスでは危険って言われているということでしたが、日本人としては、ヒジキはとても健康的で、毎日食べましょうって言われています。日本の文化で代表的な食べ物で海外では危険だって言われているものは、カツオ節とかヒジキの他に何かありますでしょうか。

浅見

フランスではキムチも輸入禁止です。

関崎

イタリアのミラノ万博の時に日本食を紹介しようと思って持っていった時に、やっぱりカツオ節を入れるので相当苦労されたという話聞いています。最終的にはOKになったんですけど。カツオ節に付いているカビ、あれに発がん性がないというデータを付けて。

参加者

オリンピックが開催されるのに、今度世界の人を招くのに、そういう基準とかが厳しくなるっていうこともある。

関崎

各食品業界は、今ぴりぴりしてやってます。

参加者

今のお話の中で、味の素は、よくアレルギーが出るので、味の素入ってないですか、入ってると、ちょっとアレルギーで食べれないんです、という海外のお客さまからの問い合わせがあったことがあるんですけど、先生、その辺りは。

浅見

それについては存じませんが、ブタの原料で使った味の素をつくった時はイスラムから総スカンを喰らったっていう話は聞いたことがあります。。

関崎

宗教的な話ですよね。多分、アミノ酸は食品アレルギーになんないですよね。アミノ酸単品だったら。

浅見

食べ過ぎたんじゃないですかね。体の中にも、血管の中にも流れていますから、アミノ酸は。すみません。それについては答えを持っておりません。

参加者

化学物質という言葉と、化合物という言葉を使っておられて、その使い分けはどうなんでしょうか。化学物質って言われると、なんとなく気持ち的に不安になる、私もそうだなと思ったものですから、その辺の使い分けについて教えていただければと思います。

浅見

私自体は分けてないです。同じものとして考えているんですが。日常、化学物質とは言わないです。研究室で使っているのは化合物、化合物と言っていますんで、多分、しゃべってるうちに化合物っていう言葉が出てきたんじゃないかなと思います。同じものです。ただ、化学物質のほうが、確かに生々しい感じはしますね。化学物質というのは長いから言いにくい、それで化合物のほうを私は使ったんだろうと思います。意識はしていません。
(完)

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